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2022年8月の記事一覧
【加筆・修正ver】杉藤 俊雄 は××したい_68_20代編 10
これはいつの話だった?
「なぁ、俊雄。どうして俺の事ずっと名字で呼ぶんだ? 他の奴らもだ。俺たちはいわば一蓮托生だろ? 今からでもいいから名前で呼んでくれよ」
この時、僕はなんて答えた。
「大川くん」
僕は大川くんの期待には答えられない。みんなの期待に応えることができない。だって、怖いから。だって――。
「あぁ、わるい。なるほど、それでお前は自分を守ってきたんだな」
僕の様子に
【加筆・修正ver】杉藤 俊雄 は××したい_69_閑話 05
2010年某日(月曜日)
自分の人生はどこでケチがついたのかと、岡 雄一は祖母の顔を見てため息がつく。
山中崎市の寂れた地区にある平屋で、こそこそ隠れるように住んでいる自分。前科者の両親を持ったことで、逃げるように県外へ就職するも、どこかで両親の罪が暴かれて、結果的に地元の企業に就職するしか道がなくなる。
自分の同年代のほとんどがそうだ。
山中崎から逃げようとして失敗し、打ち据えられた
【加筆・修正ver】杉藤 俊雄 は××したい_70_現代編 06
202×年6月 日本
山中崎の交通事情は、杉藤によって歪められている。
特に大半を占める山間部は、ほとんど杉藤の土地であり、川沿いのアミューズメント施設も、点在する廃墟も、教習所も修行僧たちが詰める宿坊も、元はすべて杉藤の土地であった。
修験者であり、山神の使いと自称していた彼らは、山間部に対してなにかしら強いこだわりがあり、杉藤が納得しない限り山が拓かれることはない。そしてそれは、特
【加筆・修正ver】杉藤 俊雄 は××したい_71_30代編 01
2015年 3月――。
僕は生きている。あの時、五代くんは僕を殺すことなく、五代くんも死ねなかった。生きることを決めたのなら、僕は大川くんの遺言に従って人を殺さないように頑張っている。通り魔もやめたし、僕はつとめて普通の人になろうと努力した。
そう簡単なことなんだ。主に殺したかった人間の九割を、大川くんが生きていた20代に殺すことが出来た。それで十分じゃないか。葉山のように殺すのが難しい