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2022年5月の記事一覧
【加筆・修正ver】杉藤 俊雄 は××したい_54_大学生編 08
二十歳の僕は実家に電話をかけて息を吐く。
携帯ではなく、自宅の電話にかけてしまったのは、僕の中で杉藤顔を捨てるという後ろめたさと罪悪感があったからだろう。
「わかった。俊雄の成人祝いをしたかったし、電話をかけてくれてうれしいわ」
優しく弾む母の声に、胸の奥が重くなる。母は可愛がっていた熊谷が、成人式でなにをしたのか知っているのだろうか。
「…………」
この顔の恩恵は分からないけど、
【加筆・修正ver】杉藤 俊雄 は××したい_55_大学生編 09
ごっそりと僕の中から、いろんなものが崩れ落ちて路上に転がっていく。
朝になったら、行きかう人々が、路上に転がる見えない僕の残骸を踏みつぶして、そしらぬ顔で日常を過ごすのだろう。
そして、適当に泊まれる場所を探して、僕は駅の周辺を彷徨う。そんな僕も、誰かがこぼした見えないなにかを踏みつぶしながら生きてる。
見知らぬ女性を颯爽と助けた父へのあこがれ。
我が子への殺意を、守る意思で封じ込めた
【加筆・修正ver】杉藤 俊雄 は××したい_56_大学生編 10
一年後。
「それで、これがようやく手に入れて君の顔だってことかい?」
五代くんがそう言うと、疲れた微笑を浮かべて、僕はその微笑を愛でるように目を細めて頷いた。
大学を休学して一年。復学が認められた僕は、久々にみんなに会いたいと思ったんだけど、連絡が取れたのは五代くんだけだった。
大川くんは学業そっちのけで物部くんと一緒に家業に精を出して、早瀬くんはヤクザの息子であることを盾にジジィど
【加筆・修正ver】杉藤 俊雄 は××したい_57_閑話 04
2003年1月
『お元気ですか?』
携帯のメールボックスに映し出された件名に、一瞬誰だか分からなくなった。表示された名前が【物部 雪彦】と表示されて、ようやくメールの相手が誰だかわかると、わたしは懐かしさと居心地の悪さを伴った奇妙な感覚にとらわれる。
『突然かもしれませんが、成人式の日に会えませんか?』
なぜ、どうして。
わたしの携帯の番号をどうやって知ったのだろう。
いいや
【加筆・修正ver】杉藤 俊雄 は××したい_58_現代編 05
202×年6月 バンコク
漆黒の闇夜の中で雨が生き物のように踊り狂っている。
ベッドに腰を掛けて、目を閉じたまま深呼吸をする本田は、冷静に自分の感情を整理して、自身の優先順位とその優先順位を叶えるために、杉藤 俊雄から、どのようにゆさぶりをかけるのかを考える。
直球で行くか、からめてで行くか、それとも司法取引を持ち掛けるか。
「本田警部補、公安からメールがありました」
ゆったりと、