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2022年3月の記事一覧
【加筆・修正ver】杉藤 俊雄 は××したい_46_現代編 04
202×年6月
福田は墓の下にしゃがみ込んで、墓石の台の周辺に擦り跡があるのを確認する。
「ねぇ。ちょうどいいから、この墓石をどかせてくれないかしら? 思った以上に重そうなのよ」
そう園生 利喜に頼む福田は、老いた顔に複雑な感情を宿らせて寂しく笑う。園生 利喜も老いた猿顔を歪めて「はいはい」と諦念を滲ませて笑みを浮かべると、自分たちの不思議な巡り合わせに目に見えない存在を感じていた――
【加筆・修正ver】杉藤 俊雄 は××したい_47_大学生編 01
2002年3月。来年から僕たちは大学に進学することになっている。
新しく暮らす学生寮は、山中崎市山中崎区……つまり、故郷の都市部であり、僕たちはとうとう、本格的に山中崎に帰ることになったのだ。
大学生活の期間は、長く隣の県で暮らしていた僕たちの猶予期間。山中崎に根付くための足場を築く限られた時間であり、温情。そして周囲の大人たちは暗に、僕たちにここで生きることを強制している。
自分た
【加筆・修正ver】杉藤 俊雄 は××したい_48_大学生編 02
いつもそうだった。幸せを感じられて、それが続けばいいのにと思った時、必ず誰かがその幸せを壊そうとする。
なにも知らない誰かが、なにも知らない知り合いが、なにも知らない第三者が、なにも知らない大人たちが、その人にとって大切な尊い時間をぶち壊すんだ。
僕の知らない間に、そして僕の周りの世界で、僕も誰かの加害者で、僕たちは僕たちの幸せを壊し合って、傷つけあって、苦しみ合って、悲しみ合って、諦め
【加筆・修正ver】杉藤 俊雄 は××したい_49_大学生編 03
2002年12月
年末の夜。久しぶりにみんなで集まって、居酒屋で牡蠣鍋をつついでいた時だった。
「ねぇ、杉藤君。成人式出席するの?」
「……」
園生くんはいつもそうだ。
僕の味方ポジションなのは、お互いの利害が一致しているから。
家同士の絡みや自分の欲しい物、将来、それらひっくるめて蜘蛛の巣にかかった羽虫のように糸に絡んで身動きがとれなくなってしまった。
僕たちはバタバタ