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2021年10月の記事一覧
【加筆・修正ver】杉藤 俊雄 は××したい_24_中学生編 02
後姿が美人で、可愛い、大和撫子……。
深夜。ベッドの中で僕は悶えた。なんだか大きな光に抱きしめられた戸惑いと喜び。僕は僕を構成すべてが醜いと思っていた。つま先からてっぺんまで、自分で見ることのできない、脳みそから臓腑まで。外見も男のくせに、ちびでひ弱で見苦しい存在だと思い込んでいた。
ベッドの中で、早瀬くんの言葉を反芻する僕は、思いがけないキーワードに頭を悩ませていた。男らしくないと卑屈
【加筆・修正ver】杉藤 俊雄 は××したい_25_中学生編 03
早瀬くんは段取りがよかった。
彼が僕に確認したのは一つだけ。
「このゲロパジャマ捨てた方がええんやけど、代《か》えは持ってんか?」
「ううん。このゲロパジャマだけ」
「わーった。せやったら、ワテのパジャマ貸したる。サイズはしゃーないけど、大は小を兼ねるからがまんしぃーや」
と、僕が共同浴場で湯船に浸かっている間に、パジャマを用意してくれて、寮長をせっついて清掃業者の手配してくれた。
そ
【加筆・修正ver】杉藤 俊雄 は××したい_26_中学生編 04
ハンバーク、サラダ、うどん、スパゲッティー、ステーキ、またサラダ。パフェ、チョコレートケーキ、またサラダ。
僕たちは早瀬くんが、奢ることをいいことによく食べた。
最初拒絶していた園生くんも、ばくばく食べる僕たちに触発されて、結局いっぱい食べた。
ピザ、わかめサラダ、和風おろしステーキ。またサラダ。だ。
「アンタら、良い食いっぷりやなぁ。こんなに食べてくれてワテ嬉しいわー」
早瀬くん
【加筆・修正ver】杉藤 俊雄 は××したい_27_中学生編 05
1997年――僕たちは中学二年になった。
ポケモンだったり、もののけ姫やエヴァだったり、ルーズソックスだったり、携帯電話だったりと、今まで土に潜っていたものが一気に芽吹いて花開いた年だった。未成年者の連続殺人なんて事件が起きなければ、とても賑やかで明るい年になったのではないかと僕は考えている。
残念だ。本当に。せっかく花が開いたのに、氷をまとった北風が次々と花々をなぎ倒して、1997年とい
【加筆・修正ver】杉藤 俊雄 は××したい_28_中学生編 06
「ワテの人生はここに流れつくまで波乱万丈や。おとんが関西大学受験するさかい、北海道から上京したはずが、ヤクザの組長の娘と運命的な出会いを果たして電撃結婚。物心ついた時から、頭がたりん奴らに囲まれてドンパチやら拉致監禁やらのオンパレード。身内の構成員も頭足りんから、報告・連絡・相談《ホウ・レン・ソウ》もできんし警備もガバガバや。こりゃいかんと、まともな生活をさせんとあっちこっち転校したせいで、ワテの
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