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【加筆・修正ver】杉藤 俊雄 は××したい_27_中学生編 05

 1997年――僕たちは中学二年になった。
 ポケモンだったり、もののけ姫やエヴァだったり、ルーズソックスだったり、携帯電話だったりと、今まで土に潜っていたものが一気に芽吹いて花開いた年だった。未成年者の連続殺人なんて事件が起きなければ、とても賑やかで明るい年になったのではないかと僕は考えている。

 残念だ。本当に。せっかく花が開いたのに、氷をまとった北風が次々と花々をなぎ倒して、1997年という年を不毛な土色に塗り替えてしまった。大人たちは自分たちが子供の頃に、どれだけ大人をバカにしていたのかを忘れて、未成年を恐ろしいものを見る目で見て、現実に目を背ける。

 僕からしたら、熊谷のイジメがエスカレートしたら、いつか殺した上に四肢切断もありえたんじゃないかと簡単に想像できた。
 きっかけ一つで、人間は年齢問わず、限りなく無情に残酷になれるのだ。
 子供を産ませまいと婚約者を手にかけた僕のように。

「ち、やられたわ」

 早瀬くんと園生くんは、寮の玄関前にある掲示板を見て顔をしかめた。
 掲示板に記載されている、学生寮での使用禁止項目が追加されてからだ。
 テレビ禁止・ゲーム機禁止の項目に、「パソコン」や「携帯電話」の二つが追加されていた。

【使用禁止】
【持ち込み禁止】
【借りてくるのも禁止】
…………。
……。

 掲示板のプリントを、わざわざ黙読する中学の僕は本当にいい子だった。
 ワープロでプリントアウトされた、ゴシック体の字面がやけにでかくて、見ているだけでなんだかイラッとくる。

「大人げない」

 僕の呟きに、隣にいた友達の何人かが頷く気配がした。でかでかと寮の掲示板に掲示して、僕たちに対して自分の威光を知らしめて、理事長側には「いかにも仕事をしましたよ」ってでかい顔をする。やっていることが今の政治家と変わらない。

 若者の特権を奪うことにかけて、僕よりも嗅覚が鋭い寮長は、早速新しい規約を学園側に通させたのだ。

 早瀬くんはともかく、園生くんがイヤそうな顔をするのが意外だった。
 大川くんは少しホッとした顔をして、五代くんの方は「ふーん」と興味がなさそうな顔をする。

「とっしー、どう思う? こんなんでえぇんか我が寮のIT革命! 携帯やネットは絶対数年後には主力になるでぇ。ワテらはともかく、卒業後に続く後輩たちには、不自由なおもいさせたくないんやよ」

 意見を求められても、中学の僕にとってネットは少し怖い印象があった。ドラマでは携帯電話は売春の道具に使われて、ネットは得体の知れない他人と普通に交流できる。――そう考えると、ネットと携帯が普通に普及した現在が、なんだか異様に思えてくる。

 僕が新卒で入社したころには、早瀬くんが言ったように携帯やネットは主流になり、仕事には欠かせないものとなっていた。中学のころに感じた、得体の知れない嫌悪感が使えば使うほどに薄れて、ネットやSMSにすっかり慣れて、嫌悪していたことすらも意識の片隅に追いやった。

 中学の僕は、未来の自分が整形手術を繰り返して、人を殺しまくって、ユーチューバー活動をしているなんて夢にも思わない。

『僕は父さんみたいになりたいな。困っている人を見つけたら、すぐに助けられる、そんなかっこいい大人になりたい』

……僕はまだ、どうしてこうなってしまったのか、わかっているんだけど、わかっていないふりをする。

 律儀に掲示板をチェックしている中学の僕。友達が増えることは、幸せが増えて、世界も広がって心が豊かになれると――まだ、青い理想と繋がっていた自分。

 大人の僕は自分の失くしてしまったものを、突き付けられたような気分になった。

 中学の僕は食堂のテレビで、そこそこ世の中を知った気になって満足して、女の子にちょっと興味を持つようになったり、クラスメイト達の会話に混ざるために、寮の規則を破ってテレビとゲームを購入するか悩んだりした。
 エアリスを復活させる方法がわかれば、一躍時の人になれる勢いだったからだ。中学の僕は日常を愛していた。

「私はそれより、1999年に世界が滅ぶのか気になる」
「はぁ? ノストラのオッサンか」

 意見をもとめる早瀬くんの言葉に、五代くんが割って入る。眼鏡の奥にある表情がどこか憂いを秘めていて、最近、どこか遠くを見ている気がするんだ。その視線の先には、貴子さんの影がちらついて、時折、うすら寒い感覚が背筋を通り過ぎる。

「アホらしい。世界が滅んでも簡単に人類が滅びるかいな。ヒトサマは意地汚いさかい、えげつない抜け道見つけ出して、なにがなんでも生き残る。世界を滅ぼしてもな……ま、二年後はいくらなんでも早すぎる」

 と、早瀬くんは自分の意見を述べた。彼にとっては、世界が滅ぶことと、人類が滅ぶことはイコールで繋がっていないのだ。

 五代くんはふっと表情を緩めて、掲示板に視線を移す。

「私もそう思う。貴子さん以上の予言者は、この世にいない」
「……出たよ。公博の貴子さん信仰」
「まぁ、いつもの話だろ。俺は正直どっちでもいい。二年後に滅びようが、この先の人生が続こうが」

 俺には帰る場所がない。と、大川くんの声が聞こえた気がした。

 僕がその言葉の意味を知るのは、大人になったからで、中学の僕は楽観的に構えていた。今はこんな状態だけど、中学の僕はいつか家族と和解できるって、根拠のない希望を信じていたんだ。
 療養所の時も、一度も見舞いにこなかったのに。
 僕を学生寮に押し込んだのに。

『俊雄。今まですまなかった』
『家に戻ってきて、私たち家族にはあなたが必要なのよ』

 いつか親たちが謝ってくれると盲目に思い込んでいた。僕はバカだ。あんな父親が謝罪なんてするもんか。

『父さん、母さん、僕、家に帰っていいの?』

 なのに、頭の中では都合のいい夢をみていた。いつか、迎えに来てくれるって。

『あぁ、帰ろう。家に。我が家に、孝雄も和子も待っているよ』
『うん!』

 想像の中で、僕は山で遭難した時点の小学三年生の姿に戻る。父と母が幼くなった僕を抱きしめて謝罪して、僕たち三人は光に包まれて一つになるんだ。なんて茶番だ。両親は神でも魔法使いでもない、弟と妹の壊れた関係を魔法のように修復なんてしてくれない。
 まだ親が絶対的だという確信があるからこそ、呑気に明るい未来を信じていたんだ。

……だけど、大川くんの方はそうじゃなかった。警察沙汰になる程、家族とケンカした大川家の事情をもっと真剣に考えるべきだった。僕たちと縁が切れたら、自分はどうなるのか……。大川くんの悩みにもっと早く気付けばよかったのに、彼の小さなSOSを、僕は何度も見逃してしまった。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

1997年 8月中旬

 学生寮の二階にある事務所に、僕たち五人は集められた。事務所の奥にある大きな客間に通されて、長めのソファーに僕たちを座らせる。
 寮長はタバコを口に咥えたまま、一言。

「二学期に転校生が編入してくる」

 めんどくさそうに言い、タバコを灰皿に押し付けてあくびをする中 裕二《あたる ゆうじ》。ソファーに座る僕たちを睥睨して、ふんっと偉そうに鼻を鳴らした。

「しかも神戸からだ。こんな時期に転校するせいで、いやな思いをするだろうな」

 神戸……。と言われると、僕たちが連想するのは、神戸連続児童殺傷事件だ。

 僕は転校生に同情した。あの事件のせいで、僕たちを含めた中学生が、どれだけ迷惑をこうむったか分からない。神戸に住んでいたら、それだけてイヤな思いをしてきたんだろうに、転校してからもあらぬ疑いをかけられることが想像できて、胃のあたりがぎりぎりと痛くなった。

「できるだけ、守ってやってくれ。……お前たちと同じ三階で、クラスも同じだ。まったく、前例がないことばかりだよ」

 めずらしい。

 僕たちに頭を下げる寮長に、明日は雪が降るんじゃないかと心配になった。裸の王様で傍若無人である以前に、この男も一人の人間だったのだろう。

「来週の水曜日に、転校生と荷物が来る。お前たち、時間があったらいろいろ手伝ってやってくれ」

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

――1997年8月20日 水曜日。

「どうも、物部 雪彦《ものべ ゆきひこ》です。よろしく」

 神戸から来た転校生は、あまりにも普通であまりにも平均的であまりにも優しい匂いがした。飴を牛乳で溶かしたような、赤子にあたえるお菓子の匂いだ。

 中背中肉。半袖のシャツとジーンズが似合うシンプルな格好。真面目そうな顔立ちに、黒ぶちメガネが似合っている。良く見たら、下まつ毛がちょっと長い。

「よろしく、物部くん」

 悪い人じゃなさそうだ。
 僕は安心した。そして、自分の認識の甘さを痛感した。

――まさか、こんなことになるなんて。

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「オレのことなんて、よくある話なんです。両親が離婚して、オレとどっちも住みたくないって親権でもめたことで、この町に住んでいる親戚を身元保証人にして、この学校の学生寮に住むことになりました」

 食堂でぼつぼつ身の上を話す物部くんは、テーブルに視線を下げて、なるべく僕たちと視線を合わせないようにしていた。
 淡々として落ち着いた口調だけど、それが却って痛々しく映り、彼から流れる枯葉の寂しい匂いが、しんしんと降る雪のように胸に迫ってくる。

「あ……、同じクラスだというなら、勉強どれぐらい進んでいるか、教えてもらってもいいですか?」
「えぇよ。それと、敬語はナシな」
「じゃあ、俺。夏休みの宿題終ったから、見てやるよ。好きな教科と苦手な教科を教えてくれねぇ?」
「大川、ついでに私も宿題のノートうつさせてくれ」
「あ、ぼくも」
「かぁ~。オマエラ、去年から進歩しとらんな。ナオっち、金取った方がええで?」

 図々しい二人の要求に、早瀬くんが呆れて大川くんが苦笑する。
 ナオっち、ハッチ……まるで、小学校からの友達のように、早瀬くんと大川くんは仲良くなった。

「そうだな。というか、ハッチはもう終わらせたのか?」
「バッチリやで! クラスの真面目そうな女子にパフェ奢ったら、快くノートうつさせてもらったわ」
「……顔が良いって、本当にお得なんだね。僕も一応終わらせたから、大川くんが当番のとき、勉強みるよ?」

 これはいつも通りのやり取りだけど、今日は物部くんがいる。
 彼が会話に入りやすいように、僕は会話に気を遣った。

「ありがとうございます、その、当番って?」

 きょとんとした顔に、僕たちの方がびっくりした。
 いや、ちょっと待って。

「え……。うちの学生寮、そうじとかの担当当番があるって説明なかった?」
「…………」

 やーらーれーたー。

 物部くんが首を左右に振ると、僕たちは天を仰いでどうしようかと食堂の天井を眺めた。
 寮長《チュー》が、物部くんにどれくらい寮のことを説明したのか、聞くのが怖くなってしまった。

 こいつ、仕事しろよ。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 転校してきた物部くんは不運だった。
 空いている寮生の担当当番は、人気が無くてしんどい【風呂掃除】と【裏庭係】になった。

 うちの寮はローテーション制ではない。交代してローテーションの方が、不公平感もなくて効率も良いと思うんだけど、枠が空くのは担当している学生が卒業した時だ。今のところ、僕たち六人が寮の三分の一を占めているから、僕たちが卒業した時、新しく入った寮生の人数次第で一気に負担が増すことになるだろう。申し訳ない次第である。

「ねぇ、物部くん。裏庭係、大丈夫? 辛くない?」

 風呂掃除の当番である、僕は同じ当番になった物部くんに訊く。
 共同浴場は銭湯なみに広くて、たまに運動部が使っているから、毎日掃除しなくちゃいけない。脱衣所に落とし物がないか確認したり、備品のタオルを交換して洗濯機に入れて、洗濯している間に脱衣所を含めて浴場を掃除して、裏庭に干したタオルを回収しつつ、洗濯したタオルを干していく。

 ずっと僕一人だったから、物部くんが来てくれて助かったのが本音だ。

「草むしり、ちょっと大変です。それにネコ」
「あぁ。ネコの通り道になっているんだよね。園生くんが言ってた」

 物部くんは静かに頷いて笑う。

「ネコ、かわいいですよね」
「……」

 純粋に喜んでいる物部くんに少し不安になった。同じ裏庭係の園生くんはネコが嫌いだからだ。花壇をネコのトイレにされて、植えた花を枯らさせたことが決定打だった。確かに、自分が精魂込めたものを台無しにされると殺意がわく。

「あの、園生くんはネコ嫌いなんだ。あんまり、ネコ好きだって言うと、怒るかもよ」

 僕は掃除用のモップを、脱衣所の隅にある用具入れに入れながら言う。余計なお世話かもしれないけど、物部くんはみんなと仲良くなって欲しかった。せっかくの縁なんだから、そのまま腐らせてなかったことにしたくない。

 脱衣所の鏡を拭いていた物部くんの手が止まる。なにを言うべきか少し考えて、だまりこむ姿は学生よりも職人さんに近いものを感じた。

 もしかして、物部くんってしゃべるの苦手なのかな?

 まだ寮に来て数日しか経過していない。その短い間で彼に対して分かったことは、寡黙ではないけど、言葉にする前に考え込み、眉根を寄せて険しい顔をする。
 僕は匂いで怒っていないことがわかるけど、五代くんや園生くんは彼の気に障ってしまったのではないかと気を揉んでしまった。
 早瀬くんと大川くんが、うまくとりなしてくれなかったら、物部くんの人間性は、大いに誤解されてしまっただろう。

 彼は外見通りに真面目で、めんどくさい仕事を黙ってこなし、そして今日はネコが好きなことが判明した。

 なんだか周囲から誤解されそうな、不器用そうなタイプだな。

 そう考えると、今までの自分の友達は器用な部類に入っている気がした。
 大川くんや早瀬くんは、コミュニケーション能力ダントツだし、五代くんも気が強く、園生くんもなんのかんので周囲と意思疎通できている。

「やっぱり、と思っていました。ネコよけのハーブ、今度、なんとしてでも植えるって言ってましたから」
「へぇ、そんなハーブあるんだ。ネコが嫌いな匂いでもするのかな」
「本当に効果があるやつは、育てるのが大変だと言ってました。寮長の許可はとっているみたいですけど」
「驚いた。あのチューから許可をもぎ取るなんて」

 どうやら、園生くんは僕が思っている以上にネコが嫌いらしい。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 裏庭係の仕事は、夏休みが一番きついと思う。

 裏庭にある花壇の世話と手入れに加えて、裏庭全体の雑草を刈ることや掃除を空いている時間にやらないといけない。
 夏休みになると、運動部が共同浴場目当てに出入りして、裏庭がゴミで溢れる時がある。裏庭で練習して、ひと風呂浴びた後、寮の食堂で食事して、裏庭にある小さな東屋で涼んで、裏庭にある花壇の花を引っこ抜いたりする。
 そいつらの後片付けが大変なのだ。

 どうせ、寮生が片付けてくれる。
 どうせ、寮生が掃除してくれる。
 どうせ、寮生が自分たちの代りにやってくれる。

 寮生は後ろ盾に保護者がいないせいなのか、一部の生徒から軽んじられていた。
 特に態度が露骨なのは野球部だ。寮長が野球好きであり、顧問の先生も言葉巧みで、野球部の部員たちを寮で優遇するように増長させた。
 
 だから事件は当然起きた。去年、せっかく園生くんが花壇に植えたミニヒマワリを、野球部が面白半分に引っこ抜いていったのだ。
 僕たちも常日頃からの野球部員の傍若無人ぶりに対して、顧問に直訴したのだが「たかが花だろ?」と一蹴されてしまった。寮長もだ。逆に僕たちが、なんでそんなにキレているのか、わからないという顔をしていた。

……とはいえ、なんとか解決した。当事者である部員たちはそこそこの罪悪感があったのか、今年は去年より荒らされる頻度が減った気がする。
 が、園生くんはかなり神経質になっていた。

「今年はゴミが多きがする」

 とぼやき、掃除にしろ花壇の手入れにしろ、次の瞬間にダメにされるんじゃないかと気が気じゃない様子だった。

「そういえば、今日、お酒の缶が捨てられていました」
「……顧問の先生が飲んでいるかな。それとも、チューかな」

 園生くんに任せたら、ずっと裏庭に住み込みそうな雰囲気だったので、物部くんを入れてなんとかバランスを取ろうとしたのだけど、果たしてそれは正解だったのだろうか。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 掃除を終えた僕たちは、共同風呂の入り口を施錠して二階にある事務所にカギを返しに行く。時刻は夜の八時になろうとしていた。消灯時間までまだ余裕がある。やっぱり、人手がいてよかった。消灯時間の九時までに部屋にいなかった場合、見廻りに出いている寮長にねちねち説教されるからだ。

 階段を上がって、共用キッチンの向かい側に位置する事務所に入る。入った途端に、僕は咄嗟に自分の鼻を塞いだ。隣にいる物部くんも顔をしかめて、事務所の奥にある客間の扉に視線を向ける。

……キャハハハハ。
……アハハハハ。

 むっとするビールの匂い。アルコール特有のねっとりとした臭気が真夏の空気とまじりあって肌にまとわりついた。

……キャハハハハ。

 客間の方から聞こえてくる、寮長の笑い声と複数の男女の声に、イヤな気分が雨雲のように膨れてくる。いやだ~と、媚びるような甘えた声がやけに生々しく聞こえて、扉から零れる隠微な空気に口の中がカラカラ乾いた。

「……缶ビールの犯人は、寮長のお客さんですかね?」
「事務所の掃除当番は五代くんだから、なにか知っていないか明日きいてみよう」

 雰囲気にのまれないように、僕たちは簡単な会話をする。
 言葉にして思考を巡らせると、頭が少しすっきりして、思考の焦点が定まってきた。

 寮長の関係者――つまり犯人が大人だったら、去年と同じになるのだろうか。と。

 なんとも言えない気分を持て余して、僕は壁に固定されているキーボックスに浴場のカギを返した。

【つづき】

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