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2021年7月の記事一覧
【加筆・修正ver】杉藤 俊雄 は××したい_11_現代編01
202×年6月 バンコク
「あぁ、ちくしょう。道路が冠水してやがる!」
「どうやら、本格的に雨季が始まってしまったみたいですね。日本に帰る予定は、思った以上に遅れるかも」
「ふざけてやがる。昨日まであんなに晴れてたじゃないか。なんだ、これは! 詐欺だ!」
甲高い男の声で僕は目を覚ました。全身が気怠く頭が鈍く痛み、ひどく喉が渇いている。
ここはどこだ? ホテルか?
観葉植物の苗が天井
【加筆・修正ver】杉藤 俊雄 は××したい_12_小学生編01
1990年3月24日(土曜日) 正友幼稚園 1階 講堂
幼稚園の卒園式は滞りなく終了した。
久保先生は顔に痛々しい包帯を巻き、僕以外の児童も顔や体に包帯がまかれている。中には腕や足が一本なくなっている子もいて、野戦病院さながらの重たい空気に耐えられず、保護者がすすり泣く場面もあった。
講堂の中を玲瓏なピアノの音が虚しく響き、何度も練習した歌が次第に小さくなっていく。
徐々に、徐々に、そ
【加筆・修正ver】杉藤 俊雄 は××したい_13_小学生編02
午前十時。時間が来たので、僕たちと両親は仏間に集合した。
仏間は三十六畳の広さで、高い天井にびっしりと様々な醜い顔の写真が飾られている。
目が一つしかない顔。アゴが月のように曲がっている顔。唇が花を広げたように八方にさけている顔。顔面そのものが融解しているように崩れている顔。鼻がない顔。頭蓋骨の一部が変形して、角のようにとび出している顔。皮膚が盛り上がって、鱗のように隆起している顔。一つ
【加筆・修正ver】杉藤 俊雄 は××したい_14_小学生編03
「無理だよ」
五代くんは力なくうなだれる。
「君には見えなかったかもしれないけど、霊園には何台も監視カメラがあるんだ。やったことはすぐバレる」
そう言って、言ってしまったことを後悔するように五代くんは顔を青くした。両手で顔を覆い、その場にしゃがみ込んで肩を震わせる。
「なんだよ。私は君のお父さんと同レベルじゃないか。結局、私も口だけか」
「いや、なんかバチあたりそうだし。お前がビビるの