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スーパーのジャム売り場で「自分を変えたこと」を思い出した話


きっかけは些細な事だった。

GWだし、ちょっと贅沢なパンのおともを買っちゃおうとスーパーのジャム売り場に行った。

いま使ってるのはこの一番安いピーナツバターだけど、ピーナツの粒入りの、ホイップの、ちょっといいやつ買っちゃおうかな。え、アンズジャムとかおしゃれ!Nutellaもある!アメリカのだから高いけど、留学してた時こればっかり塗っていたからエモい。
いや、でも家にバターもまだピーナツバターもあるし、買わなくてもいいんだよなあとぐるぐる迷っていた。

そのときふと走馬灯のように、アメリカにいたときにしたある体験の思い出がよみがえった。
あのとき私、同じように迷って、でも自分を変えたくて買ったんだった。


アメリカの祝日、Thanksgiving dayは…

11月下旬にあって、日本語では感謝祭と訳されたりする。

それにともなって1週間ほどの休暇があって多くの人が帰省をしたり、パレードがあったり、親戚がそろってごちそうを食べたりする。体感的には、クリスマスと並んで大きな存在感のある祝日で、年末年始よりも「家族行事」的だと感じた。

そして何よりThanksgiving day は、いたるところで大きなセールが行われる。

どこもかしこも大安売り、格安。買い物をしない手はないし、みんなこの日まで欲しいものを我慢して、セールで買うのだ。

当時私は、たまたま同じ時期にNYのマンハッタンでインターンをしていた大学の友達と一緒に、大型バスに乗って郊外のショッピングモールに買い物に行くことにしたのだった。

バスに乗る前は、○○ちゃんはめちゃめちゃ買う気だけど、私は何も買わないかもな、とぼんやり思っていた。
日本にいるときもアウトレットは時々行ったけれど、行っても何も買わないときもあった。
「せっかく来たんだから」と大してほしくもない何かにお金を出すのはちょっといやだったから。
(すごいケチなのかもしれない。笑)

でも、マンハッタンからアウトレットに向かう1時間の道のりのなかで、そういう自分がなんだかすごくいやになった。せめて留学に来ているいまくらい、今日くらい、何かしら買ったらいいじゃん私、と思って、自分としては一大決心をしたのだった。
今日は、買う!

その日のことは私の中で大きな思い出になって、当時の日記に長々と心境が綴ってある。

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当時の日記。**

「私にもちゃんと買えたって話

欲しいものをえい!って買うことが今まで本当に出来なかった。
欲しいとずっと思っていたものでも、ビビっと来たものでも全然思いきれなかった。
まずは品質表示のタグを確認してコスパとかぐるぐる考えて、お店に長居はするくせに「また今度」ってお店をあとにして、でもいつも「今度」なんて無い。
衝動買いとか絶対できないから、買い物に失敗も何もなかった。
そもそも買ってないから。
慎重で偉いって言われたりもするけど、私はそういう自分でいいのかなって時々思ってた。だって結局手に入れてないし。
本当はすごく欲しかったのに、今はまだいらないなとか、無くてもいいかって目を逸らすことばっかり。
たかが買い物だけどこれ私の性格だ、なんなら私の人生そのものだったらどうしようって思った、大袈裟かもしれないけど。
アウトレット行きのバスの中で、以前大好きな人から言われた、もっと欲求に正直になれといか我慢や躊躇をしすぎるなとか、欲するものを迷わず掴もうとすればいいのにって言葉が突如として響いた。
だからこの日はちゃんと何かを買っておうちに帰りたくて、「えい!」を3回くらいやりました。
欲しいものをちゃんと自分のものに出来たなあ、思い切ることができたなあってすごくうれしかった。し、ちょっと変われた気がした。
素敵なものを買ったからだいじに使いたいなあ。しばらくは慎ましく過ごします」

・・・「買うことの得意な人」からは、何を大袈裟なと思えるだろう。
だってアウトレット行って買いものしただけのことだから。しかも大セール期間で何もかもが格安になっているし。
それでも、私にとっては大きな出来事だったのだ。

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私が手に入れたもの**

この日買ったのは、

真っ赤な、丸いかばん

(ひとめぼれ。Michael Korsの3万円くらいのものを1万2千円くらいで買ったかな)

カラフルなセーター

(古着っぽいデザインで可愛かった。たしか「アナザースカイ」で高畑充希がかわいい古着をアメリカで買ってる番組をみて、この時期の私はこういう服が欲しかった。6千円くらい?)

そして、ピンクとパープルの網目がかわいい大判ストール

(憧れていたAnn taylorというブランドのもの。正直自分に似合うかわからないけど、それそのものが可愛かった)

この3つに、お店で心を掴まれて、「えいっ!」と買った。
社会人になった今の私にとっては躊躇しない値段のものもあるけれど、物価の高い国に留学させてもらった身としては、経済的な意味でも「えいっ!」だった。
一緒にいてくれた友達(○○ちゃんは買うのが得意な人)に、「ねえどうしよう、こっちとこっちどっちがいいかなあ、使うかなあ、似合うかなあ」などとうじうじ言いながら、優しい彼女に悩みすぎと笑われながら背中を押してもらって買った。

帰りのバスでは満足感に満ちていて、夜遅く家に帰った私をホストマザーは「夜遅いなんて珍しいね!あなたもたまには遊ぶんだ?」と笑ってくれた。
部屋にあがって、手に入れたものを何度もスマホで撮ったことを覚えている。

あれから数年経って、実のところ、この日の記憶が大切すぎて、もったいなくて滅多に使うことができていない。
私らしい…とおかしくなるけど。

大きな大きな体験だったなあと、そんなことをスーパーのジャム売り場で立ち尽くして思い出していた。
ちなみにこの日は、いつものピーナツバターの3倍のお値段するピーナツバターを買って帰った。

今朝トーストにたっぷり塗ったら、死ぬほどおいしかった。


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