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てん虫未収録『桃太郎印のきびだんご』他全4点/大長編ドラ必携ひみつ道具初登場SP②

「大長編ドラえもん」に頻出する定番ひみつ道具の初登場回をピックアップしていく企画の第二弾。

前回の記事では、「タイムふろしき」「ひらりマント」「スモールライト」の3アイテムの初登場エピソードをまとめているので、是非ご一読のほど。


『通りぬけフープ』(初出:ぬけあなフープ)
「小学一年先」1974年2月/大全集6巻

初出では「ぬけあなフープ」と表記されていたが、単行本収録にあたって「通りぬけフープ」と改められた。壁をくぐれるという非常に使い勝手の良いひみつ道具で、短編・大長編問わず、幾度も登場している。

ちなみに「のび太とブリキの迷宮」では「抜けあなフープ」という、壁ではなく分厚い地面を通りぬけできる道具が登場しているので、表記については少しだけ注意が必要。

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いたずらばかりするのび太は、怒ったママに物置に閉じ込めてしまい、ドラえもんが「通りぬけフープ」を使って出してくれるところから始まる。ドラえもんはママに「開けちゃダメ」と言われていたのだが、「開けなきゃいいんでしょ」と一休さんばりのとんちを利かせて脱出させるのである。

一通り遊んだあと、フープを坂道で転がしてしまい、見失ってしまう。フープは道路に置かれて、女の子が道路に描かれた輪だと思って踏んでしまって落ちてしまう。

のび太たちが気づいた時には、8人とネコ一匹が穴に落ちてしまっていた、というオチで終わる。


『きせかえカメラ』「小学五年生」1974年8月号/大全集3巻

服のイラストを描いて「きせかえカメラ」に入れてシャッターを押せば、そのイラスト通りの服を着ることができるようになるカメラ。「ドラえもん」ではカメラ型のひみつ道具がたくさん登場するが、その中でも最も有名で頻出するカメラである。

デザインした服がすぐ形になるとあって、将来デザイナーを目指しているスネ夫にとっては垂涎の道具。またジャイアンにとっても、歌手の衣装を手っ取り早く入手できるので、便利な道具である。

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本作は、洋服を新調したいママがパパに逃げられてしまい、イライラしているところに、のび太が泥だらけで帰宅してきたところから始まる。ママは服を作ってもらえなかった八つ当たりも込めて、のび太につぎに汚したら裸でいなさい、と手厳しい。

ところが、服を着替えた数秒後に廊下のバケツの水を被ってしまい、服を水浸しにしてしまう。もう一度着替えたいとは言い出せない。そこでドラえもんが出した道具が「きせかえカメラ」である。

NOBIと印字されたプリントシャツのイラストを描いてカメラに入れてシャッターを押すと、おしゃれなのび太に早変わり。のび太はさっそくこれを使って、ママの洋服を新調してあげる。のび太のパパは、「自分に断りもなく!」と怒っていたが・・。


ところで、この回では「きせかえカメラ」の仕組みを説明しているので、抜粋しておく。

「簡単な原理さ。積木遊びを思い出せばいい。同じ積木を組みなおすだけで、いろんな形が作れるだろ。あんな風に着物を作っている分子をバラバラにほぐして組み立て直すカメラだよ」

ひみつ道具に妙な説得力をもたせるのがF流である。

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のび太はカメラを持って町へと出て行き、ジャイアンとスネ夫がいたので、女の子を服を着せて喜ぶのだが、怒った二人に取り上げられてしまう。

スネ夫はデザイナーになるのが夢でノートに衣装を何着もデザインしていることをジャイアンに打ち明ける。なので、きせかえカメラに大興奮。一方のジャイアンは、男らしい逞しい体を生かして、ファッションモデルになるのが夢だと告白する。笑いを必死にこらえるスネ夫。。

奇しくもデザイナーとモデルが夢だった二人は、きせかえカメラを使ってファッションショーをしようと盛り上がる。さっそく、しずちゃんたち女子4人を空き地に集めてミニファッションショーを開催することに。


舞台に立ったまま次々と衣装が変わるということで、しずちゃんたちも大喜び。ところが、自信満々にスネ夫がシャッターを切ると、ジャイアンは何と素っ裸に。女子たちはキャーと一目散に逃げていく。

ドラえもんが陰でこっそりカメラからデザインを抜き取っていたので、カメラの中は空っぽ。なので、服を着ない姿になってしまったというわけである。

ちなみに大長編における「きせかえカメラ」は、やはり「のび太の恐竜」でしずちゃんを男性用水着に着せ替えさせてしまうシーンが印象的であった。

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『桃太郎印のきびだんご』「小学二年生」1975年4月号/大全集7巻
+『どうぶつごヘッドホン』「小学一年生」1975年3月号/大全集7巻

ご存じ、これを食べさせればどんな猛獣でも人の言うことを聞かせることができる「桃太郎印のきびだんご」

この初登場回は、なんとてんとう虫コミックス未収録であり、さらに本作の前段となる未収録作品も存在している。まずはそのあたりを解説しておこう。


1974年度の「小学一年生」は、「ドラえもん」ではなく「モッコロくん」という作品を連載していた。そして74年度最後となる「小学一年生」1975年3月号で「ドラえもん」が掲載される。「どうぶつごヘッドホン」というタイトルの6ページのお話である。

この作品は1974年度に小学校に入学した子供たちにとって、学習誌で読む初めての「ドラえもん」という位置づけになる。なので「ドラえもん」の紹介的な性格と、学年が繰り上がった翌月の「小学二年生」1975年4月号に繋がる予告編的な役割を担った作品となる。


内容は、ジャイアンがネコを虐待し、それを見ていたのび太が止めに入る。ところがネコの飼い主が現われると、「ネコに酷いことをしたのはのび太」だとジャイアンに嘘をつかれて濡れ衣を着せられてしまう

悔しいのび太はドラえもんに泣きつき、出した道具が「どうぶつごヘッドホン」である。このヘッドホンをすると動物の言葉がわかる道具で、これを先ほどのネコの飼い主に着けさせて、飼いネコに事情を聞いてのび太の無実の罪は晴らされる。

代わりにジャイアンと嘘に加担したスネ夫を、こっぴどく叱るネコの飼い主。のび太はこれで気が済んで、一件落着といきたいところだったが、ジャイアン・スネ夫が、のび太に逆恨みして、今度見つけたら仕返ししてやると息巻く。

この情報をヘッドホンを使って犬づてに聞いたのび太。ドラえもんにすかさず相談するが、そこでドラえもんが言うには・・

「心配いらないよ。僕のポケットには、まだまだすごいのがうんと入っているから」

とポケットに手を入れたところで本作は終了。

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お話が続きそうな終わり方で、かなり珍しいパターンではないだろうか。ちなみに「どうぶつごヘッドホン」と似た働きの「聞き耳ずきん」という道具が。「キテレツ大百科」にて本作の半年前に登場している。


そして翌月号(4月号)が「桃太郎印のきびだんご」である。

この作品の冒頭は、ジャイアンとスネ夫がのび太を見つけたらただじゃおかない、とバットと竹を持って町を徘徊している。先月号からジャイアンたちの怒りが繋がっているのである。

のび太はどうしようと、ドラえもんに泣きつくが、そこで出したのが「桃太郎印のきびだんご」である。まずはママで実験し、食べさせたあと、犬のように「おすわり」させて「おまわり」させる。

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ここでドラえもんが、きびだんごの説明の中で、「食べさせた人の命令通りに動くようになる」と言っているのだが、これについては少し説明に誤りがある。

この後、きびだんごを持ってジャイアンとスネ夫に近づいていくのだが、だんごを食べさせようとしても、「だんごみたいなこぶを作ってやる」と全く聞く耳を持たない。追いかけられて、たまらずしずちゃんの家へと逃げ込むのび太。


ジャイアンたちは、しずちゃんの家の前でのび太が出てくるまで待つ体制。しずちゃんはのび太とオセロをしようとするのだが、のび太はソワソワと落ち着かない。すると、しずちゃんが、のび太が持っていた「桃太郎印のきびだんご」を勝手に一つ食べてしまう

すると、のび太の言うことを聞くようになるしずちゃん。そこでのび太はしずちゃんを使って、だんごをジャイアンとスネ夫に食べさせることにする。

この時、しずちゃんに渡されただんごをジャイアンたちが食べたので、先ほどのドラえもんの説明が正しければ、ジャイアンたちはしずちゃんの言うことだけを聞くはずである。ところがジャイアンたちは、のび太の言うことを聞き、言われたように二人で喧嘩を始めるのである。

その後の使い方からすれば「桃太郎印のきびだんご」は、食べた人間(動物・恐竜)を誰の言うことでも聞くようにする道具だと考えた方がよいだろう。

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この『どうぶつごヘッドホン』からの『桃太郎印のきびだんご』という流れは、ぜひ大全集の7巻にて味わってほしい。


『ゆうれい城へ引っこし』
「週刊少年サンデー別冊」1976年6月号/大全集20巻

本作は既に考察済みの作品であるが、ここで初めて「ほんやくコンニャク」が登場する。言葉が分からない者同士が簡単に分かり合える非常に便利な道具で、大長編ではかなりの使用頻度である。

ちなみに初登場では思いの外小さい食べ切りサイズで登場し、絶対にこっちの方が食べやすくていいなあといつも思う次第である。


さて、2回に渡って「大長編ドラえもん」に何度も登場するお馴染みのひみつ道具について見てきた。今回は特に頻出する道具だけを抽出したが、他にも重要なものがたくさんある。

それらについても、少しずつ紹介をしていくつもりである。


「ドラえもん」の考察・検証やっています。


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