![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/56924621/rectangle_large_type_2_2a8a7789f464260767d46cb36848bb05.jpg?width=800)
パーマンVS幽霊トリック『別荘のユーレイ』/しかしユーレイはいない④
「幽霊がいた!」→「やはりいない」と展開する作品を集めてきた「しかしユーレイはいない」シリーズ記事も4本目となる。まだ続くの?という感じだが、もう少しお付き合い願いたい・・。
これまで①「ドラえもん」②「オバケのQ太郎」③「ウメ星デンカ」と見てきたが、本稿では④「パーマン」を取り上げる。
「パーマン」は60年代と80年代の二回連載された珍しい作品である。今回見ていく『別荘のユーレイ』は、80年代にリバイバルした作品の一つとなる。
掲載誌は、藤子不二雄のために創刊されたとも言われる「コロコロコミック」で、毎回ある程度のページ数の作品を載せていた。本作も扉を入れて16ページのボリュームである。
「パーマン」『別荘のユーレイ』
「月刊コロコロコミック」1983年9月号/大全集7巻
いきなりネタバラシから始めてしまうが、本作は幽霊が悪意のインチキだった、というオチの作品である。このパターンは非常に多くて、前回記事にした「ウメ星デンカ」の『出た出たオバケが』や、「ドラえもん」の『ゆうれい城へ引っこし』などがそれにあたる。
それぞれ、詳細の記事はこちら。
カバ夫やサブやミチ子から、パーマンがいかに無敵かを褒められて、調子に乗るパーマン。「近ごろ戦っても張り合いがない、手ごたえのある相手と巡り合いたい」なんて軽口を叩いていると、普段からパーマンに対してあまり快く思っていない三重が、「それでは」としゃべりだす。要点は以下。
・重井沢に別荘を買った(高かったけど家が金持ちだから)
・ところがユーレイが出て困っている
・池の周りにヒトダマ
・足音が近づいてくるのに姿は見えない
・暗闇にボーっと浮かぶ血みどろの・・
怖がりのみつ夫(パーマン)は、「そんなくだらない話」と逃げ出そうするが、三重に「パーマンでも怖いものがあるんだ」とバカにされて、思わず「今夜ユーレイをやっつけてくる」と宣言してしまう。恐怖よりもプライドを選ぶ男、パーマン。
ということで、パーマン仲間4人で三重の別荘に泊まって、ユーレイの謎を探ることに。古いがしっかりした建物で、裏に池があってカメがたくさん棲んでいる。
「明るいうちにユーレイ出てこい」などとパーマンが話していると、この別荘の地主という男が現われ、「三重さんが買い戻してくれと泣きついている状況だから、汚すな、火の元に気をつけろ」と、高圧的で、非常に感じが悪い。
そこでパーマンは推理する。
・ユーレイ騒ぎの犯人はあの地主
・別荘を高く売りつけ、ユーレイに変装して脅し、安く買い戻す
・これを繰り返して儲けている
幽霊が存在しないとすれば、結構いい線いっている読みではないだろうか。
みつ夫の考えを聞いた他のパーマンたちには「変装した幽霊というような簡単な話ではない」と反論され、パーマンは「やはり本物か」とビビる。そこでパーやんが一言。
「科学で証明できんこともあるのやから、軽がると結論は出せんということや」
このセリフは、さり気なく、オカルトを簡単に存在しないと結論するなという、F先生の思いが込められている。結果、今回の幽霊はニセモノだが、何事もきちんと検証もしないで嘘だと決めつけるべきではないというF的メッセージを受け取ってもらいたい。
ところで、このパーマンたちのやりとりは、皆で夕食を囲みながらワイワイとやっている。子供の頃初めて読んだ時は、こんな風に皆で泊まったりすることが羨ましいと思ったものである。パーマンの仲間意識、チームワークが「パーマン」の最大の魅力だと改めて思う次第である。
さて夜中。パーやんはいびき、ブービーは歯ぎしりが酷くて、パーマンは眠りそびれてしまう。すると、別荘の裏手が明るいことに気がつく。見ると池の周りにヒトダマがうじゃうじゃと浮いている。
「ギャーギャー」と悲鳴を上げると、パーやんたちも起きだす。「地主がローソクで脅したんだ」とパーマンが言うと、「何十人もバイトを雇ったんだろうか」と、パーやんはその意見に懐疑的。
パーやんはとにかく様子を見てくると言って、池に飛んでいく。そして戻ってきたかと思うと、「急用を思い出した」といって、突然一人で帰ってしまう。
この手のパーやんのスタンドプレーはよく見かける光景で、彼は身内にも内緒で単独行動を起こし、事件を解決してしまうことがある。チームプレイに若干向いてないタイプである。
残されたパーマンとブービー。パーマンは「全部トリックだ」と強がる。ところが、一階からギシギシと足音だけが近づいてきて、パニックに陥り、パー子の部屋へと逃げ込むパーマンとブービー。
「古い家は軋むものだ」とパー子が落ち着かせようとするのだが、「怖いだろうから」とパー子と一緒のベッドで寝ようとする。パー子は二人を部屋から追い出すのだが、今度はパー子の部屋の壁の中から、幽霊がモヤ~と姿を見せる。さすがのパー子もキャーと悲鳴を上げる。
幽霊の存在を信じたくないパーマンは、「それは八ミリ映画でどこかに映写窓があるはずだ」とまたも強がる。ところが、その矢先、外の窓から幽霊が姿を現す!
「出たァ、本物だ!!」
叫び、逃げ出すパーマンたちだが、そこにパーやんが現われ、その幽霊をあっさりと捕まえてしまう。
幽霊の正体は、地主の男。パーやんは、池にヒトダマの様子を見に行ったときに、カメに針金を巻き付けて、アルコールを染み込ませたワタを装着させていることを確認していた。この幽霊騒ぎが人間の手によるものだと確信して、逃げたフリをして外で様子を見ていたのだ。
事件解決のためには、仲間をも使うパーやんのクールさが発揮されたと言えるだろう。他のユーレイのトリックは、壁に映る幽霊は八ミリ映像、動く足音はステレオの原理を使ったスピーカーによるもの。最初から最後までパーマンの推理は、全部当たっていたのである。
かくして別荘のユーレイ事件はこれにて解決。「きちんと打ち明けて謝れ」と、幽霊姿の地主を寝ている三重の元へ連れて行くパーマン。「別荘のユーレイが押しかけてきた!!」と絶叫する三重であった。
話としては、比較的オーソドックスな運びながら、幽霊譚でもあり、推理劇でもある練られた作り。あらゆる敵と対峙してきたパーマンたちが、今度は怪奇現象と対決するという展開も面白いし、パーマン仲間4人の個性も十分に発揮されている。
かなりの名作だと思っているが、どうだろうか?
「しかしユーレイはいない」作品の紹介は、次回でラストとなる。あらゆる作品で、幽霊譚を登場させているF先生。その着想の根っこには、落語の怪談噺があるのでは? というような話になる予定です。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?