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パーマン5号が消えた理由(わけ)/考察パーマン⑩後半

パーマン仲間は一般的に4人と思われている。

1号=須羽みつ夫
2号=ブービー
3号=パー子
4号=パーやん である。

主人公の1号が平凡な男の子だとすると、2号が探し物上手のサル、3号がおてんばな女の子、4号がガッチリ賢い大阪人、というキャラ分けができている。

おそらくF先生も、この布陣で進めていくことにしていたと思うが、連載開始からだいぶ経った段階で、突然5人目のパーマンが構想される。それが、5号=パー坊という赤ちゃんパーマンであった。

パー坊がなぜパーマンとなったのか、そのエピソードについては前回記事化させているので、こちらをまずご参照いただきたい。

さて、赤ちゃんパーマンが誕生したわけだが、いくら中身が賢い赤ちゃんだとしても、ヒーローとして活躍するのは大変に無理がある。

本稿では、この無理のあるパーマン5号がメインとなって活躍する話が3本あるので、発表順にこちらを見ていきたい。その上で、80年代のパーマンのリバイバルにおいて、このパー坊が消えてしまった理由についても検証する。

『パーマン5号の空き巣退治』
「週刊少年サンデー」1967年33号/大全集2巻

サンデー夏の増刊号で初めて登場したパーマン5号=パー坊は、さっそく週刊少年サンデーでもデビューする。この話は、パー坊が赤ちゃんであるという部分と、パーマンであるという部分の両極端な特徴にフォーカスが当たる。

みつ夫がバッジで呼び出され信号をたどると、パー坊の住む団地。パー坊の正体であるコーちゃんが、パーマンを呼び出していたのだ。それに対してパーマンは、「まあ、これでもパーマンだからな」と、呼び出した理由を聞くと、パー坊は「アチョビマチョ」と、遊びのお誘いなのであった。

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その後、この団地で空き巣事件が発生。コーちゃんはパー坊となって、空に飛び出すと、屋上でコソコソしている空き巣を発見して近づいていく。泥棒はパー坊を人質にしようとするが、反撃されて逃げまどう。

そこへパーマンが登場し、自分が泥棒を相手にすると言い出すが、体中を怪我したり酷い日焼けをしたりしていたので、逆にやられてしまう。パーマンをやっつけたということで自信をつけた泥棒は、パー坊を風呂敷の中に入れて逃げ出すことにする。

ところが、パー坊は風呂敷に包まれたまま空を飛び、自分の部屋に泥棒を連れていくと、そのまま赤ちゃん用ベッドを使って閉じ込めてしまう。見事な泥棒逮捕なのである。

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『パーマン5号大かつやく』
「小学四年生」1967年11月号/大全集4巻

続けてのパー坊メイン回がこれ。学習誌では初めての登場となる。

冒頭、ハイハイをしているパー坊に銃弾が襲う。間一髪パーマンが助けるのだが、「危ないなあパー坊は引っ込んでな」と、扱いに困っている様子。ブービーをパー坊のお守りにして、銃撃してきた強盗を捕まえようとする1号と3号。ところがブービーを引っかいてフラフラ飛び出したパー坊は、強盗に捕まってしまい、人質となってしまう。

が、パー坊は強盗のピストルの銃口をひん曲げて、その隙にパーマンたちに御用となる。機転が利くパー坊なのである、

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強盗仲間はあと二人。探しに向かおうとするが、パーマンは「パー坊はダメッ」と家に帰そうとする。「危ないからね、おりこうだから」とあやそうとするが、パー坊はフンギャーと泣いてしまう。今度は一転、我がままな赤ちゃんなのである。

このように、赤ちゃんとヒーローという両極端の特徴を持つキャラクターなのがパー坊なのである。

パー坊はパーマンの背中で寝てしまい、家へと送り届けられる。残りのパーマンで強盗仲間二人を見つけるが、またも人質を盾にして一軒家に閉じ籠ってしまう。

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手出しをできず困っていると、またもパー坊が登場。「イッチョイッチョ」と、ヒーロー活動を何かの遊びと勘違いしているようである。ブービーを使って、パー坊を家に送り届けさせる。パー坊がいると、気を取られて仕方がないのである。

ところがパー坊はブービーから逃げ出して、何と単独行動に出る。コーちゃんに戻って、強盗のいる家に入り込み、自ら人質となる。強盗の一人におしっこをしてオムツを替えて貰ったり、お馬さんごっこしたりと赤ちゃんを堪能した後、パーマンセットを着て男たちをやっつけてしまう。

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この活躍によって、パーマンも「赤ん坊扱いしてごめんよ」と脱帽するのであった。

『5号のママの誕生日』
「小学三年生」1968年2月号/大全集3巻

今見てきた2本は、赤ちゃんながらもパーマンとして活躍する姿を描いた作品であったが、次の作品は、あまり事件性はない。パー坊のドタバタな日常を描いた話となる。

この話でもパーマンがパー坊からバッジで呼び出されるところから始まる。呼ばれたパーマンは、その理由も聞かずに「5号のいたずらか。おもちゃにしちゃだめだよ」と、すっかり邪魔者扱いが当たり前となっている様子。

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パー坊は言葉を尽くしてママが今日誕生日であること、だから何かをしてあげたいと考えていることをパーマンに伝える。最初の登場のころより語彙力がアップしている気がする。

パーマンは、「そういうことなら」と手伝うことにするが、うまくいかず逃げ出してしまう。そこでパー坊は自分ひとりの力で、ママを喜ばせようとする。ママが寒がっているので、団地中からストーブを集めてきたり、お花を買い忘れたというママに対して、葬式の花輪を持ち込んだりする。能力はパーマンでも、知恵のレベルは赤ちゃんなのである。

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以上が、パー坊がメインとなる3作品である。ちなみに他の出演作をまとめてみよう。

「週刊少年サンデー」では、第一期の最終回となる『スーパー星への道』に登場するのみ。あとは「月刊別冊少年サンデー」の『パーマンをやっつけろ』で全ギャド連に紹介されている。学年誌では『特大クリスマス』で姿を見せている。モブキャラ扱いで3作品確認できた。

初登場+メイン3話+モブ3話で、パー坊が登場する話は、全部で7話分のみということになる。案外少ないのである。

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以上、パー坊の全エピソードを拾ったが、もう何となく、第二シーズンで登場しなかった理由も明らかになったであろう。

パーマン5号が消えた理由(わけ)

まとめると、「赤ちゃんがパーマンに!?」というエピソードを何本か発表した結果、赤ちゃんとパーマンというギャップで笑わせる作品を描き尽くしてしまったのである。意外性が武器のパー坊であるから、同じような話を描いては意外性が薄れてしまう。乱暴に行ってしまうと、あくまでパー坊は出オチのキャラクターなのである。

次に、中身が赤ちゃんという特性上、使い勝手が悪いということが指摘できる。例えばヒマラヤ山脈に行く話、海に潜る話など、パーマンとはいえ、赤ちゃんをそういう場所に連れていくわけにはいかない。パー坊には行動制限があるのだ。

大きくこの二点の理由から、新パーマンでは最初からいないことにして、パー坊を登場させなかったのだろう。

こうして、パーマン5号は幻と化してしまったのである。

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