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出木杉のパパ登場『貸し切りチップ』/ドラえもんミニ考察①

『貸し切りチップ』
「小学三年生」1983年6月号/大全集14巻

全8ページ。4ページ目でようやくひみつ道具が登場する。前段階に時間をかけるタイプのお話である。

みんなの憧れ、ゲームウォッチ

冒頭ではスネ夫の電子ゲームをみんなで交代で遊んでいて、のび太の順番の前にジャイアンに独占されてしまう。当時はゲームウォッチ全盛期で、小学生では裕福な子以外あまり買ってもらなかった。このシーンではドラえもん最大のモブキャラ・安雄とはる夫が登場している。

ジャイアンはゲームを横取りする際、「どれどれおじさんに貸してみな」とふざけている。


しずちゃんはスターウォーズがお好き

しずちゃんはパパと映画館に「スペースウォーズ」を見に行ったが満員で入れなかった。「スペースウォーズ」は当然「スター・ウォーズ」のパロディである。ラストのスクリーンでは「スター・ウォーズ」一作目の砂漠に立つルーク・スカイウォーカーの映像イメージが映っている。

本作が執筆されたのはシリーズ完結編だった「スター・ウォーズ ジェダイの帰還」の公開直前で、世の中の映画ファンは大騒ぎであった。やたらと「スター・ウォーズ」をネタに出してくるF先生も早く見たかった一人だったのではないだろうか。

ちなみに『のび太の部屋でロードショー』(78年6月)というエピソードでは、やはりしずちゃんが「スタージョーズ」という作品を見たがっているシーンが出てくる。この時はちょうど一作目の「スター・ウォーズ」公開直前のタイミングで、やはりSFファンが騒ぎ立てていた頃だった。しずちゃんは意外にもSFアクション映画を好むのかもしれない。


のび太はしずちゃんを独り占めしたい

出木杉君が「スペースウォーズ」のビデオを買ったので見に来ないかとしずちゃんを誘う。「ほんと!?見せて見せて」としずちゃんは両手を上げて喜び、のび太は気を悪くする。せっかく「君もどう?」と出木杉に誘われるが、ビデオじゃなくて大画面で見た方がいいと言って断ってしまう。映画にこだわりがあったのではなく、単純にのび太はしずちゃんを独占したかったのだ。

当時は映画公開とビデオの発売は時期がずれていたはずなので、このビデオは一作目のものではないだろうか。よって、映画館の作品はシリーズ3作目なのかもしれない。

しずちゃんはパパとお出かけだったので、ジャケットを着てショルダーバッグを掛けている。普段より余所行きの格好となっているのが芸が細かい。


やまびこ打線

のび太は家に帰り、ドラえもんと野球中継を見ようとする。TVに一瞬映っているのは高校野球らしく、ユニフォームには「IKE」の文字が見える。これはおそらく池田高校のユニフォーム。池田高校は「やまびこ打線」と恐れられ、本作が発表された1983年の春期大会では優勝し前年夏に続く連覇をしていた。

のび太のパパはゴルフ中継を見ようと一度チャンネル権を奪う。その後「貸し切りチップ」の効果によって、「麻雀」の誘いの電話が掛かってきて、そちらに飛んで行ってしまう。ゴルフと麻雀という典型的なオヤジである。


出木杉のパパ唯一の登場シーン

貸し切りチップを使って、昼寝用の土管、スネ夫のゲームを貸し切る。そこへしずちゃんがトボトボと歩いてくる。出木杉の家のビデオが壊れて「スペースウォーズ」を見ることができなかったのだ。

しずちゃんを独占するチャンスだが、そこへビデオが直ったと出木杉が再登場。のび太はすかさず貸し切りチップをしずちゃんに付けると、「やっぱりダメ。また壊れちゃった」と出木杉の父親が修理用のドライバー片手に現れる。

出木杉の父親は、後にも先にもこのコマが唯一の登場シーンである。出木杉のようにハンサムではないが、チョビ髭が妙にインパクトを残すキャラクターである。果敢にもビデオを自力で直そうとするあたり、機械には強そうだ。

ちなみに出木杉のママは『時限バカ弾』(1985年7月)にて、「パッパラパー」というバカになった声だけの登場を果たしている。これが唯一存在を示すシーンであった。


ミニ考察第一弾はこれまで。思いの外ネタの詰まった作品を選んでしまったようで、ミニではなかったような。。

長めのドラえもん考察も宜しく!


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