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魔美は弾丸で瞬間移動する?『弾丸よりもはやく』/藤子ヒーローVSピストル②

エスパー魔美が拳銃で撃たれたらどうなるのだろう。仁丹を自分にぶつけてテレポートしているが、目にも止まらぬ速度のタマでテレポートすることはできるのだろうか・・?

パーマンが拳銃で撃たれたらどうなるのだろう。マスクを被れば普通の人間の6600倍の力・強度を誇る超人となるが、ピストルの弾を跳ね返すことはできるのだろうか・・?

二人の藤子ヒーローと拳銃の戦いは、どちらに軍配が上がるのか。そんな疑問にお答えするエピソードを二回に渡って紹介していくその2回目。本稿では「エスパー魔美」が弾丸でもテレポートできるのかを検証していく。

ちなみに前回の記事はこちら。


「エスパー魔美」『弾丸(たま)よりもはやく』
「マンガくん」1977年21号

エスパー魔美は主人公を女子中学生に設定し、「ドラえもん」の世界よりは少し大人の社会を見通しつつ、あくまで主人公の身の回りで起こる事件に向き合うストーリーとなっている。

そうした枷が最初からあるので、非日常的な物語は作られず、せいぜい夢の中で「エスパーおマミ」を演じるのが関の山となっている。

そんな中「エスパー魔美」21本目にして、国家的な大事件に魔美が臨むことになる。何せ今回の敵は世界を股にかける謎のスナイパーなのである。

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事件といっても、事件を未然に防ぐのが今回のミッションである。

中近東の大産油国・ナムダミア共和国のダブダブラ大統領が来日する。訪日期間は5日間。未確認情報ではあるが、共和国の反政府派が大統領を日本滞在中に暗殺しようという計画が進行中であるという。

暗殺者は「ブラック・キューピッド」と呼ばれる国籍や人相は不明、金さえ積まれれば世界中どこででも人を殺す冷酷な男。一発で心臓を撃ち抜く腕前から、キューピッドのあだ名が付けられたのだという。

もし大統領暗殺が実行されれば、大きな外交問題に発展し、国際的信用を落とすばかりか石油の輸出も止められてしまうかもしれない。

この話を聞いた魔美は

「待望の大事件! エスパー魔美の腕の見せ所だわ!!」

と、ヒーロー気分が一気に盛り上がる。

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魔美は自分に発射された弾丸でテレポートができるはずので、殺し屋なんて怖くないと考える。けれど、高畑は全く魔美を信用できない。

高畑が噂として聞いているキューピッドは、某国情報機関が開発したという信じられない高性能の拳銃を使うという。人間の反応速度は弾丸の速さにはかなわないと考える。

「君程度の三流エスパーなんか、心臓へズドン!!」

と指を魔美に向けると、魔美の胸に突き刺さる。怒って突き飛ばされる高畑・・。

魔美は高畑はアテにならないので、独力で戦うと決意する。興味本位もあるのだが、人の命が掛かっているのを放っておけない気持ちが強いのである。

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単独行動を開始する魔美。どちらかと言えば浅知恵の魔美は、福山総理の晩餐会の帰りの大統領の車の中に入り込んで、大混乱を引き起こしてしまう。これをニュースで見た高畑は、すぐに魔美の仕業と見抜き「やることが無茶苦茶だ!」と驚き嘆く。

放っておくと魔美が何をしでかすかわからない。仕方なく高畑は、魔美に協力することにする。


夜中、魔美と高畑は完成したばかりのナムダミア会館へ向かう。来日四日目に大統領主催で、会館の庭でオープニングパーティが開かれる予定となっている。来日中、唯一戸外に大統領が立つ場面なので、暗殺が実行されるとしたらここだと高畑は推理する。相変わらず賢い。

高畑の推理はさらに続く。
・プロは必ず逃げ道を用意するので警戒厳重な室内では手を出さない
・キューピッドの拳銃の射程距離である150メートルに含まれるビルの窓から狙うはず
・パーティーは午後三時からなので、各階が会社になっているビルは大丈夫
・屋上も警備されるので大丈夫

すると、おあつらえの場所にマンションがある。管理人室で住居人名簿を見ると、5日前に越してきた外国人がいる。ムタハ・アリ505号室。いかにも怪しい。

部屋にテレポートすると、全く生活の匂いが感じられず、ベランダからは会館の庭が見渡せる絶好の立地であることがわかる。どうやら、高畑たちは犯人の部屋を見つけてしまったようである。

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翌日。間もなくパーティーが始まる時間。会場に向かおうとする魔美を高畑は呼び止める。「ブラック・キューピッドみたいな者がこんなに簡単にシッポを掴ませるわけがない」と、思い直したのである。

魔美からすれば今更の話。「昨日の推理で間違いない」と会場へと向かってしまう。

505号室にいきなり飛び込む魔美。すると窓際でライフルを持つ怪しい風貌の男が座っている。男は突然現れた魔美に銃を構えようとするが、先にテレキネシスで倒してしまう。・・・あっさりブラック・キューピッドをやっつけて拍子抜けする魔美。

すると突然部屋の電話が鳴る。恐る恐る受話器を取ると、それは警備本部からの所在確認の電話。ムタハ・アリは大統領警備の人間であったのだ。それでは、本物のキューピッドはどこに??

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すると魔美は、向かいのビルからどす黒い津波のような、強烈な殺意を感じとる。キューピッドはそこにいる!

テレポートで部屋に入ると、そこは倒産した会社のようだ。窓際に不気味な男が座っている。魔美は思う。

「何という強力な思考波。獲物に飛び掛かる前の猛獣みたい。息詰まるような迫力だわ」

相手もエスパーかと思うような、強い念波は発せられている。あまりの殺意に圧倒される魔美。恐れから動けなくなる魔美は、何とか自分を鼓舞するように超能力を使おうとする。

しかし、一瞬ブラック・キューピッドの動きが早く、構えた銃から弾丸が飛び出し、魔美の胸を直撃する。吹っ飛ばされる魔美。生気なくドサと倒れ込む。

ブラック・キューピッドは続けて窓から身を乗り出し、大統領の暗殺を実行しようとする。狙いを定め銃を構えるキューピッド。すると、拳銃が手から勝手に離れたと思うと、魔美が立ち上がり、テレポートで警官隊の真ん中へと投げ込んでしまう。

魔美を撃った弾丸は、魔美の胸に着けていたテレポート・ショット・ガンに当たり命が助かったのである。

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結果的には魔美の勝利だが、これは偶然勝ったと言っても良いだろう。高畑の思った通り、弾丸の速さに魔美のテレポートは追いつかなかった。そう考えると、魔美VSピストルはピストルの勝ち、と言えそうである。

なお、今回壊れたブローチは、次作で高畑君が修理をして持ってきてくれるシーンが描かれている。

結論:魔美は弾より遅い


二回に渡って藤子ヒーロー対ピストルの攻防を見てきたが、結果は2戦2敗。しかしながら、拳銃を使った悪者には勝利している。勝負に負けて試合に勝った感じだろうか・・。

「パーマン」では偶然、相手の拳銃がモデルガンだった。「エスパー魔美」では偶然、撃たれた場所がブローチだった。二人とも偶然に助けられているわけだが、こうした運の良さが、ヒーローたる所以なのだろう。

結論:藤子ヒーローは悪運が強い


「エスパー魔美」の考察たくさんたくさんやっています。


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