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6月15日と言えば・・『ハッピーバースデイ・ジャイアン』/ドラえもんミニ考察⑰

「ドラえもん」世界における6月の最大イベントといえば、「ぐうたら感謝の日」と「ジャイアンの誕生日」である。

「ぐうたら感謝の日」については、既に記事になっているのでこちらを是非読んでみて下さい。


そして、問題はジャイアンの誕生日である。のび太とドラえもんを除けば、誕生日の日付までしっかり決まっているのはジャイアンだけだ。そして、ジャイアンの誕生日をズバリ描いたお話も存在する。

ジャイアンのいつもの横暴さと、本音の部分も垣間見れる注目作となっているので、こちらをご紹介したい。


『ハッピーバースデイ・ジャイアン』
「小学三年生」1980年6月号/大全集11巻

運命の6月15日

下校中ののび太としずちゃんの所へ、スネ夫が慌てて駆け込んでくる。

「何をのんびり歩いてるんだ! 今日が何日か忘れたの?」

「6月15日だろ」と普通に返すのび太に対して、スネ夫はジャイアンの誕生日だと告げる。しずちゃんも思わず、

「今年もめぐってきたのね」

と、一気に緊張が走る。

去年のこの日は、スネ夫が風邪、しずちゃんは親類の結婚式、のび太は葬式に出るという分かりやすいウソをついて難を逃れたようで、今年もジャイアンが呼びに来る前に家を出ようと、皆、家へと走り出す。

全く祝う気配もないのび太たち。余程、酷い誕生パーティーが開催されていたのだろう・・。


「相手ストッパー」

ジャイアンは昨年、皆に逃げられてしまったので、今年こそはということで、ドラえもんの道具を利用することに。

ジャイアンは、ドラえもんに「せっかく訪ねていった友だちが留守だとがっかりするので、そんなことにならない機械を貸してくれ」とお願いする。ドラえもんが出した道具は「相手ストッパー」。文字通り相手を足止めしてくれる道具だという。

ジャイアンと入れ替わりにのび太が帰ってきて、ドラえもんに今日がジャイアンの誕生日だと告げる。慌てて逃げ出そうとするのだが、玄関口で足が止まってしまう。ジャイアンが「相手ストッパー」を使ったのである。

「なんでそんなもの貸したんだ」

と涙を流すのび太。しずちゃん、スネ夫も相手ストッパーの餌食となった模様である。

なお、「相手ストッパー」は本作の翌月に発表した『どっちがウソか!アワセール』にも登場している。この時はスネ夫を足止めされている。(二度目)


ジャイアン、独りよがりのバースデーパーティー

のび太、ドラえもん、しずちゃん、スネ夫とジャイアンの家に行く。じゃいあんのかあちゃんは、のび太たちをみて、「へえ」と意外そうな表情を見せる。何となく、息子の不人気を知っているのだ。

ケーキとジュースで誕生パーティーが始まる。ジャイアンは、自ら乾杯の音頭をとり、「いやあ、今日は実にめでたい」と感想を述べる。めでたいという言葉は人から言ってもらうべきだが、そこは押しつけがましく自己発信してしまうジャイアンなのである。

誕生パーティーから逃げ出すつもりだったので、のび太たちはプレゼントを用意していないが、ジャイアンはここでも押しつけがましく誕生日プレゼントを要求。皆は、苦しい言い訳をする。

「そ、それがその・・・。忘れてたわけじゃないけど・・・。少しでもいいものをと探してたら、間に合わなくて・・・。後で必ず・・・」

この言い訳は、4人でリレー形式でしゃべっている。ジャイアンは、「ま、楽しみは後に残しといた方がいい」と渋々矛を収める。

この後もジャイアンの独りよがりのパーティは続く。みんなももっと騒げと強要したり、独唱をしたりして、のび太たちを苦しめる。さすがのジャイアンも「なんか迷惑そうだな」と、皆の盛り下がっている様子に気付く。そして、

「わかってるぞ。お前らはほんとは嫌なんだろ。渋々祝ってもらってもちっとも嬉しくないぞ!!」

と爆発。4人を家から追い出してしまう。


ジャイアン、本音を吐露

その夜、ドラえもんはジャイアンに呼び出される。ジャイアンは、昼間の様子と違って、ひどく落ち込んでいる模様。そして、「どうして俺は人気がないんだろ」と本音をポロリ。

ドラえもんは、ここでジャイアンに対して厳しいセリフをはく。

「決まっているだろ。わがままで乱暴で図々しくて・・」

容赦ない。ジャイアンは「自分でもわかっているけどどうにもならない」と、さらに落ち込む。我がままでカッとなりやすい性格だと自分でも分かっていたのである。

そして、ついには泣き出して、

「せめて一年に一度、誕生日くらい心から祝って欲しいよ~」

と、ドラえもんにすがりつく。ジャイアンは、相手に祝えと押しつけがましい態度を取るのは、本当に祝って欲しかったことの現われだったのである。



ジャイアン、三日間耐える

ドラえもんは、ジャイアンにもう一度祝ってもらうチャンスを与える。「ふりだしにもどる」というサイコロ型の道具で時間3日前に戻し、「かんにんぶくろ」を渡して、腹が立った時は息を吹き込むと収まると説明する。

誕生日までの3日間、大人しく暮らして、皆が自主的に誕生日パーティーをしてくれるように努力しろ、というのである。

「かんにんぶくろ」があるので、人が変わったように穏やかになったジャイアン。その珍しい姿に、

「頭がおかしくなったのかしら!? 気持ち悪い」

と、酷い感想を言われる。(当然ムカつくので、かんにんぶくろで怒りを押さえ込む)

あっと言う間にかんにんぶくろは、怒りでいっぱいとなってしまい、使用不能に。残りの1日は、道具の力を借りずに、無理やりニコニコしていなくてはならないジャイアンなのであった。

・・・ここで思うのは、「ふりだしにもどる」で3日間も戻さず、せめて2日間にしておけば良かったのではないか、という疑問である。2日ではジャイアンを自主的にお祝いしようという機運は生まれない、ということなのだろうか。


本作では、乱暴者のジャイアンも、カッとなりやすい性格だと自覚していて、それで嫌われていることも分かっていることが描かれる。普段はともかく、一年に一回の誕生日くらいは、心から祝って欲しいとも願っている。

ジャイアンはこうした本音を隠さない実直さが、数少ない良いところのように思えるのだが、いかがだろうか。


「ドラえもん」のミニ考察もやっています。


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