見出し画像

つづれ屋のブランディング戦略?・宿泊宇宙人名簿#13~25

21世紀のレトロな(≒潰れそうな)ホテルつづれ屋。何度も経営危機に陥りながら、時々現れる奇特な宿泊客によって、自転車操業的に何とか続けている。

そんなつづれ屋の宿泊宇宙人の名簿を開帳していく企画の第二弾。前回の記事で、モンガーを連れてきてくれたササヤマ星人など、12組を紹介したので、今回は13組目から見ていきたい。


#13.漂流パイロット

#12.のモス星人によって、言葉を制限なくしゃべれるようになったモンガー。その際限のないおしゃべり攻撃に辟易してきたつづれ屋の面々であったが、その矢先、長髪で暗い風貌の男が泊まりに来る。

自ら雨漏りのする暗い部屋に泊まり、自分にかまってくれるなと引き籠る。しかしそこに目を付けたモンガーは、男が嫌だというのに近づいて話をまくし立て、逃げ出そうものなら、テレポートで引き戻す

泡を吹いて倒れてしまう男だったが、なぜかにこやかになって、お代を払って帰ると言い出す。実はこの男、10年間も無人星で一人漂流していたパイロットで、あまりの孤独さから神経を壊していたが、モンガーのおしゃべり口撃によって、復活し、生きる自信をつけたのだという。

これまた怪我の功名なのであった。

画像1

#14.ウキキの木

木星出身の植物人間、ウキキの木。人形使いが人形を操るように、人間に超能力で指令を送り、自らの意思を遂げようとする。動くときは人間を使って運ばせ、しゃべるときは誰かの口を借りる。ただし、ロボットに対しては能力は使えない。

食事は水。疲れているのに無理やり散歩に行かせたり、周囲の人間を躍らせたり、邪魔するゴンスケやオナベには、モンガーを使ってテレポートで飛ばしてしまう。とにかくわがままで横暴な性格である。

世話になったと、宿賃には大金塊を渡し、帰りはテレパシーでパイロットを操ってロケットをつづれ屋の屋上まで飛んでこさせる。

画像2

#15.スカンタコ星人とイカレ星人

同じクニャラ大学のご学友、スカンタコ星のテンガイとイカレ星のゲソ。たまたま地球の空港で再会し、別々のホテルに予約していたが、一緒にもっと話したいということでつづれ屋に泊まることに。外見は、名前通りタコとイカ。

心を通わせる同期の桜であるが、その矢先スカンタコ星とイカレ星との間で戦争が始まってしまう。そうなると、親友同士であっても、国民の義務として戦争を始めなくてはならない。

しかし互いを攻撃することはできない。そこで、20エモンと21エモンを外人部隊としてスカウトし、戦わせることにする。意思をコントロールされる帽子を被らされた二人は、喧嘩を始め、やがてそれぞれミサイルを取り寄せるなどエスカレート。

しかし二つの星は停戦し、平和条約を結ぶことになり、つづれ屋での戦争も終了。しかしスイッチを切り忘れた20エモンと21エモンは、延々と殴り合いを続けるのだった。

画像3

#16.耳が敏感な宇宙人

通常の声量の会話を聞くだけで、ガーンとなって倒れてしまうほどに耳が敏感な宇宙人。一番奥の部屋に通すが、防音設備の整っていないつづれ屋では、21エモンたちの歩く音でも気にかかって仕方がない。

ところが、人の雑音に対しては敏感なわりに、自分は信じられないくらいの大音量のいびきをかくのであった。

画像4

#17.宇宙旅行家・ゴリダルマ氏

料金滞納のため、水道・ガス・電気を止められてしまったつづれ屋。そこにタイミング悪く泊まりにくる男。とてもサービスできる状況ではないので、何とか引き取ってもらおうと説得するが、それでも泊まるという。

部屋への移動はモンガーのテレポート。風呂のお湯が出ないので、モンガーに地下の温泉からお湯をテレポートさせる。食事は材料を買うお金がなく、ガスが止まっているため調理もできないので、仕方なく、ゴンスケの掘ったイモを生のまま提供する。夜は電気が止まって真っ暗となるが、江戸時代から引き継がれている行灯(あんどん)を出して、何とか明かりを確保する。

翌朝、サービスもできなかったのでお代はいらないと断るが、想定以上の宿泊代金を払って帰っていく。

実はこの男は、今でいうインフルエンサーの宇宙旅行家・ゴリダルマ氏。雑誌「旅行」に、つづれ屋の苦肉の策に対して、珍しいサービスであると評価した文章を載せる。これによって、急につづれ屋には観光客が殺到することに。

画像5

#18.雑誌「旅行」を見て来た客たち

「室内温泉」「生イモ料理」「電灯を消しての行灯」を求めてクレームしてくる。


#19.スロモー星人とチョコマカ星人

動きや会話が非常にゆっくりなスロモー星人。一日が地球の一年にあたり、とにかく行動が遅い。呼び出しのベル音もブ~ザ~とだらけて聞こえる。

一方一日が地球の一時間にあたるチョコマカ星人は、とにかくスピード重視でお湯が張る前に風呂に入り、食事も準備中に寝てしまう。呼び出し音はブザブザブザと世話しなく、音と同時に飛んでくる。

チョコマカ星人は、スロモー星人のゆっくりさにいら立ち、挙句引きつけを起こしてしまう。

滞在時間一時間で、チョコマカ星人はチェックアウトしていき、スロモー星人は半年に及ぶ眠りにつく。

画像6

#20.黒メガネとへのへのもへじ

流行らないホテルだと聞きつけ、泊まりに現れるサングラスの男。モンガーの顔を見て驚き、金を払うから許せと言い出す。もちろん、これは何かの勘違い。

ややあって、流行らないで有名なつづれ屋かと、へのへのもへじの包帯を巻いた男が泊まりたいと言ってくる。この男も、モンガーの顔を見て不愉快になると、客室に引き込んでしまう。

結局メガネの男は整形外科医で、包帯男は整形に失敗してモンガーの顔にさせられていたことが判明する。手術をやり直すことになるが、今度は21エモンそっくりの顔となり、この世の者とは思えない酷い顔だと嘆くのだった。

画像7

#21.ジュゲム星のチョーキューメー氏

正確に言えば宿泊客ではないが、二度もつづれ屋を訪れてきれたので、ここに加える。詳しくは、下記の記事をご参照のほど。


#22.涙が真珠の宇宙人

3人のお付きを率いて宿泊することになる。この宇宙人は涙が真珠で、それを元手に宿賃を賄っているのだが、涙の耐性ができてしまい簡単には泣けなくなっている。お付きの3人はお代を得るために、帯同していたホテルの営業マンたちであった。

あの手この手でも涙を零さないが、ゴンスケの掘った土がこの宇宙人の目に入り、大量の真珠の涙を放出する。

画像8

#23.全身純金(?)の金属人間

ロケット欲しさにチップを稼ぎたい21エモンたち。そこに泊まりに来たのは、全身黄金の輝きを見せる金属人間であった。何とか体を削れないかと画策するエモンたちだったが、向こうから最近太ったので、体を削ってほしいと申し出てくる。

喜んで体を削り、金のアカを大量に手に入れる。が、鑑定してもらうと、金に似ているが、無価値の黄銅鉱なのであった。

画像9

#24.フニャコ・フニャオ先生

藤子マンガのあちこちで登場する人気漫画家・フニャコ・フニャオ。本作では珍しく安孫子先生をモデルとしたキャラクターとなっている。締め切りに追われ、つづれ屋でカンヅメして原稿を仕上げるつもりらしい。

この時代の漫画家はペンを使わずに、脳波をヘルメットを通じてコンピューターで自動的に作画する。CGでのマンガ執筆時代を予期したかのような設定である。

寝不足のフニャコ先生は、イメージ送信中に寝ぼけて、主人公もすぐ寝てしまうため、帯同していた編集者によって、ペンを刺して起こされるのだった。

画像10

#25.黒いオバQ型宇宙人

風貌は黒いオバケのQ太郎。頭に毛が三本生えていて、シルエットになるとゴンスケとも似てくる。ので、何かと見間違えてしまう。ウラニウムの鉱脈を探しており、ゴンスケが騙されて買った山にたどり着き、大枚を払って山を買い取ってくれる。そしてこのお金が、大宇宙に乗り出すロケットの元手となるのである。

画像11


さて、人気が無いことで有名となってしまうつづれ屋であるが、実はブランド価値を持っているホテルであることが、作中で語られている。ゴリダルマ氏が雑誌「旅行」で、つづれ屋の貧乏なサービスを逆説的に魅力たっぷりに紹介しているのがそれだ。

①モンガーのテレポート能力・・・部屋までの移動も一瞬。お湯すらも地下の温泉源から持ってきてしまう
②ゴンスケのイモ・・・美味しさはピカ一という素材の力を活かして、生でも葉っぱでも一級の食事になってしまう。
③江戸時代から伝わるグッズ・・・ゴリダルマ氏には行灯を出すが、他にも提灯や紋付や古食器などが伝わっている。

施設は古くて狭くとも、その古さや伝統をいかしてブランド化できるし、ゴンスケやモンガーたちの特技も使うことで、面白いサービスも提供できる。もともと真心ある接客を心掛けているつづれ屋なので、通り一遍ではない、個性あるサービスを求めるお客様には支持してもらえるのではないだろうか。

いつも貧乏でありながら、江戸開府から400年以上も経営を継続できている事実から、つづれ屋のようなオンボロホテルにも、ニーズが存在していることを証明しているのではないだろうか。何事もブランディング次第なのである。



この記事が参加している募集

コンテンツ会議

マンガ感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?