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コマーシャルに出てこその人気者?『パーマンCM出演』/CM効果あり?③

広告・コマーシャルをテーマとした藤子F作品を紹介するシリーズ「CM効果あり?」も3本目。これまでには、従来の広告手法(テレビ・ラジオ・新聞)とは異なるインターネット広告の時代を先取りにした作品(『かがみでコマーシャル』)や、コマーシャルの重要性と共に売り出したいコンテンツの中身も大事だとする(『コマーさる』)を見てきた。


現在、何かをPRしようとしたり、営業活動をしている仕事人には是非ともご一読いただきたい作品である。

本稿では同じCMを扱ったお話だが、これといったメッセージはない。人気者には広告代理店がすぐに近寄ってくるよね、くらいなものである。とは言え、本作ではその人気者とは我らがパーマンということなので、これはしっかりと記事にしておかねばならないだろう。


「パーマン」『パーマンCM出演』
「小学五年生・六年生」1985年9月号

ニホンモニター調べによる『2022タレントCM起用社数ランキング』というデータがあるので、抜粋して見てみよう。

1位 17社 芦田愛菜
2位 16社 川口春奈、本田翼
3位 15社 今田美桜
4位 11社 小池栄子、指原莉乃、広瀬アリス

これを見て意外だと思う方もいるかもしれない。例えば3位になっている今田美桜さんは、最近だと映画「わたしの幸せな結婚」などにも出演している売れっ子女優さんだが、既に昨年の時点で3位・15社という数字は少し驚きである。

もちろん、契約会社数のランキングなので、TVスポットの露出量や、出演料などの切り口にすればまた別の順位が出てくるものと思われる。しかしながら、広告業界が新しい人気者を積極的にCMに起用する傾向は見て取れるような気がする。


さて、我らがパーマンは、「旧パーマン」では認知度低めだったものの、活躍するに従って、徐々に知名度を上げて、「新パーマン」においては国民的な人気者になっている。本作はそのような流れにある一本だ。

冒頭でパー子がテレビCMに出演している。セイローの腕時計という商品である。事情を本人に聞くと「スミレちゃんの紹介で頼まれちゃって」と答える。

サブやカバ夫も「とうとうパーマンもコマーシャルに出たな」と感想を漏らしており、パーマン人気がうなぎ上りであることがわかる。ただみつ夫としては、パーマン3号がCMに選ばれたのはパーマン仲間のうちで一番カッコいいからだとカバ夫に言われて、少々気分が悪い。

言ってみれば、同じアイドルグループの中で、センターの人間だけが個別にCM契約を結んだようなものだろう。悔しいみつ夫は「1号は正義を守ることしか興味がないんだよ」とフォローを入れるのだが、「多分CMの注文がこないんだ」と返されて、さらに気分を害する。


そんなみつ夫が帰宅すると、パーマンにお客様が来ていると言う。相手はガン子曰く「コーコクダイリテン」の人らしい。そう、広告代理店、パーマンへのCM出演依頼である。

広告代理店の男性は子供に人気のあるパーマン1号に新発売のカップ麺のコマーシャルに出て欲しいと言う。そう、パーマンも世の中では人気者なのだ。大喜びのみつ夫だが、すぐにOKと言わずに、格好つけて「一晩考えさせてください」と答える。

「さすがはパーマン」などとおだてられ、広告代理店の男性は見本としてカップ麺を一箱置いて、明日出直すと言って帰っていく。そして、いなくなった瞬間に「ワーイ!!」と喜びの感情を露わにするのであった。


さて実際に試食してみると、これが絶品の味。これなら大威張りでみんなに勧められるということで、ブービーやパー子たちにもおすそ分けするのだが、これまた大受け。

ところがカッコつけしいのパーマンは、パー子とブービーにもCM出演は面倒くさいから迷っているなどと嘯く。パーマン独自のプライドで、待ちかねたように引き受けてはみっともないという判断が働いた模様である。

パーマンとしては、一度断る → そこを何とかと頼まれる → 仕方なく引き受ける という流れを想定し、明日の再オファーに臨むことにする。ここまでくると、素直にやりますと言った方が逆に潔くてカッコいいように思えるのは僕だけだろうか。


そして翌日。代理店の男性の再オファーに対し、一度断りを入れると、そこを何とかと食い下がってくる。ここまでは昨晩の想定通り。ところがこのタイミングで、うまいラーメンがあるという噂を聞きつけたパーやんが、わざわざ大阪からやってくる。

そしてすぐにカップ麺を試食すると、「うまい!!」と絶賛。何個もお代わりして、たらふく食べるパーやん。するとその気持ちいいほどの食いっぷりに感動した広告代理店の男性は、「CMに出て下さい!!」とまさかのパーやんにオファーする。

パーやんは何の迷いもなく「引き受けました」と快諾。パーマンはこの時点で断ったことになっているので、やはり僕が・・・と口出せずに、カップ麺のCM出演は4号のものとなってしまうのであった。


さて翌日、再び別のコーコクダイリテンの男がパーマンを訪ねてくる。次なる商品は新型のインスタントカメラ。前日のパーやんの例があるので、今回は是非にと即答しようとするのだが、その様子をカバ夫たちに見られてしまい、「あまり気が進まないなあ」などと返事を濁す。

すると偶然にもこのタイミングで今度は2号が、カップ麺目当てでみつ夫の家へと飛んでくる。カップ麺が無いと聞いて残念がるものの、インスタントカメラに着目したブービーは、勝手に写真を撮りまくる。

すると広告代理店の人間は「おサルにも写せます、これは受けるぞ」とアイディアが浮かんでしまい、コマーシャルの出演はパーマン2号へ渡ってしまう。


結局自分だけCM出演できないパーマンは、「いいもん、僕は正義のためだめに生きるんだもん」と泣きながら空に飛び立つのだが、良く前を見ていなかったせいか、電線に足を引っかけて地上へと落下して、大怪我をしてしまう。

そんな折に第三の広告代理店がやってくる。またもCM出演の話である。怪我を理由に今度は本気で断るパーマンだったが、「だからお願いするのです」と意外な反応。

こうしてパーマンが出演したCMが放送される。「パーマンだって怪我をする。まさかのときの安心保険」・・・図らずも保険のCMキャラクターとして抜擢される大怪我パーマンなのであった。


1号→保険
2号→インスタントカメラ
3号→腕時計
4号→カップ麺

何やかんやで、パーマン仲間は全員個別のCMを獲得する人気者だという事実は変わらないのである。



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