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「オバQ+パーマン」”映画”6本立て/藤子Fザ・ムービー①

藤子不二雄両先生の映画好きは有名だが、その結果「オバケのQ太郎」などの藤子F作品には、「映画」をテーマとしている作品が非常に多く存在する。特に映画作りの裏側を描いた作品は数知れない。

そこで、映画撮影のバックヤードを描いた作品をいくつか選んで、藤子先生の映画愛を検証してみたいと思う。「藤子Fザ・ムービー」と題して、全4回の連載企画を予定している。これをきっかけに、映画ネタ作品リストを作っていければ最高である。


本稿では、「オバケのQ太郎」と「パーマン」の中から、映画を題材としている作品を取り上げて、ざっと紹介していく。

「オバケのQ太郎」
『8ミリ超大作』「週刊少年サンデー」1965年8号/大全集2巻
『ぼくは映画スター』「週刊少年サンデー」1965年47号/大全集3巻
『Qちゃんロードショー』「週刊少年サンデー」1965年48号/大全集3巻
『077日本ロケ』「週刊少年サンデー」1966年40号/大全集5巻

「オバケのQ太郎」では、4本の「映画」ものが確認できた。一口に映画といっても、全て異なる切り口で描いているので、そこに着目してもらいたい。

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1.『8ミリ超大作』 テーマ:自主映画

パパの会社の同僚が8ミリカメラを購入し、西部劇を撮影することになり、Qちゃん・正ちゃんも出演することになる。映画のタイトルは「バッファロービル カンサスの決闘」

正ちゃんはガンマン、Q太郎はインディアン役で出演することに。銃撃戦のシーン撮影中に警官が来てしまうなどのドタバタの中、撮影を終える。そしてフィルムを適当に繋いで上映することになるのだが、タイトルは見切れて「バカ」になってしまっているし、その後も意に反した展開になってしまう。

撮影シーンを伏線にして、編集~上映でその伏線を回収するという構成が見事。それでいて、オバQならではのドタバタギャグのオンパレードという傑作。

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2.『ぼくは映画スター』 テーマ:貧乏映画会社

ピンボケ映画という、一応映画会社の作る作品に、Q太郎と正ちゃんが出演することになる。先ほどは自主映画だったが、今度は商業映画がテーマとなっている。

高度成長期における斜陽産業と言われた映画業界を意識した、貧乏会社のトタバタ撮影のお話である。社長であり監督の大日竹松は、邦画各社。松竹・大映・日活から取った名前だろう。ちなみに本作ではヤクザ映画を撮影している。

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3.『Qちゃんロードショー』 テーマ:反射幻灯機

反射幻灯機と言えば、「まんが道」でF先生が子供の頃作って遊んでいたシーンが印象的。おそらくこれは実話だろうが、本作はそうした思い出を元にしたお話だと思われる。

友だちを集めて、自作の切り抜き映像など上映する話で、他愛もないのだが、映画を自分たちで作りたいという気持ちがしっかり込められた作品だと言える。

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4.『077日本ロケ』 テーマ:海外クルー

「007」ならぬ「077」の日本ロケを手伝うことになるQ太郎たち。自分たちの家をロケセットにするのだが、部屋の中をグチャグチャにされてしてしまい、挙句撮影をしないことに。最後は小池さんの家をロケ現場にするのだが、壊され、家をロケセットにされてしまう、というオチ。

今でこそ修正されてきているが、外国映画での日本の描写は奇妙なものだった。そうした「おかしな日本」へのパロディが込められた作品となっている。

ちなみに本家「007」は、「007は二度死ぬ」という作品で日本ロケを行っているが、おそらくこの年に撮影が行われていて、その影響を受けたお話だと思われる。なお、「007は二度死ぬ」は翌年公開された。

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「映画」をテーマにしつつ、自主映画・商業映画・幻灯機・ハリウッド映画と切り口は見事にばらけている。そしてテーマは変われど、基本的には冒頭からラストまで一本道のドタバタコメディとなっている。


「パーマン」
『映画にでよう』「小学館コミックス」1967年6号/大全集5巻
『巨大ロボットの襲撃』「コロコロコミック」1983年8月号/大全集7巻

続けて「パーマン」の映画ストーリーを見ていく。新・旧それぞれから一本ずつ取り上げる。二本とも「パーマン」を題材にした映画を作る話だが、前者は現代の英雄・パーマンを追うドキュメンタリーで、後者は役者がパーマンを演じる劇映画となっている。


5.『映画にでよう』 テーマ:パーマンのドキュメンタリー映画

ドーデモ映画会社の人間が、みつ夫の家にやってきてパーマンの記録映画を撮りたいと申し出る。みつ夫は嬉しがるが、被写体は彼ではない・・。パーマンとなってカッコよく映りたいのだが、何かとドジ続きで、フィルムを無駄にするばかり。

やがて、ライフル強盗事件が発生し、その事件解決の模様を撮影するのだが、ここまでもドジを踏み、2号と3号に助けられて事件は一件落着。映画は残念ながら「パー子と2号の大活躍」というタイトルで完成にいたる。

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6.『巨大ロボットの襲撃』 テーマ:パーマンの劇映画

西宝映画(東宝のパロディ)の創立50周年記念超大作として「パーマン」が撮影されることになる。パーマンは自分が出演できると喜ぶが、俳優がパーマンを演じる劇映画であった。製作費は100億円。今の邦画の世界では、10億円ですら破格の製作費なので、ちょっとこれは現実的ではない。

パーマンを演じるのは美少年・美庄年彦、パー子役は星野スミレ(つまり本人)というカップル。2号は猿の役者が見つからず出演しない。なので、ブービーは終始このプロジェクトに冷ややかな視線を送っている。

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映画での敵は、悪魔の科学者・黒鉄博士の作った巨大ロボットという設定。超大作なので、なんと上半身だけだが、実物大のロボットを作っての撮影である。

一方、全日本悪者連盟(全悪連)の25周年プロジェクトが密かに進行しており、巨大ロボットを建築中だったが、資金の都合上下半身のみの完成となっていた。そこで撮影用の上半身のロボットを盗んでこれとくっ付けて、町中を大暴れさせることになる。

オチとしては、やる気の無かったブービーのバナナの皮で解決し、映画でもそのシーンがクライマックスに採用されて、映画の主演はブービーとなる、というもの。結局、新旧二本ともブービーが主人公となるのであった。

この話の隠れハイライトは、星野スミレが映画でパー子役を演じ、途中撮影を抜け出して本当のパー子になって出動するというシーンである。①女優としてのパー子→ ②星野スミレ→ ③普通の女の子→ ④パー子と、人格が移り変わっていく。星野スミレがいくつも顔を持っていることが一気にわかる名シーンであるだろう。

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「パーマン」は、オバQと違って、みんなが憧れるヒーローなので、映画の題材にはうってつけ。実際にパーマンがいたら、きっと映画になったことと思う。旧作で記録映画をテーマとしたので、新作では劇映画の設定とした。新旧の間は16年も空いているが、F先生の丁寧な描き分けを感じる次第である。


次回予告!
本稿では映画好き好きF先生の、映画を題材にした作品6本を、オバQとパーマンから選んでダイジェストした。次回は、「ドラえもん」と「キテレツ大百科」から、まったく同じテーマの2本を並べて検証する。どうぞお楽しみに!


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