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Qちゃん正ちゃんの1千万浪費作戦『むだづかいしよう』/1000万の無駄使い①

いつもは少ないお小遣いのやりくりに困っている少年少女たち。ところが、ある日、1000万を渡されて、「使い切ってくれ」と、まるで夢のような申し出を受けたらどうなるのか・・・。

一方で大人にとっての1000万円は、どれほどの価値があるのだろうか。一日で使い切れと言われた場合に、あっと言う間に消費してしまうものなのだろうか?


藤子作品を見渡した時に、1000万(貨幣価値は少し異なる)を一日で使おうという話が2作品存在していて、子供の場合と大人の場合の2パターンが描かれている。

少しだけ興味の湧くテーマでもあったので、その2作品を取り上げて検証してみたいと思う。題して「1000万の無駄使い」。最初は、「オバケのQ太郎」から、子供だけで1000万を使ってしまおうというお話をご紹介しよう。


「オバケのQ太郎」『むだづかいしよう』
「週刊少年サンデー」1965年6号/大全集2巻

土手で身動きしないまま座り込んでいる男性。少し心配になった正ちゃんとQちゃんが「お金でも落としたの?」と声を掛けると、カバンを見せて「金ならここに1000万ある」と答える。

聞けば、若い頃から働いて、ケチケチしながら数千万と貯め込んだという。ところが、ある事情から財産を早く使い切らないと命に関わる事態になってしまい、ひとまず1000万を使い切ろうと上京してきたのだと言う。

金を使い切らねばならない事情が何なのか、想像もつかないが、ともかくもお金を貯めることはできても使うことはできない性分ということで、困っているらしいのである。


そこで「お金を使うなら訳ないや」ということで、正ちゃんたちが浪費を手伝うことに。この男性は、ケチが染みついているようで、全くお金を使おうとしない。そこで正ちゃんとQちゃんだけで、1000万を無駄使いしよう、ということになる。

ちなみに、この時代(1965年・昭和40年)の1000万の貨幣価値を確認しておくと、ざっくり今の4倍というところであるらしい(消費者物価で見た場合)。以下のページを参考した。



では、実際にどのように無駄使いしていくのだろうか。下記にまとめてみると・・・。

①おもちゃ屋
おもちゃのピストルなど、欲しかった物を次々と買い漁って9500円の出費。今の価値で言えば4万円分のおもちゃを買ったことになる。高価なおもちゃなら一発で数万円なのだろうけど、小学生が日常使いで喜びそうなおもちゃだとこんな感じなのかもしれない。

②本屋
欲しかったマンガを大人買い。しかしそれでも3000円の出費に留まる。今の価値で12,000円。まあこんなものでしょうか。


お金を使うのも意外に難しいと感じ始める正太たち。続けて・・・。


③和菓子屋
大福もちを腹いっぱい食べたかったということで、大福100個を注文して食いまくる二人。さすがに腹いっぱいとなるが、なんとこの店では大福50個を食べると賞金二万円が出るシステムとなっていた・・・! 無駄使いところか、逆にお金が増えてしまったのである。

④強盗に襲わせる
ついに使うのを諦めて、強盗に奪わせてしまおうという大胆な作戦にチェンジ。ここに1000万ありますと張り紙を書いて立つ二人に、人相の悪いいかにもな悪者が近づいてくる。

お金の入ったカバンを渡すが、さらに正ちゃんのポケットの中身も出せと脅してきたので、おもちゃのピストルを取り出すと、「人殺しい!」と慌て始めて逃げ出してしまう。

すると強盗の声を聞いたお巡りさんがやってきて、指名手配中の強盗だったということで男を逮捕してしまう。強盗作戦はマンマと失敗に終わったようだ。


⑤道端に置く、川の中に捨てる、遠くへ投げる
全てなんやかんや戻ってきてしまう。正ちゃんはついに嫌気が差して、ここで離脱。Qちゃんだけで1000万の消費活動に入ることに・・・。


⑥腹ペコ猫にご馳走する
魚屋で店中の魚を買うが、総額では1万円以下。そればかりか、世話をしてあげた腹ペコ猫はお金持ちが懸賞金付きで捜索していた猫で、飼い主が見つかってしまって10万円渡されてしまう。

⑦貧乏そうな屑屋に10万渡す
いきなり手渡すのだが、プライドのある屑屋さんだったので、訳もなく貰えるか、と怒られて拒否。代金としてクズを全部買い取る条件で、10万を受け取ってもらう。ところが、クズの中に国宝級の美術品が紛れ込んでおり、これを見つけた男性に200万渡されてしまう。

⑧穴を掘って埋める
減るどころか増えていくお金。仕方なく埋めてしまおうと穴を掘るのだが、なんと逆に小判の入ったツボを掘り出してしまう。


・・・ということで、お金は増えるばかり。お金持ちの男性と再会し、増えてしまったと告げると、「わしゃもう駄目だ」と嘆く。そこで、男性がお金を使わなくてはならない理由が明らかにされる。

お金を使う理由
夕べ、村の氏神様が男の夢枕に立った。ケチ兵衛(男の名!)に対して、「ケチケチお金を貯めていると、金の毒に当てられて死んでしまう、さっさと使え」というお告げがあった。


ケチ兵衛は「逆にお金が増えてしまった」と言って泣き出すのだが、そこへケチ兵衛を探していた息子が合流してくる。金はまだ使ってないと言うと、息子は意外な事実を白状する。

それは、夕べの神さまは自分、父親があんまりにケチだから、神主の着物を着て化けたのだというもの。

息子の告白を聞いて「あれはウソッパチか!親不孝もん!」と怒るケチ兵衛。一発殴った後、そうと分かればさっさと帰るべと身支度する。息子は「ちょうど汽車の時間に間に合う」と急かすのだが、ケチ兵衛の本領がここで発揮。

「バカ抜かせ。足は何のために付いとるんじゃ。使っても減らないものはうんと使う。さあうちまで駆け足!」

・・・まあ大袈裟な話ではあるが、お金持っていても、グリーン車には一切乗らず、タクシーも使わない人はいますもんね・・・。本当のお金持ちってそんなものなのかもしれないな、と思う次第である。


さて、次回では大人が1000万使うことになったら・・・というお話をご紹介します。


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