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ジャイ子・ガン子夢の競演!『のろいのカメラ』/ドラえもんミニ考察⑤

「ドラえもん」ミニ考察第五弾は、悪魔の発明と巷で評判の「のろいのカメラ」の回を検証する。初期ドラとしては貴重なジャイ子登場回であるとともに、「パーマン」からのゲストキャラも登場する、見所満載のお話である。


『のろいのカメラ』「小学三年生」1970年10月号/大全集1巻

初期ドラの敵はスネ夫

本作は連載開始からまだ一年経っていない段階で発表された。この頃はのび太を苛めたり馬鹿にするのはスネ夫の役割で、まだジャイアンはブレイクしていない。ジャイ子のお兄さん、くらいの位置づけなのである。

なので、冒頭、のび太が悔しそうに部屋に入ってきてドラえもんに泣きつくのだが、内容も聞かずにドラえもんは最大級に激怒して、

「またか! 言わなくてもわかってる! スネ夫に、ばかにされたんだろう」

と、一目散に部屋から飛び出していく。連載が進めば、のび太が泣かされる相手はジャイアンがほとんどとなるので、この回だけ読むと少し違和感を覚えるかもしれない。

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悪魔の発明

「のび太をバカにするということは僕をバカにすることだ、許せぬ!」とすごいスピードでスネ夫の元へと走っていくドラえもん。この時悪い顔になっているドラえもんは、まだ一度も使ったことのない悪魔の発明「のろいのカメラ」をジャジャーンと取り出す。

そんな道具を取り出すドラえもんの姿も悪魔そのもの

少し冷静になったドラえもんは、カメラをスネ夫に向けるがシャッターを切ることを躊躇する。ところが、スネ夫が「なんだノラえもんか」とバカにしてくるので、やはり押そうかと思いきや、踏みとどまる。

怒り狂ったドラえもんを冷静にさせるほどに恐ろしい道具なのである。


全く優しくないしずちゃん

初期ドラのもう一つの特徴が、しずちゃんがそれほど優しくないということだ。本作でもスネ夫が「ノラえもん」とおちょくっていると、隣でしずちゃんもニコニコ聞いていたりする。

「のろいのカメラ」を人形を作るだけのカメラかと思ったのび太は、ドラえもんとパパ・ママの3体の人形を作り、しずちゃんに少し遅れた誕生日プレゼントとしてあげてしまう。

しずちゃんは「可愛いお人形を下さるの。どうもありがとう」と嬉しそうにプレゼントの箱を受け取るが、その次のコマで中身がドラえもんの人形だとわかって「可愛くないなあ」と文句を言う。そして次のコマでは箱ごとガン子ちゃんにあげてしまうのである。

受け取ってからたった二コマで誕生日プレゼントを手放す、血も涙もないしずちゃんなのである。

ちなみにこの後のび太が人形を取り戻しにやってくるが、「隣のガン子ちゃんにあげたわ」と、全く悪びれていない。ここは嘘でも申し訳ない態度を取って欲しいものである。

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ガン子登場

ガン子は「パーマン」でお馴染みのキャラクター。主人公須羽みつ夫の妹である。誘拐犯にも一歩も引かない強さを持つ女の子で、口も悪かったりする。本作ではしずちゃんの家の隣に住んでいることになっており、しずちゃんの隣家がパーマンの家だとは驚き情報である。

ただパーマンとドラえもんの世界では、2作に共通して登場する星野スミレの年齢が離れているので、このことからドラえもんの世界の方が数年後と考えられる。ガン子は「パーマン」の頃と全く外見が同じなので、年代が合わない。

しゃべっている言葉使いが「わたち」だったり、しずちゃんに「あの子乱暴だから」と紹介されている点から、パーマンのガン子とは性格が少し異なる気もする。よって、このFノートでは同姓同名の別人という結論を取っておきたい。


のろいのカメラ、恐怖の使い道

藤子F先生のカメラ好きは有名で、確認できるところでは、デビュー間もない初期の作品『暴風の奇術』(1953)で、カメラが重要な小道具として使われている。「ドラえもん」でもカメラの形をしたひみつ道具は数知れず、一度大特集を組まなくてはならないほど。

またカメラといえば「ヨドバ氏の夢カメラシリーズ」というSF連作短編があって、のろいのカメラとよく似た「丑の刻禍冥羅」というカメラが登場する。異色短編に括られるお話なので、かなりブラックな後味の作品ではあるが。。

のろいのカメラで作られた人形に何かをすると、同じことがそのまま被写体にも伝わる効果がある。腕を針で刺せば腕が痛むし、人形をバラバラにすれば体もバラバラにされてしまう。呪いの藁人形と同じ仕組みである。

ジャイ子&ガン子という乱暴コンビの手に渡ったドラえもん・パパ・ママの3体の人形は、お医者さんごっこの疑似患者として、散々な目に遭うことになる。

・ママは熱が800度あるので冷蔵庫で冷やされる
・パパも熱が800度あるので同じく冷蔵庫へ
・ドラえもんは全身悪いと診察され、バラバラにする手術をされることに

病気なのに体を分解する手術を施すという恐ろしいアイディア。そして包丁で頭を切り落とそうとして、ドラえもん本人も首がちぎれそうになる。ジャイアンのかあちゃんに刃物を取り上げられて事なきを得たが、続けてジャイ子たちはお葬式ごっこへを始める。

そこへスネ夫が登場。本式の葬式、火葬をしてお墓に埋めようと言い出す。

空からガン子を探していたドラえもんは、何やら線香の匂いがしてきて、嫌な予感を覚える。そこで火葬(焚き火)が始まり、ドラえもんも燃えるように熱がって落下。ちょうど火葬現場に落ちてきて、ガン子はひと言「まあ、化けてきたわ」と軽い対応をする。

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ラストはスネ夫ものろいのカメラで撮られる。人形に水を掛けてスネ夫がお漏らしをしているように周囲に思わせるという、比較的優しいお仕置きにあって物語は終わる。


ミニもロングも考察たくさんやっています


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