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映画化希望!パーマン史上最大の大作『”鉄の棺桶”突破せよ』

パーマンは主に日常を舞台にしたヒーローマンガだが、時おりスケールの大きな敵が登場して、パーマンたちを苦しめる。

特に初期パーマンでは、冷戦下での物語となっているため、米ソの対立を背景にしたと思われるX国とQ国の冷戦を描いたお話も二作あった。

この中の『国際スパイ大作戦』は、ボム博士といういかにも水爆を作りそうな科学者の身柄を二か国で争奪する話であった。本作はここから繋がっている続編的なお話となる。


『”鉄の棺桶”突破せよ』(前・後編)
「週刊少年サンデー」1967年34・35号/大全集2巻

初めて「週刊少年サンデー」に2週にわたって前後編で描かれた大作で、映画化しても大丈夫なほどの非日常的なスケール感がある。今回は、この作品をたっぷりと検証していく!

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冒頭で、家に帰るのが遅くなったパーマンが、部屋の窓のカギがかかっていたことから、地面を掘って軒下から床板を外して家の中へと忍び込む。本作は、この地下から潜入が繰り返しギャグになっている。

寝ていたコピーロボットと鍵を閉めないでくれなどと話していると、ガラス窓を外して侵入してくる者がいる。パー子とブービーである。

パー子がわざわざ深夜にやってきたのは、空気エネルギーの研究を軍事利用されることを嫌って逃げていたボム博士が、とうとうQ国に捕まってしまったので、急ぎ連れ戻しに行こうというというのである。


なぜその事実を知ったかと言うと、ボム博士から手紙が届いたのだ。その手紙には、自分はQ国の奥深く、荒野の真っただ中に建造された軍事研究所に連れ去れるだろうと書かれている。

その軍事研究所は、通称「鉄の棺桶」とも呼ばれる建物で、辿り着くためには、険しい山脈やオオカミたちのいる密林を抜けなくてはならない。そして建物の周囲にはレーダー網が監視をしていて、侵入者には誘導弾が撃ち込まれる。

そんな危険な場所に行き、ボム博士が空気爆弾を完成させる前に、救出しなくてはならない。いつの間にかパーやんも集まり、これまでで最大の大仕事に取り組むことになる。

ちなみに本作はパーマン5号が登場後のエピソードだが、5号の影は一ミリもない。このような命に係わる任務には就かせられないのである。

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さっそく、みつ夫の家で食料や毛布やクスリなどの準備をする。ママに怒られるとコピーは嘆くが、世界平和のためだと諭される。

出発するパーマンたち。4人繋がると、倍の倍の倍のスピードを出すことができる。つまり91キロ×8で、728キロの飛行速度なる。

翌朝、教室では居眠りしていたコピーが先生に注意され、「世界平和のためです」と答えてクラスの笑いを取っている。


Q国との国境を低空飛行で潜入に成功するパーマンたち。寝ずに飛んできたので、森の奥で夜中まで睡眠を取ることにする。この森は、血に飢えた狼がいたはずだが・・・。

ところが、パーやんのいびきとパーマンの寝相の悪さで、近寄ってきた狼たちを追い返してしまう。そして、そんなことは露知らずのパーマンたち。


森を超え、今度は6000メートル級の山を越える。物凄い寒さでかじかむパーマンたち。そこでパーやんは焚火をしようと言い出し、木の枝を集めて盛大に火を焚く。

「見つかったらどうする」と慌てるパーマンに、パーやんは「とっくにレーダーで見つかっている」と余裕をかまし、案の定Q国のヘリコプターが飛んでくる。「お迎えが来た」とパーやんはマスクを脱いで出迎える。「パーやんが気が狂った」とそこから逃げ出す、他のパーマンたち。

パーやんは、相変わらず誰にも相談しないで作戦行動をとる悪い癖があるので要注意だ。そして彼の真意は最後の方で明かされる。

ちなみにここで前編が終了、以降が後編となる。また、パーやんが気が狂った、というセリフは昔のてんとう虫コミックには収録されていたが、いまでは別の表現となっている。

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さて、物語後半戦。

自ら捕まったパーやんは何か策があっての行動のはず。パー子は「一人で捕まって敵に油断をさせたのだ」と解釈して、このチャンスに3人で潜り込もうと言い出す。

と、言ってもこれといった策は無く・・・。そこで、冒頭でパーマンが自宅に侵入したように、地下を掘って鉄の棺桶に向かうことに。

その頃、捕まったパーやん。パーマンではないか白状させるためにむち打ちの拷問に遭っているが、必要以上に大騒ぎして、敵の方が殴るのに嫌気を差してしまう。服を調べてもマスクもマントもない。様子を見るため、わざとボム博士と同じ牢に閉じ込めることに。

牢屋では、ボム博士の「パーマンでは?」の問いに答えず、監視カメラに向かって食事を要求するパーやん。いかにも食意地が張った感じだが、これも実はパーやんの作戦の内なのである。


パーマンたちは、地底を掘って進んでいたが、何と地雷があちこちに埋められていることに気づく。慌てて逃げ出すが、その拍子に小石が地雷に当たって、大爆発をしてしまう。どうなる?パーマンたち

ここまで、作品全体としてはギャグ調は残しつつ、物語はピンチに次ぐピンチの連続で、読み応え十分。本当に映画のような面白さである。

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パーマンは、バッジを加えて地面に潜って、何とか命は助かっていたようだ。Q国の軍人たちは全員爆死したものとして安心する。

鉄の棺桶では、パーやんが不可解な行動を取っている。時々裸になり、いつの間にかまた服を着ている。パーやんは、放し飼いにしてある犬の訓練のため、服を窓から捨てて、拾ってきた犬にはご褒美に自分の食事をあげている。果たして、その意図とは何か?

それから4日。

パーマンは一人何もできず腹を空かせていた。パー子たちも見つからない。諦めかけた時、流れ星を見かけて、自分も流星に化けてレーダーを誤魔化そうと考える。

宇宙から岩を持って自由落下していくパーマン。ところが空気との摩擦熱で発火してしまい、敵レーダーに見つかってしまう。飛んできたミサイルにやられて撃ち落されるパーマン。マスクとマントを奪われるが、ボロボロとなっていたため、顔も真っ黒で正体はわからないまま。

そこに、別の怪飛行体が現れたということで、みつ夫はパーやんの部屋へと閉じ込められる。再会したパーやんは、「結局捕まらないと鉄の棺桶には入れないのだ」と言う。全てはまるっとお見通しのパーやんなのだ。そして、ボム博士は空気爆弾の研究で連れていかれていた。

「マスクとマントがあれば」とみつ夫は嘆くが、パーやんは、「あるよ」とパーマンセットを取り出す。パーやんは、それをどこに隠していたのか?

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ここで、これまでの奇行が、全てこのための伏線であったことを語り出す。

・パーマンセットは捕まる前に岩陰に隠した。
・犬を訓練して、パーやんのにおいの付いたものを運ばせるようにした。

犬がいたのは偶然だったのでは?とか、捕まった場所はかなり離れていなかったっけ?という疑問は浮かぶが、まあここは作戦家パーやんを褒めたたえよう。

さあ、パーマンセットを着けて、反撃の開始!

パー子たちには、バッジで指令を出して兵隊たちを遠くへおびき出してもらっていた。捕まっている間に、鉄の棺桶の中枢は発電所であることを突き止めており、ここをぶっ壊すことで大混乱を引き起こす。

博士の研究室の場所も調べてあり、救出に成功。なんと用意周到な男だろうか。

パーマンセットを着けて敵の司令官が飛んでくるが、3人掛かりで返り討ちにしてしまう。これで完全に勝負あり。


わが家へと帰っていくパーマンたち。みつ夫の家では、コピーがへまをしてロボットに戻っており、ママたちがみつ夫を探している。パーマンは仕方なく、また地面を掘って家に入ることに…。

「もう、忍び込むのは飽き飽きだい」

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クライマックスから一気に日常に戻る展開の速さは、まさしくF流。

本作、振り返ってみれば、活躍したのは独自で動いたパーやんがほとんどで、みつ夫は目立ったことは何もしてないような・・・。もう少しみつ夫の活躍シーンを加えれば、十分映画が作れそうだなと思う次第である。


「パーマン」の考察・紹介たくさんやっています!


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