Q太郎は二度家出するの巻/Fキャラは家出する②
藤子キャラクターたちは、家出する。
のび太も、のび太の息子も家出する。
Q太郎もベラボーもエリさまも、みんな家出する。
「モジャ公」の空夫は宇宙に家出してしまう。
パーマンも、中年スーパーマンも家を飛び出す。
でも、みんな好きで家出しているわけではない。
それぞれ、仕方のない理由があるのである。
Fキャラの家出の全貌に迫る連載第二回目!
前回の記事では家出ばかりしているのび太の家出年表を掲載し、その中からママに「かけがいのない一人息子がいなくなった」と心配させたくて、家出を試みるお話2作を紹介した。
本稿では「新オバケのQ太郎」の中から、Qちゃんの二度の家出を検証していきたい。
「新オバケのQ太郎」『なぜか家出をする』(Qちゃん家出のまき)
「小学五年生」1971年9月/大全集3巻
まず一本目。こちらはタイトル通り、なぜかQ太郎が家出をすることになってしまうお話。
QちゃんはO次郎と共に心うきうきする一日を、せんべいをバリバリ食べながら過ごしていた。ところがそこに薄暗~く現れたのがガールフレンドのU子さん。
「音もなく入って来たからオバケかと思ったよ。あ、そうかオバケだっけ」
などとギャグをかますが、U子は「気楽でいいわね」といって泣き出してしまう。その理由を尋ねると、U子が居候しているよっちゃん(小泉美子)の家族がU子を一人置いてハイキングに行ってしまうのだという。
U子は「これはオバケと人間を公平に扱わない人種差別である」と問題化し、断固抗議するために家出をするのだという。そしてQ太郎にも一緒についてきてほしいと泣きつくのであった。
「あなただけが頼りなのよお」と女(オバケ)にすがられ、家出を渋々承諾するQ太郎。U子は「支度があるので一時間後に迎えに来てほしい、家出のことは内緒だ」と告げる。
ここから隠れて家出の準備をするQ太郎の騒ぎが始まる。
・正太にいきなり「自分が何かを隠しているように見えるか」と聞いて、逆に怪しまれる
・家出の準備で冷蔵庫の食料を出しているとママに声を掛けられ「僕家出なんかしない!」と自分から叫んでしまう
・今晩はご馳走だと聞いて電話でU子に家出の順延を申し出るが怒鳴られる
・家出セットにマンガだテレビだと集めていくと大荷物になり、電話でU子にトラックを呼んでもいいかと聞いて怒鳴られる
・正ちゃん・O次郎に書き置きを残そうとするが、正ちゃんたちに「家出」のいえってどう書くのか聞いて、家出がバレてしまう
オバQの物語は、こうした一つのテーマに沿ったギャグを連打していくパターンが多く、本作もその典型的な構成となっている。
正太はQ太郎に家出のわけを聞くが、U子との約束を守ってはっきりとは答えない。
「それだけはきかないで。僕を頼りにしてる人を裏切ることになる」
と、U子さん思いの律儀な性格なのである。
涙、涙で正ちゃん、O次郎と別れてU子の元に迎えに行く。するとU子はなぜか楽しげによっちゃんの家族と一緒にいる。U子を留守番と言ったのはジョークであり、これからみんなでハイキングに行くというのだ。
U子にとってめでたしめでたし、だが・・・Q太郎はどんな顔して家に帰ろうか、ウロウロとするばかりなのであった。
ということで、一回目の「家出」は、U子の巻き込まれであった。二回目はいよいよ自分の意志で「家出」する。
「新オバケのQ太郎」『すねて家出をしてみたけれど』
「小学四年生」1972年6月/大全集2巻
Q太郎がもっとも大事にしていること、それは「食べ物」である。ご飯は炊飯器いっぱい分食べたいし、ご馳走やオヤツにも目がない。ところが本作の冒頭で、パパの手違いによって買ってきたアイスがQ太郎だけ手に渡らない事件が発生。
Qちゃんは食べ物の恨みは怖いと言って拗ねる。そして自分が居候なのでのけ者にされたのだと思い込む。
そういうことでQちゃんは家出を決意する。そこにO次郎がやってきて家出と聞いて「ヤメラッタバカラッタ!」と引き留めるが聞く耳を持たない。そこでQ次郎は兄と一緒に家出をすることを告げ、Qちゃんは「弟よ!!」と号泣して、二人で家を出ることになる。
いざ家出となると、友達とも二度と会えなくなるということで、O次郎を待たせて挨拶回りを始めるQ太郎。
ドロンパにはボールをぶつけられたので挨拶は中止。
U子はQ太郎が家出すると聞いて強烈に引き留める。その理由はQちゃんがいなくなると、掃除や洗濯の手伝いしてくれる人がいなくなるので困るのだという。U子の欠点は家事が苦手ということなのだ。
他の人間の友だちは、ちょうど集まって空き地で野球をしていたので「みんなまとめてさようなら」と声を掛けると、逆に野球に誘われて、一緒になって遊んでしまう。この間待たされているO次郎は「オソラッタ!」と声を上げる。
挨拶回りを終え、いよいよ家出するQ太郎とO次郎。兄弟の絆を鼓舞しながらひたすら歩き続け、いつしかクタクタになり、アメリカにでも到着したのかと思うと、町内を一周して大原家の玄関に逆戻りしているのであった。
仕方なく近くの空地の大きな土管の中で今夜は泊まることにする。Qちゃんは正太たちが自分のことを心配して泣き出す光景を想像して、思わず自分も泣き出してしまう。
気にかかるので、ちょっとだけ見に行こうと家に帰ると、ちょうど買い物から帰ってきたママに「もうすぐご飯よ」と声を掛けられる。自分がいなくなっても心配していない様子を見て怒るQ太郎。
しかし正太に「面白いテレビがやっている」と呼びかけられて、家出をすっかり忘れて「ワーイ見よう見よう」と部屋に行き、そのままテレビに夢中になってしまう。
その様子を家の外から見たQ次郎は「アホラッタ!」と叫ぶのだった。
家出すると家族が心配に思うかも、という心理は前回の記事で書いたのび太と一緒。家出の意志が弱いのものび太と似ている。
『なぜか家出をする』ではU子が、『すねて家出をしてみたけれど』ではQ太郎が家出を決意するのだが、そのきっかけは二人とも居候している家族からのけ者にされたことである。本当の家族ではない故の負い目や猜疑心がぼんやりと浮かび上がる。
まあ、のけ者にされれば、誰しもショックを受けますね・・。家出をするかは別として。
オバQもたくさん考察しています!
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