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蜂型・家型・車型・・感情を持ったロボットたち×ドラえもん/ロボットの反乱④

藤子作品では、ロボットが登場するお話が多い。

「ドラえもん」はネコ型ロボットが主人公だし、「パーマン」にはコピーロボットがいるし、「キテレツ大百科」ではコロ助が相棒だ。「21エモン」「ウメ星デンカ」には言うことの聞かないゴンスケがいて、「海の王子」のような科学冒険マンガでは敵も味方もロボットだらけである。


そういうことで、ロボットをテーマに記事を書こうと思ったものの、沼が深くて早々に断念。もう少し焦点を絞ってみようということで、人間の命令を聞かなくなってしまうロボットが出てくる作品を集めてみることにした。

「ロボットの反乱」と題して、これまでに「ドラえもん」「ロケットけんちゃん」「パーマン」と、3本の記事を作成してきたが、本稿では改めて「ドラえもん」の作品を見てみることにしたい。


「ドラえもん」では、ひみつ道具として、たくさんのロボットが登場する。どのロボットも便利だが一癖あって、何かと融通が利かなかったり、感情を持ち合わせて人間の言うことに反抗したりする。

一本目の記事で『ロボッターの反乱』という作品を取り上げたが、「ロボッター」というどんな物でもロボットにしてしまう粒状の動力装置を付けた道具たちが、のび太の横暴にキレて反乱を起こしたお話だった。

「ロボットの反乱」の基本的な一本として認識しておきたい。


「ドラえもん」では、「ロボッター」以外にも、人間に反乱するロボットたちが多数登場する。そこで本稿では、さらに3作品を取り上げて、さらなる「ロボットの反乱」現場を見ていこうと思う。


『ロボット・カー』
「小学三年生」1971年4月号/大全集2巻

車型ロボット

本作はスネ夫の自慢から始まるパターン。パパの運転でドライブに行くことになり、スネ夫は「のび太の家は免許も車もない」と嫌味を言って出掛けていく。

悔しがるのび太に、ドラえもんが出した道具が「ロボット・カー」である。前方のライトが目のようになっている小型の車で、のび太は見た瞬間に「おもちゃみたいでカッコ悪いなあ」と感想を漏らす。

するとドラえもんが慌てて、

「バカ!聞こえたら気を悪くするぞ」

と目を星にしてのび太を制止する。

見るとロボット・カーは「ウ~」と唸り声をあげて気分を損ねている様子。そこで「おせじ、おせじ」とのび太に小声で指示を出し、それを受けてのび太は、

「こんないい車、見たことない」

とあからさまなおべっかを使う。

するとロボット・カーはニコニコと表情を緩ませる。お世辞を使わないと、思うように動いてくれないロボットなのであった。

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のび太とドラえもんは、この後しずちゃんと合流して、ロボット・カーに乗って、スネ夫の車を追うようにドライブを開始する。

途中、感情豊かなロボット・カーは、女性が運転する大型の車とすれ違って一目惚れしてしまい、結婚したいということで勝手に後を追いかけてしまう。

ドラえもんが「今にもっといい相手を見つけやるから」とロボットをたしなめると、渋々ドライブに戻るのであった。

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その後も、スネ夫の車に追い抜かされて、負けん気を発揮したり、とにかく最後まで人間的なロボットなのである。実際には「反乱」はしなかったものの、気分屋のロボットという扱いずらさを感じさせる。

なお、気分屋のロボットカーというと、「のび太の海底鬼岩城」のバギーちゃんを思い出す。アイディアとしては、本作から繋がっていると考えておいて良いだろう。


『カネバチはよく働く』
「小学五年生」1975年3月号/大全集3巻

ハチ型ロボット

本作の最初の見所は、ロボットとはまるで関係ないが、のび太が部屋で一人あやとりをしているシーンだ。のび太のあやとり好きは、本作より前に『ゆめふうりん』(72年7月)や、『ジャイアンズをぶっとばせ』(74年12月)で言及されているが、実際にあやとりしているシーンはこれが初めてではないだろうか。(おそらく)

ドラえもんはのび太を見て、「本当にあやとりが好きだねえ」と感想を述べるが、のび太はつまらなそうに、

「特別好きってこともないけどさ。お小遣いも無くなったし、金もかからずくたびれず、腹の減らない遊びとなるとこれしかないもの」

と、あやとりへの消極的支持を打ち出す。

もっとも、その後、のび太のあやとり好きは、自らの重要なアイデンティティに成長していくのだが、本作段階ではまだ積極的な情熱は燃やしていないようである。

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さて、その後どぶさらいを手伝わされて「一円も儲からない」とブツブツ仕事をしていたのび太だったが、どぶの中から百円玉を見つけて、「儲かった!無意味じゃなかった」と喜ぶ。

そして、このように人目につかない場所で眠っているお金が日本中にあるはずで、これを集めようと思い立つ。

「それ(落ちているお金)を集めて、再び世の中に出すことは、日本のためにすごく役立つことだと思うんだ。日本のために働きたい!そんな道具出してよ」

と、大義名分を語る。まあ、拾ったお金を自分のものにしたいという個人的な金銭目的であることは間違いない。

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ドラえもんは思わず「うまいこと言うなあ」と勢いに押されて、「カネバチ」というハチ型のロボットが何匹も入った巣箱を出す。カネバチは落ちているお金を拾って巣に持ち帰って貯めてくれるという働き者のロボットだ。

ドラえもんは、

「さあ、お前たち。この家にはあまりお金がないけど、表へ行けばどっさりだ。せっせち探してきて溜めなさい」

とカネバチたちに指示を出す。ドサクサ紛れに野比家には金がないという強烈な嫌味を放ちつつ。


ハチたちは空き地やどぶなどから、どんどんとお金を拾って集めていく。のび太はその様子を見て、「そのうち何千万も溜まるかも」と皮算用。そして、ママに「家を建て直して海外旅行に行こう」と声を掛けるが、思わぬ反応をもらう。

ママが言うには、拾ったものは交番に届けないと「取得物横領罪」になるのだという。仕方なく、これまで集めたお金を交番に持っていくと、逆に迷惑がられて、「どこでいくら拾ったか、場所と金額をはっきりさせて欲しい」と要望される。

無作為に集めてきたので、そんなことが分かるわけもない。困ったのび太とドラえもんは、カネバチに対して、それぞれ拾った場所に返すよう命じる。

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カネバチたちも今更そんなことを言われて、巣の中で「ブウン」とお困りの様子。そして困り具合がエスカレートしていき、ついにはブチ切れて、カネバチたちはドラえもんとのび太に襲い掛かってくる。

カネバチの反乱に、逃げ出すしかないドラえもんたちであった。

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『家がロボットになった』(初出:ハウスロボット)
「小学四先生」1977年12月号/大全集7巻

家型ロボット

本作は『ロボッターの反乱』から二カ月後に発表されたが、続編的な内容で、同じ着想のもとに描かれた作品となっている。ロボットの反乱を受けるのはジャイアンだが、反乱に至る理由が同じなのである。


日曜日、この日は一日中しずちゃんの家で勉強をするという楽しい予定。のび太のママにも「お行儀よくね」と送り出される。ところが、ジャイアンの家の前でジャイアンに呼び止められる。嫌な予感がするのび太

結論から言えば、のび太はジャイアンに留守番を押し付けられ、部屋の掃除もしておけと命令されてしまう。嫌な予感は的中してしまったのである。

なかなかのび太がやってこないので、しずちゃんは、のび太の家まで迎えに来るが、「とっくに出掛けている」とドラえもん。「どこで道草食っているんだろう」と、ドラえもんとしずちゃんが探し歩いていくと、ジャイアンの家の中からのび太の泣き声が聞こえてくる


家の中は散らかし放題。夕方までに片づけをしなくてはならない。優しいしずちゃんは、「ここで勉強しましょう」と言ってくれて、勉強道具を取りに帰る。

ドラえもんは「自分のことは自分でやらせよう」と言って、「ハウスロボット」という小さな家の形状をした道具を出す。これ自体はロボットではなく、家の真ん中に取りつけると、家全体がロボット化するという。ある種の動力源のようなもので、「ロボッター」の家版と考えて良いだろう。

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取りつけてスイッチを付けると、地震のような揺れがあって、家がロボット化する。会話は、テレビ画面で表現される。さっそくドラえもんが「家の中が散らかっている」と話しかけると、「ホントダ!スグカタヅケル」と表示が出て、家中の物が仕舞われ、掃除機や雑巾がどんどんときれいにしていく。

そこへしずちゃんがやってくるのだが、入り口は自動ドアとなり、床も動く廊下となる。部屋に三人集まり、勉強をやりたいと言うと、テーブルが出てきて、ストーブが灯り、ラジオから静かな音楽が流れ出す。そして、疲れた頃にお茶が出てくる。至れり尽くせりのハウスロボットなのであった。

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さらに、押し売りが現れるのだが、タタミやストーブを駆使してたちまち追い出してしまう。このシーンによって、ハウスロボットは、硬軟取り混ぜた働きをすることがわかる。

そしてロボットは、のび太たちを「勉強が済んだら留守番は引き受けるので遊びに行きなさい」と送り出してくれる。お言葉に甘えて、しずちゃんの家へゲームをやりにいく。その途中で、ジャイアンに会い、便利な家になったと告げる。


ジャイアンが帰宅すると、入り口が自動的に開く。バットとグローブを投げ置くと、勝手に片付いてくれる。すっかりハウスロボットが気に入るジャイアン。しかし、ここで言ってはならない失言を吐く。

「こりゃいいや。だけど、どうせならこのボロ屋をもっときれいに建て直してくれりゃ良かったのに」

すると、ボンと畳が跳ねて、ジャイアンを窓から外へと放りだす。そして、締め出して、ジャイアンを一歩も家の中にいれてくれないのであった。

ハウスロボットもまた、感情を持ち、怒らせると怖い存在となるのである。

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・・・ということで、本稿では「ドラえもん」から3本の感情を持つロボットのお話を紹介してきた。

そして、微妙に人間の言うことを聞かないロボットは、他の作品にも無数に登場している。それもまた、別な切り口のロボット特集などで、折を見て取り上げていきたいと思う。


「ドラえもん」の徹底考察・紹介をやっております。


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