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世界が緊迫している今だからこそ読むべき藤子作品を紹介

プーチン・ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は衝撃的だった。今のこの時代にこんなことが起こるのかというショックを受ける。

個人的には、自分が16歳の時の「クウェート侵攻」からの湾岸戦争、27歳の時の「9・11」からのアフガン戦争に次ぐ、歴史的転換点に立ち会っている感覚を持つ。

こうした大きな「戦争」が起こると、世界から争いごとが消え去っているわけではないことを痛感させられる。自分が平和な環境を享受しているのは、たまたまなのだと思わせる。

僕はエンタメコンテンツ業界という、不要不急の商品を扱う仕事をしているので、こうした戦禍が起こると、自分の仕事は平時だから成立しているのだということを強く感じる。

平和あっての生活なのだ。


ただ、こんな時だからこそ、読んでおきたい藤子作品がある。戦禍において、世の中への知見を広げることのできる作品たちだ。

そこで本稿では、これまで書いてきた記事の中から、今読むべき作品を何本か選んで、新たに見所を加えつつご紹介したい。


まず一本目、実はこの一週間で急速にPV数を伸ばしている記事がある。それが、異色SF短編に位置付けられる『ある日…』という作品の記事である。

本作がテーマとしているのは、「世界の終わりは、予告なく突然プツンとやってくる」というものだ。

今回、プーチンは核兵器の使用をほのめかす挑発的態度を取っているが、もし仮に核のボタンが押されれば、ただでは済まされない。本作のように、突然プツンと世界が終わってしまうかもしれない。

また、核を使ってロシアが勝つようなことがあれば、他の核を持たない国が脅威を感じて、不毛な核開発競争が起こり、それがやがて世界の破滅を招くかもしれない。

「ある日」が来ないために、何をしなくてはならないのか、じっくり考えるきっかけとなる作品ではないだろうか。


ロシアの暴挙は、事実としては許しがたいことだが、もちろんロシア側には、侵略行為と非難されたとしても、成し遂げたい戦争の目的が存在する。つまり彼らなりの正義があるのだ。

そうした、戦争とはそれぞれの正義のぶつかり合いだと説明される作品がある。それが『ご先祖さまがんばれ』である。

内容的には、狩人だったご先祖様を戦場で活躍させて、偉い武士にしようと画策する純然たるコメディだが、作中唐突にドラえもんが戦争の本質をえぐる発言をする。それが、

「どっちも自分が正しいと思っているよ。戦争なんてそんなもんだよ」

というセリフだ。僕はこれ以上に端的に戦争を語った一文を見たことがない。


続けて戦争で言えば、「藤子不二雄と戦争」というシリーズ記事を書いている。どの記事も良く読まれているが、その中でも最も反響があったのが、『ラジコン大海戦』である。

このお話はプラモデルを使って、スネ夫+スネ吉とドラえもん+のび太が「戦争」するお話で、最後にスネ吉が名ゼリフを吐くことで有名。それが、

「戦争は金ばかりかかって、虚しいものだなあ」

というセリフで、これまた戦争の本質をズバリと見抜いている。意気揚々と戦いを始めるのに、最終的には戦費の負担がのしかかる。残るものは虚無感と借金だけだ。


今回のロシアの侵攻によって、かつて存在した旧ソ連とアメリカとの冷戦の対立構造が、まだ脈々と連なっていることが明確化された。そして、世界を分断するような対立があるのにも関わらず、ロシアが国連の常任理事国であるがゆえに、国連決議において拒否権が発動される事態となっている。

冷戦下の分断から影響を受けている作品がいくつかあるので、それも紹介しておきたい。

まずは『国際オバケ連合』から。お話自体は、「オバQ」ならではのナンセンスものなのだが、作中で世界各国のオバケたちが、核拡散をどのようにして止めるかを議論するシーンが出てくる。

いくつかのバカバカしいアイディアの中で、核の脅威をしっかりと読者に感じさせる発言もあったりする。僕が個人的に好きなセリフは下記だ。

「喧嘩の道具が無くなれば、仕方なしに仲良くするだろう」


また冷戦の真っただ中に執筆された「パーマン」において、米ソを彷彿とさせるQ国とX国の攻防を描いた二作をまとめて記事にしている。ライトな内容ではあるが、こちらもお暇なら。。


ロシアの皇帝とも言われるプーチン。その長期に渡る独裁ぶりは異様だが、そうなってしまうのは国民が悪いのか、国家の体制が悪いのか・・。

「ドラえもん」では、独裁者を描いたお話がいくつかあって、その中で『のび太の地底国』という国家を私物化した独裁者の末路を描く作品がある。最初は国民のために仕事を始めたつもりが、私利私欲に塗れて暴走していく。そんな有様を描いたお話となっている。


さて、最後にもう一本。こちらは反戦(非戦)のメッセージを明確に発信している作品『戦場の美少女』の記事も紹介しておきたい。

戦争というと、犠牲者を〇千人とか、〇万人とかという無機質な数字として捉えがちである。しかし、犠牲となった人たちには、それぞれの人生があって、家族がいて、友だちがいる。そうした、一人一人の命に目を向けることが、平和を求める強い声になることを描いた傑作である。


冒頭にも書いたが、平和あっての生活である。どんな理由があるにせよ、戦争を肯定するわけにはいかない。このロシアの軍事侵攻だけでなく、過去の戦争の美化、無法図な軍拡を目指すような発言、そういったもの全てを、僕たちは否定していかなくてならないのだと思う。


他の藤子作品の紹介やっておりますので、よろしければ。


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