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もはやお正月大喜利!初笑いはQちゃんで『オバQ一家のお正月』/お正月スペシャル2024

改めまして明けましておめでとうございます。どうぞ本年もよろしくお願いします。

藤子Fノート、2024年の一発目は、オバQファミリー勢ぞろいのお正月エピソードをたっぷりとご紹介してまいります!!


突然だが、大晦日には「紅白歌合戦」を見て、年越しそばを食べて、「ゆく年くる年」で和んで、年が変わる瞬間にジャンプして空中で新年を迎える・・・なんてことを毎年している家族はどれほどいるのだろうか。

昭和の頃は圧倒的な視聴率を誇っていた紅白があまり見られなくなったという話を聞くと、大晦日~お正月に一家団欒する習慣なんていうものは、昭和か平成初期の遺物となのかも、と思えてくる。

ちなみに自分の場合は、奥さんの実家で年を越すのが恒例となっていて、先ほど述べたような絵に描いた新春の風景が毎年繰り広げられている。(もうジャンプ年越しはしていないが)

ハッキリ言えば少々マンネリ気味な風景ではあるのだが、その一方で変わらぬものがあり続けるということは、新年を心平穏に迎えるにあたって、かけがいのないことだと思ったりもする。


さて、昭和の高視聴率テレビ番組と言えば、「オバケのQ太郎」もかなりのオバケ番組であった。実に平均視聴率は30%を超えていたという。とんでもないアニメーションがあったものである。

そして、そんな「オバQ」では、お正月やクリスマスといった行事が非常に大切に扱われている。オバQたちに限らず藤子キャラ全般に言えることだが、季節ごとの行事=楽しいひと時という共通認識があるので、時節柄のイベントには全力で参加するのである。


本稿ではそんなオバQの数あるお正月エピソードの中から、家族が集結して一家団欒が実現した『オバQ一家のお正月』を取り上げてみたい。


『オバQ一家のお正月』
「小学四年生」1966年1月号/大全集9巻

オバQの家族だんらんを語る前に、まずはQちゃんファミリーの家族構成について整理してみよう。

Q太郎は人間世界でタマゴから生まれたオバケだが、その後、実はオバケの国に家族がいることが判明する。

家族構成は、お父さん(=Z蔵)、お母さん(=おZ)、そして妹(=P子)の4人家族で、1960年代の旧「オバケのQ太郎」ではまだ弟(=O次郎)は生まれていない。

家族が初登場したのは「週刊少年サンデー」1965年27号の『オバQ一家勢ぞろい』で、父母妹の3人で人間の国にやってきて、初めてQちゃんが家族と対面する感動的な場面が描かれた。

その後、「週刊少年サンデー」1965年30号の『ようこそオバケの国へ』で、今度はQちゃんが初めてオバケの国を訪れるお話が描かれている。これらのエピソードは既に記事にしてあるので、詳しくはこちらを参照いただきたい。


その後いったん家族の話題はなくなるのだが、続けて「週刊少年サンデー」1966年2号『助け合い運動』にて、再びX蔵とP子は再登場を果たす。

そして本稿で取り上げるオバQ一家のお正月』に繋がるという流れとなっている。ここでは、まだQ太郎の家族が揃う場面は、珍しかったという点は押さえておきたい。


先に書いてしまうが、本作は「お正月」をお題にした大喜利のような古典的なギャグが連発していく構成となっている。人間社会の常識を全く知らないQ太郎の家族たちが、止めどなくボケをかましていく爆笑編なのである。

まずは新年の挨拶もそこそこに、Q太郎がパパにお年玉をねだる。するとオトシダマのことなど全く知りもしないので、「それはカンシャク玉の一種か」「大砲の玉でも落とすか」と、ジャブを放ってくる。

お金のことだとQ太郎が耳打ちすると、100万円札1000枚の札束に変身するX蔵。当然化けた札束なので、お札一枚だけ取り出すことは不可能なのであった。


約半年ぶりの一家だんらんということで、親子4人だけでお正月遊びを楽しむことにする。まずは家族だんらんの基本ということで、トランプのババ抜きから。

最初は「面白いもんじゃのう」などと話しているのだが、P子が「ほんとおいしいわ!」などと言い出す。なんとトランプを3枚ほど食べてしまったというのである。

仕方なく、パパ・ママ・P子が3枚のトランプに変身することになるのだが、結果、トランプとトランプをすることになってしまい、訳が分からないくなってしまう。


正ちゃんのママが「おとそをどうぞ」と勧めてくる。パパとママはおせち料理を囲みながら一杯始めたので、QちゃんはP子を連れて外へ遊びに行くことに。

よっちゃんにP子を紹介して、羽根つきをすることに。いきなりQちゃんが羽根を思い切り叩いてホームランしてしまったので、P子が羽根に化けてくれて、よっちゃんと羽根つきを再開する。

ところが羽子板で叩かれると痛いということで羽根が逃げ回り、結果、よっちゃんとQちゃんはスミを塗られ放題。羽根に変身するには最初から無理があったのだ。


家に帰ってみると、パパがすっかり酔っ払っていて、「ゲハハハ」「うひゃらウヒャラ」と正ちゃんのパパに絡んでいる。どうやら笑い上戸であるらしい。

Qちゃんが酔いを醒まそうと外へ連れ出すと、通りがかった女性に「あの奥さん女みたいだ」と大声を出すなど大騒ぎ。ただ、イヌに吠えられて、一気に酔いは醒めてしまう。


さらにお正月大喜利は続く。酔いが醒めて寒くなったのでこたつにあたろうと提案すると、パパは頭でこたつにぶつかっていく。

さらにお雑煮のお餅が足りないと聞きつけたパパは、材料を取ってこようと言って飛び出して行き、アフリカからゾウを一頭持ち込んで「これだけでゾウニができますかの~」と大ボケをかます。

まるでドリフターズの「8時だョ!全員集合」の大ラストを彷彿とさせる、ハチャメチャさで、本作はフィニッシュとなる。


本作は主にQちゃんのパパが全編ボケまくるお話となっているが、ちょうど本作あたりを転機として、「オバQ」の物語構成が変化を起こしているように思われる。

「オバQ」では、1964年の連載開始当初は、人間社会を良く知らないQちゃんが、色々なテーマで勘違いをしたり、暴走したりする様子が描かれてきた。

ところが連載が続いていく中で、さすがにQちゃんも人間の常識を学ぶことになり、いつまでも無知のままとはいかなくなってしまう。

そこで考え出されたのが、Q太郎以外のオバケを登場させて、キャラクターの個性を前面に押し出したり、キャラクター同士の掛け合いを楽しむ構成へと変化を遂げることであった。

その一例が本作におけるパパであり、ライバルとなるドロンパであり、ガールフレンドのU子なのである。

Q太郎単独でボケていくシリーズが1964~65年だったとすると、本作の直後の1966年はオバケ仲間全体でボケていくシリーズと見立てることができる。

この路線を拡張し、完全にオバケ仲間のドタバタをメインに据えたのが「新オバケのQ太郎」というわけなのである。



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