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『タイムふろしき』&『ひらりマント』/大長編ドラ必携ひみつ道具初登場SP①

この藤子Fノートの最終地点は「大長編ドラえもん」の徹底考察にしようと決めている。

「大長編ドラえもん」は、「ドラえもん」という大ヒット作の長尺版だが、それ以上に、それまで藤子先生が温めてきた企画・ネタをこれでもかと詰め込んだ、藤子Fワールドの到達点だと考えているからだ。

しかし、「大長編」を存分に語るためには、キャリアの中で藤子先生が描いてきた要素を整理して、しっかりと記事化しておく必要がある。いわば逆算的に、大長編へ繋がるものは全て洗い出しておかなくてはならない


と、大げさな書き出しとなったが、本稿は軽い気持ちで読んでもらいたい記事である。テーマは「大長編ドラえもん」に頻出するひみつ道具を抽出し、それらが初めて登場した回を確認しておこう、というもの。

なお、大長編の中でいかに使われたかについては、大長編の考察記事に譲る。また、「タケコプター」と「どこでもドア」と「タイムマシン」は除外した。さらに、既に初登場回を記事化しているものもあるので、都度リンクを貼っておく。

それでは、「大長編ドラえもん」必携ひみつ道具初登場回特集、スタートである。


『タイムふろしき』「小学四年生」1970年12月号/大全集1巻

初期ドラから登場してい最古参ひみつ道具の一つ「タイムふろしき」。初期ドラならではの、一直線に畳みかけていくギャグマンガとなっている。

冒頭で白黒テレビが故障し、これでカラーテレビに買い替えできると喜ぶのび太とドラえもん。しかし、ママが空手チョップでテレビを叩くと、再び映る。

「ここんとこを約60度の角度で殴るのがコツよ」

と物騒に語るドヤ顔のママ。カラーテレビはまだまだ野比家には高価であるようだ。ちなみにこの時テレビに映っていたのはおそらくビートルズだと思われる。

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カラーテレビは、64年の東京オリンピックのタイミングで普及が始まり、60年代後半に「三種の神器」と呼ばれた庶民憧れ家電の一つ。本作の1970年では定価16万位だったとのデータがある。この時のサラリーマンの平均年収が87~100万位なので、一回のボーナスでは買えない。ママが躊躇するのも無理はない。

ちなみにママは洗濯機の調子が悪く全自動洗濯機「うずしお」を買いたがっている。ナショナルから「うず潮」という二層式自動洗濯機が60年代に発売されているが、これも1970年当時では高価だったのだろう。

さらにちなみにパパはカメラを買い替えたがっている。


家族全員が新製品を望んでおり、カラーテレビは当面買えそうもない。そこで、今の白黒テレビを直せばいいということで、ドラえもんが取り出したのが「タイムふろしき」である。

22世紀にも「風呂敷」という言葉が死語でなかったことが驚きではあるが、このタイムふろしきがあれば、基本的にずっと新品を手元に置いておける。この道具が発明されたことで、買い替え需要を期待するような製品が売れなくなってしまったことだろう。

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のび太は古い道具をかき集めて「タイムふろしき」で新品にすれば金儲けができると言い出し、ドラえもんもあっさりと賛同する。のび太は何かとひみつ道具を使った金儲けのアイディアを思いつくのだが、本作はその一作目でもある。

さっそく古道具を集めて回るのび太とドラえもん。その様子をスネ夫が見つけて、何をしているのかとドラえもんに尋ねると、

「秘密。スネ夫君はズルいから、教えられない。タイムふろしきで新品にして売るんだ、なんて教えたら、きっと横取りするだろう。だから教えない」

完全にネタバラシてしまう。初期ドラでは、ドラえもんは間抜けというか、天然キャラとしてよく描かれる。

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スネ夫は「タイムふろしき」の効果を盗み見て驚き、ドラえもんの言った通りにこっそり横取りしてしまう。

ところがスネ夫の怪しい動きをジャイアンに察知され、タイムふろしきを奪われてしまう。ジャイアンは子供たちを集めて、古い物を持ってくるよう命じる。

そんなジャイアンは店の手伝いをさぼっていると母ちゃんに見つけられ、耳を引っ張られる。そこで飛び出すジャイアンのセリフが凄い。

「母ちゃん許せ。見逃してくれたら、後で一万円やるぜ」

親を買収しようとする大胆不敵な発言だが、案の定「寝ぼけんな」とビンタされてしまう。そして卵を山田さんに届けるよう命じられ、タイムふろしきで包むと全てヒヨコに還ってしまう。

これによって、タイムふろしきが時を戻すだけではなく、【卵→ヒヨコ】と時を進める働きがあることが判明する。

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その後ジャイアンが手放したタイムふろしきを巡って、ドラ&のびとスネ夫の追いかけっこが行われ、その間に、桜の木が開花し、車が古くなって壊れ、禿げ頭がフサフサ髪になったりする。

ちなみに車が壊されてしまうのは、藤本先生である。

そして風に飛ばされてきたタイムふろしきを、ジャイアンが見つけて「俺はもう離さない」とふろしきに体を包み込んでしまい、赤ちゃんへと戻ってしまう。その後戻されたかは不明。

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結局スネ夫が入手し、持って家の中へと入ってしまう。後を追ってきたのび太たちは、スネ夫の家のドアを叩いて猛抗議。スネ夫のママが出てきたので息子が盗んだと聞かせると恥ずかしがる。

そしてママはスネ夫にタイムふろしきを返すように言うのだが、使い方の説明を受けると「その前に一度使うざます」と図々しい。そしてワニ革のハンドバックを新品にしようとタイムふろしきを被せると・・・、新品を通り越して、ワニに戻ってしまう。そこでここでも名ゼリフ。

「新しすぎるざますっ!!」

最後までドタバタな一本なのであった。


「タイムふろしき」は通常の短編では実に20回以上も登場している超定番道具の一つ。大長編でも何かと登場しているが、特に「恐竜」「宇宙開拓史」では主役級の活躍を見せる。


『ひらりマント』「小学一年生」1973年5月/大全集6巻

続けて「大長編ドラ」のバトルシーンには無くてはならない必携道具「ひらりマント」の初登場回を見ていく。

初登場はバトル以外の使い方をするのかと思いきや、初回から対ジャイアンの対策の道具として使用される。道具のイメージとしては、闘牛ショーで向かってくる牛を闘牛士がひらりとかわす時に使う赤い布である。

「ひらりマント」とタイトルにはなっているが、作中ではマントとしか紹介されておらず、いわゆる正式名称不明のひみつ道具である。


のび太が外へ出るとジャイアンが突撃してくるが、サッとマントを振ると、ジャイアンは横へとすっ飛んで、塀を殴ってしまう。「やったな」ともう一度襲い掛かるが、今度もひらりとかわされ、歩いてきた先生にぶつかってしまう。

その後吠え掛かってくる犬をどぶへと落とす。すっかり戦闘用の道具なのである。

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その後、雨が降ってくるのでマントを頭の上で広げると、雨が避けていく。家に帰って濡れたマントを干して乾かしていると、風で吹いて家の入口に飛んでいく。

ヒラヒラと家の前ではためき、ちょうど帰ってきたパパは、マントで横移動させられ壁にぶつかってしまい、いつまで経っても家の中に入れないのであった。

「ひらりマント」は通常回では本作限りの登場となる。元々闘牛士の布からイメージされた道具なので、最初から戦いに使うように考えられていたようだ。よって、本格バトル漫画となるドラ大長編には、非常に使い勝手の良い道具であった。

個人的には「魔界大冒険」での使用場面が、強いインパクトを残している。


『ぞうとおじさん』「小学三年生」1973年8月号/大全集4巻

本作の雑誌タイトルは『スモールライト』となっていたように、「スモールライト」の初登場回である。通常回でも20回以上登場し、大長編でも幾度と使用される。特に「宇宙小戦争」では主役の扱いだった。

本作の記事は既に書き終わっているので、是非こちらを参照のこと。


さて、実は一本の記事で収めようと思っていた「大長編ドラえもん」必携ひみつ道具初登場回特集だが、かなりの長文となったので、予定変更して第2回に続きます。さて次回はどんな道具が登場するのでしょうか??


「ドラえもん」の記事たくさんあります。


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