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「ただのイヌではないとは思っていたが」『名犬コンポコポン』/名犬コンポコ①

「エスパー魔美」の主要登場人物を上げていくとして、魔美・高畑の次にくるのはコンポコであることは、異論をはさむ余地はなかろう。コンポコは魔美のペットであるが、頼れる相棒としての活躍をみせる。

コンポコは、ひと言で語れない多彩な魅力と特徴を備えているのだが、そのあたりをまとめている記事は既にあるので、宜しければご覧いだたきたい。


本稿から全二回に渡って、「名犬コンポコ」と題して、コンポコが重要な働きを見せる2作品選び、じっくりとその魅力を堪能していきたい。コンポコの犬並外れた(?)優れた能力に驚きつつ、間の抜けた愛嬌にほっこりすることだろう。


『名犬コンポコポン』「マンガくん」1978年10号/大全集3巻

コンポコはまるで犬っぽくないキャラクターとして、何かといじられる愛されキャラだが、本人の犬としてのプライドは非常に高く、時おり自尊心を傷つけられる。

本作は深く傷ついた犬の自尊心を取り戻すべく、名誉挽回の旅に出るという物語である。


コンポコが一人留守番をしていた時のこと。

魔美が家に帰ると、玄関には土足の足跡があちこち残され、部屋の中は荒らされている。空き巣が入ったようなのだ。それでは、佐倉家の「番犬」コンポコはどうしているのか。

慌てて魔美が二階に探しにいくと、魔美のベッドにもぐりこんで、スウと寝息を立てて就寝中・・・。空き巣が入ったこと自体気付いていない様子である。


警察がやってきての現場検証。衣類が少々盗まれたが、取るものもなかったようで、魔美のパパの絵を数点持っていったという。「絵のわかる泥棒だな」などとパパははしゃいで、魔美にみっともないとたしなめられる。

警察によると、最近山の手一帯を荒らしている空き巣と同一犯であるという。セロハンテープを使ってガラス窓を破る手口が同じなのだ。そして警察は去り際にいらんことを言う。

「わからないのは、犯人が家の中をうろつき回っているのに、あのイヌが、ワンともキャンとも騒がなかったことですな」


その後ママが帰ってきて、空き巣の一件を報告するのだが、その時コンポコはどうしてたのかママが聞くので、

「それがケッサクなんだ。ベッドにもぐりこんだまま高いびき!!」

と魔美とパパが嬉しそうに答える。コンポコのプライドがさらに痛めつけられる。

翌日、近所でも佐倉家に空き巣が入ったことが話題となる。隣近所である陰木さんや細矢(放送屋)さんが、コンポコの噂をする。

「あれじゃ、番犬にもならないわ」
「いえ、もともとコンポコちゃんは、イヌらしくないのが特徴ですもの」
「ほんと! 一度、動物学者に鑑定してもらったらどうかしら」

コンポコは、人間の言葉は完全に理解できるIQ抜群の犬。犬っぽくないという周囲の評価は、コンポコの耳にダイレクトに届いているのである。

コンポコのことを実はよくわかっているのは、高畑である。魔美に対して、あんまり笑っちゃ可哀そうだ、と助言する。プライドの高い犬ということを、高畑はこれまでのコンポコの行動から理解しているのである。


魔美は高畑の話を聞いて、ご機嫌を取ろうとあぶらげを買って帰ると、コンポコの姿はない。代わりに泥んこの棒に縄を巻いたものと、コンポコの手形が残されている。

魔美はコンポコのメッセージを理解する。それは、

「泥棒を捕まえにいきます。コンポコ」

というもの。魔美は、コンポコの気持ちを思いやらなかった自分のせいで家出してしまったのだと後悔するのであった。


魔美は高畑とコンポコ探しを始める。たずねイヌの張り紙を作って、近所に貼って回ろうというのである。ちなみにその張り紙の内容とは・・

犬を探しています
名前ーコンポコ 色ーレモン色
ネコ・タヌキ・キツネ・パンダに似ています

コンポコが知ったらまた深く傷つきそうだが、さすがに文字は読めないらしい。ただ、せっかくなので、張り紙にイラストでも描けば良かったのではと思わなくもない。


近所に貼って回っていると、魔美は留守宅の中に何かを感じる。窓から中を覗いてみると、なんと、部屋の中の座布団の上でコンポコが寝転がっている。目と目が合って、驚き、飛び上がる魔美とコンポコ。

慌てて中にテレポートするが、コンポコはサッとどこかへと姿を消してしまう。家中を探すが、家主が帰ってきて来て、コンポコなど知らないという。


魔美はこのことを高畑に報告する。コンポコは何をしていたのか。なぜ魔美を見て逃げ出してしまったのか。高畑は、

「う~ん、やるなあ・・・。ただのイヌではないと思っていたが」

と感想を漏らす。

なぜここまで高畑がコンポコの実力を買っているのかというと、上で紹介した記事の中に書いたが、コンポコが魔美の超能力のトリガーではないかと考えてから、コンポコを見る目が変わったからである。

才能のある犬だと考えてからコンポコを見ると、コンポコの取る行動は賢い犬レベルを超えた働きを見せていることがわかるのだ。


高畑はコンポコは空き巣が狙いそうな家で張り込みをしていたのだと考える。動物の勘は、時には超能力かと思わせるようなひらめきをみせることがあるのだ。

コンポコの行動を踏まえて、明日からは、捜索方針を変更する。留守宅を見つけては、張り込みをしているだろうコンポコを探そうというのだ。雲を掴むような話だが、それしか手がかりはない。


翌日、魔美は適当に家のブザーを押して、不在かどうかを確認して回る。難儀な作業である。すると、少し古びた、何度呼び鈴を押しても反応しない家を見つける。確実に留守だということで、中へとテレポート。

あまり生活感のない家の中。コンポコを探しては部屋を見ていくと、台所でパパの絵が鍋敷きに使われているのを見つける。それはつまり、この家は空き巣の住まいということである。

魔美は泥棒に入られそうな家ではなく、泥棒の家を見つけ出してしまったのだ。すると、二階から大きな欠伸をしながら男が降りてくる。昼寝をしていたようだである。

そして「ぼつぼつひと稼ぎしてこなくちゃ」と言って、空き巣へと出掛けていく。この時、 と軽口を叩きながら、玄関の鍵を閉めるのを忘れない。憎たらしいヤツである。


コンポコが探している犯人は見つかった。それではコンポコはどこへ行ったのか? ここでナレーション(作者のコメント)が挿入される。この時、コンポコは、ある留守宅の押し入れでグッスリと眠り込んでいる。家出以来の飢えと疲れのためなので、笑ってはかわいそうだ。


空き巣は立派な一軒家に忍び込み、部屋を物色する。魔美はここはエスパーの出番だと思うのだが、それではコンポコの自尊心は永久に回復しない。コンポコに向かって一生懸命に念波を送る魔美。

ところが、魔美がコンポコに呼びかけているのに熱中していたために、仕事を終えた犯人が先に魔美の存在に気が付いてしまう。そして後方からカバンで魔美の頭を殴りつけて気絶させる。


コンポコはおろか、魔美までも倒されてしまう事態。空き巣犯は魔美を抱えあげ、押し入れに閉じ込めようとする。ドサと押し入れに投げ込むと、何とその中でコンポコが眠っていて、魔美の下敷きとなって飛び起きる。

コンポコは犯人が忍び込む家を見つけ、しっかりと張り込みをしていたのである。コンポコの天性の勘、恐るべしである。(眠ってしまってはいたが)

コンポコは家を飛び出してフヤンフヤンフヤンと、犯人の足を噛みついて離れない。コンポコは、悲願の犯人確保を成し遂げ、汚名を挽回したのである。


噂好きの陰木さん、細矢さんらが、コンポコが空き巣を捕まえたことを話題にしている。「ただのイヌとはどこか違うと思っていた」と言われ、得意そうな表情で散歩するコンポコなのであった。


「エスパー魔美」は、魔美と高畑のコンビで事件を解決していく物語で、コンポコはあくまで名脇役の位置づけである。しかし、その潜在能力は高く、あらゆる場面で、魔美を助ける。

人間の言葉は全て理解し、泥の棒に縄を巻くといった方法で、自分の意思も伝えることができる。このあたりの能力は、「パーマン」の2号ことブービーと近い感じかも知れない。


そして犬らしからぬ外見的な特徴から、何かと犬としての自尊心を傷つけられるが、それほどにプライドの高いイヌということなのだ。

本作とはまた別の角度から、コンポコの能力を描いた作品があるので、こちらは次回ご紹介したい。


目指せ!「エスパー魔美」全話解説


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