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パーマン絶体絶命! からの大逆転3本立て/考察パーマン⑦


パーマンは、マントとマスクがあれば、誰でもなれる。つまり、僕でもヒーローになれる!

パーマンは、そういう親近感が湧くヒーローである。それゆえ、パーマンの活躍は自分のことのように思えるし、ピンチの時は自分も追い詰められている気持ちになる。

今回は、そんな感情移入たっぷりのパーマンが、絶体絶命の危機に陥ったエピソードを3つほど取り上げて、かつての少年の気分に浸ってドキドキしてみよう、という記事となる。大ピンチをいかに乗り切ったのか、その大逆転劇を見ていきたい。


『生きうめパーマン』「少年サンデー」1967年14号/大全集1巻

まずタイトルからして大ピンチ。
が、始まりはヒーローになれたら楽しいだろうな、というエピソードで幕を開ける。高層建築の工事現場の前を通りがかったみつ夫は、その鉄骨姿を見て、ジャングルジムを思い出す。そこで、夜になってからブービーとパー子を呼び出し、鉄骨を巨大なジャングルジムに見立てて、鬼ごっこをすることにする。これが、楽しそうで、子供の頃は本当に憧れたものだった。

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やがて建物に人が集まってきたので、夜中の鬼ごっこは解散となる。そして、飛び去るパーマンたちの姿を目撃する、いかにも怪しげな男たち。

翌日、みつ夫の元に工事現場にいた男が、パーマンに渡したいものがあると言って荷物を届けに来る。開けてみると札束と手紙。手紙には「工事現場の秘密は誰にも話すな」という買収を伺わせる文面が書かれていた。

怪しいとみたみつ夫は工事現場を偵察に行くが、そこでは現場の人間と先ほどお金を届けに来た男が地下室の図面のことで揉めている。ますます怪しいとみたみつ夫はその夜、再びブービーとパー子を工事現場へと招集する。・・・が、連日のジャングルジム遊びだと勘違いされ相手にされない。仕方なく単独で現場に向かうパーマン。

工事現場では、悪党どもが集まって盛り上がっている。どうやら、この銀行となる建物の地下にトンネルを掘って、隣のビルにつなげ、金庫室に直接お金を盗みにいけるようにしようと画策しているのだった。それを聞いたパーマンは、届けられたお金をバラまき、悪党どもに飛び掛かる。しかし、背後から鉄骨をぶつけられて、穴の底へ落下。気絶しているパーマンに対して、コンクリートを流し込む悪党ども。生き埋めとなったパーマン、大ピンチ!

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翌日、帰ってこないみつ夫を心配するコピーロボット。部屋で悪党からの手紙を発見して、真相を知り、ブービーとパー子に助けを求める。

夜、パー子とブービーは工事現場に向かうが、そこには「パーマンの墓」と書かれたコンクリートの塊が設置されていた。それに驚いていた二人も、頭から鉄骨を落とされ気絶。ついにパーマンが三人ともやられてしまった!

と、そこで昨夜パーマンを埋めたコンクリートがゴボッと浮き上がる。逃げる悪党どもを追いかけて車の上に叩き落ち、そこからバッジを咥えたパーマンが現れる。みつ夫はコンクリートを流し込まれたときにバッジを咥えて呼吸を確保することで、生き埋めの窒息から逃れていたのだった。見事大逆転!!

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『キューピッド・ジム』「小学五・六年生」1967年4月号/大全集4巻

次なる敵は、拳銃一発でハートを撃ち抜くというキューピッド・ジムという凄腕のスナイパー。彼の目的は国賓として来日したデーブ首相を暗殺することなのだが、あまりに簡単な任務のため、張り合いを付けるためにパーマンに首相を護衛してくれと申し出てくる。自信満々なヤツだ。

キューピッドは拳銃に五発の弾丸を仕込み、これを毎日一発ずつ計3発を自分の腕前を示すために使い、4発目でパーマンを撃ち抜き、最後の5発目で首相を暗殺する、と予告する。さっそく一発目が放たれ、ハチの巣を撃ち抜いてパーマンはハチに刺されてしまう。

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翌日ブービーと一緒にデーブ首相が泊まるホテル・ニューロイヤルの様子を見に行くが、100人近い護衛がいてパーマンたちは逆に追い出されてしまう。ブービーを見張りに残して家に戻ると、2発目が撃たれてパパのタバコに火を付ける。

その翌日。ブービーと見張りを代わり、ガムでも買いなと10円を渡すのだが、3発目の銃弾によってその10円玉の真ん中に穴が開き、5円玉にされてしまう。確かにその腕は本物のようだ。そしてガムが買えずに泣くブービー…。

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いよいよ勝負の四日目。キューピッド・ジムに勝つためには相手を先に見つけて先制攻撃をしなければならない。ということで、総理官邸の夕食会に向かうデーブ首相の車を奪取して、キューピッドの銃弾の届かない空へと飛んでいく。

そこにヘリコプターに乗ったジムが現れる。首相の車をブービーに任せて、パーマンは果敢に立ち向かっていくのだが、キューピッド・ジムの4発目がパーマンのハートを撃ち抜く!。落ちていくパーマン、大ピンチ!

続けて首相を狙うキューピッド。ところがそこに、撃たれたはずのパーマンが復活して現れ、キューピッドを蹴り飛ばす。

「狙いを外すとは・・・」とキューピッドは驚くが、実は正確に心臓を狙った弾丸が、心臓の上に付けていたパーマンバッジで跳ね返していたのだった。偶然っぽいが、自信満々のパーマンの表情からは、どうやら狙い通りだったようだ。見事大逆転!!

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『怪人ネタボール』「小学三年生」1967年6月号/大全集3巻

今回最後の敵は「怪人ネタボール」世界一の催眠術師として知られ、目を見ただけでありもしない幻を見せられてしまうというスゴ技の持ち主である。

夜のパトロール中、宝石店が盗難の被害に遭う。店のガードマンは裸で道端を泳いでおり、彼の証言によると、夜遅くに現れた男の眼を覗くと、きれいな湖が見えてきて泳ぎたくなってしまったとのこと。警察には全く信じてもらえず、かえってそのガードマンが怪しまれて連行されてしまう。

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みつ夫はネタボールが来日していることを聞いて、怪しいと直感する。さっそくパーマンになって、ネタボールが宿泊するホテルへと向かう。白を切るネタボールだったが、パーマンが部屋を見渡すと昨日盗まれた虹色の真珠が転がっていることに気が付く。

ネタボールはパーマンに襲い掛かるが、腕っぷしでは敵わない。そこで、強力な催眠術を発動。パーマンはアホウドリとなってしまい、ネタボールに操られて、新幹線の線路の上に連れていかれると、そこがベッドだと吹き込まれて、寝てしまう。そこに新幹線が迫ってくる。轢かれそうなパーマン、またも大ピンチ! ちなみにここのカット割りがカッコよくて大好き。

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その夜、次なる宝飾店に忍び込むネタボール。ところが、用意周到、警察が張り込んでいた。しかしネタボールは、ギロリと警察たちに視線を向けると、警察官たちは内輪で喧嘩を始めてしまう。

その現場をブービーが見つけてバッジを鳴らす。すると、線路の脇に転がって寝ていたパーマンが目を覚ます。パーマンは、寝相が悪く、線路から転がり出て難を逃れていたのだった。

再度ネタボールを捕まえに戻るパーマンとブービー。ところが、目を見ると催眠術を掛けられてしまうので、近づくことができない。どうすればと考えていると、ブービーがポリポリと音を立ててポップコーンを食べている。パーマンはそれを見て、妙案を思いつく

パーマンの指示で、道を歩くネタボールの周囲にポップコーンをばらまき、街灯を消して回るブービー。ちょうど新月の夜で辺りは真っ暗となる。これでネタボールの目を見ることはなくなり、催眠術にかかる心配も無くなった。

しかし、都合よくネタボールは暗闇でも見える目をしていた。ナイフを持ってパーマンに忍び寄るネタボール。ところが、ポリと、ポップコーンを踏んでしまい、その音を聞いたパーマンはネタボールに飛び掛かって、見事御用となった。気持ちのいい大逆転!!

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以上、3作品を簡単に見てきたが、物語の構造がかなり共通している。絶体絶命のピンチ、そこからの大逆転、という流れが定番で、ピンチを乗りきってこその爽快感が何とも気持ちが良いエピソードとなっている。

今回見てきた3作品は、銀行強盗団、キューピッド・ジム、怪人ネタボールと強敵ぞろいで、最初の戦いではパーマンは敗れてしまい、絶体絶命のピンチに陥る。

生き埋めにされ、心臓を撃たれ、新幹線に轢かれそうになる。けれど、バッヂを咥える、バッヂを胸に付けておく、寝相が悪くて助かる、とその危機を回避することに成功する。寝相のおかげで助かる部分はラッキーだが、その後のネタボールとの対決では、ポップコーンを使ったアイディアで倒している。

こうしてみると、パーマンはいつも機転が利き、しかも勇気のある行動を取っていることがわかる。やはりのび太とは違う。。

パーマンの物語は大きく分けて、今回取り上げたような敵と戦うヒーローものと、ヒーローの力を使った日常のドタバタ話の二種類に大別できる。前者のパーマンはドジりながらも最終的には勝利をつかむ、カッコいいヒーローとして描かれる。後者はドジが勝るギャグマンガのオチとなる。

「パーマン」は、ヒーローマンガとギャグマンガの二つのパターンを交互に描き、巧みにバランスを取っているように思える。

例えるなら、アップテンポとバラードを交互に発表するサザンオールスターズのようなものだろうか。違うか。

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