しずちゃん初の入浴!『スケスケ望遠鏡』/ドラえもんミニ考察③
『スケスケ望遠鏡』「小学三年生」(初出:ふしぎなぼう遠きょう)
1971年6月号/大全集2巻
名もなきひみつ道具
「ドラえもん」では正式名称が不明のひみつ道具が多数確認されている。今まで記事にしてきたところでは、『せん水艦で海へ行こう』や『たとえ胃の中、水の中』に登場する、その名も「潜水艦」がその部類に入る。
小さくなったり水から水へとジャンプしたりと、ただの潜水艦ではないのだが、本編では「潜水艦」としか紹介されていないのである。
本作でも「この望遠鏡」と言って取り出されており、正式名称は最後までわからぬままだ。タイトルにある「スケスケ望遠鏡」がそれっぽいが、本作の初出タイトルでは『ふしぎなぼう遠きょう』だったので、やはり正式とは考えづらいのである。
名ゼリフ①
ドラえもんは、のび太に対して時おり遠慮ない悪口を吐くことで知られているが、本作ではのび太がドラえもんに手厳しい。
望遠鏡でスネ夫の家を見ようとするので、ついのび太は口走る。
「君は思ってたより、ずっとバカだな」
それを聞いてもドラえもんは眉一つ動かさない。
ドラえもんの眉と言えば、初期ドラでは、時々眉毛が描かれていることをご存じだろうか。本作でも扉絵のドラえもんはくっりきハの字の眉が見える。作中でも数コマ眉毛が確認できる。
スケスケ望遠鏡の使い方
見た目はただの望遠鏡だが、ねじを回していくとどんどん透き通って先が見えるようになる。ねじで見える先を調節していくのだが、一見調節は難しそうだ。10メートル先、100メートル先といった目盛りがないので、手前からカチカチとねじを回して、少しずつ遠くまで見ていかねばならない。
目的地に到達するまで時間もかかるし、途中で別のものも透視できてしまう。今回のような使い方だと、目的地までの家庭のプライバシーは全く守られない。
さらにこの望遠鏡は、覗く部分に耳を当てると、見ていた先の音声が聞こえる仕掛けとなっている。透視も盗聴もできる犯罪まがいのアイテムなのである。
初めてしずちゃんの入浴を覗いたのは・・?
カチカチと目盛りを動かして、近くの家からスネ夫宅まで順番に見ていくことになる。プライバシーが台無しとなった家庭を箇条書きにしておく。
①小池さんち。
いつものようにラーメンを食べているが、部屋に落ちている袋の記載から「味噌ラーメン」のようだ。そして着ている着物はナルトの渦巻き模様をあしらったラーメン仕様となっている。
②マンガを読んでいる男の部屋
開いているマンガのタイトルは不明。脇に置いてあるのは「オバケのO次郎」と「ある恋の詩」。
本作が描かれる直前に「新オバケのQ太郎」の連載が始まり、そこではQ太郎の弟、O次郎が初登場して物語の中心となっていた。「オバケのO次郎」は、それを踏まえたものだ。
「ある恋の詩」は、ちょうど本作執筆時に公開されていたアーサー・ヒラーの映画『ある愛の詩』にちなんだものと思われる。
③かかあ天下の夫婦喧嘩をしている家
ここから覗く人がのび太からドラえもんにバトンタッチ
④そしてついにしずちゃんち
しずちゃんの家と言えば、今ではお風呂のイメージが完全に出来上がっているが、本作がその初登場回である。初めて覗いたのはなんとドラえもんであった。のび太は見ていない。
名ゼリフ②
スケスケ望遠鏡を覗いて5軒目でようやく骨川家へ。たんすの後ろに隠れている万年筆と財布を発見する。この財布はスネ夫のママのもので、ちょうど探していたようである。なぜこのような大事な物がたんすの裏側に落ちてしまうか謎である。
そして財布の場所を言い当てられたスネ夫のママが一言。
「気味が悪いざます」
確かにその通りざます!
「ドラえもん」ミニ考察も長文考察もやっています。
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