のび太、ドラえもんの体内に潜入!『ドラえもんが重病に?』/Fキャラも不調になる⑤
ドラえもんは22世紀の最新鋭ロボットではあるが、人間にスペックを寄せていった結果、食事を取る必要があったり、寒暖に弱かったり、風邪を引いたりとかなりの精密なロボットに進化を遂げてしまったようである。
なので、定期的なメンテナンスが絶対に必要なのだが、工場(病院)嫌いのドラえもんは、のび太の面倒を見なくちゃとか言って、健康診断から逃げ回っている。
そのせいか、ドラえもんに備わっている部品の機能は壊れてしまっていることが多い。てんとう虫コミックス11巻などに掲載されている「ドラえもん大事典」を読むと、強力鼻・レーダーひげ・ネコあつめすず・へんぺい足などが調子悪くなっていたり、故障している。
また、下の記事に書いたが、風邪を引いてクシャミをして、たった一本のネジが飛んだだけで壊れる寸前まで追い込まれている。とってもナイーブなロボット、それがドラえもんなのである。
さて本稿では、「Fキャラも不調になる」シリーズの最後として、再びドラえもんに登場願って、末尾を飾りたい。本作でも、「ミチビキエンゼル」同様、ドラえもんの危機にのび太が立ち上がる!
『ドラえもんが重病に?』(初出:ドラえもんの健康診断)
「小学三年生」1989年10月号/大全集17巻
本作は9ページの作品だが、情報量が多いのと、作品のポイントが少々わかりづらいところがあるので、整理してご紹介したい。以下の5項目に沿って見ていく。
①病院嫌いのドラえもん
②ドラえもんとのび太の言い合い
③ドラえもんの中に入るのび太
④ドラミ&ミニドラ
⑤のび太の成長
①病院嫌いのドラえもん
冒頭ではいつものようにのび太がドラえもんにお願いをしている。今回は、明日のテストがあってまずいことになりそうなので、「コンピューターペンシル」を貸してくれ、というもの。
ドラえもんは、「そんなものはない!!」と拒絶するが、「嘘だ!」とのび太は食い下がり、ドラえもんの上に山乗りになる。すると、ドラえもんの動きが鈍くなり、ちょっと頭がフラフラするようなのだ。
そこへドラミちゃんが「だから言ったのに!」と言いながら机の引き出しから現れる。ドラえもんは「また来たの」と迷惑そうだが、ドラミの言うには、ロボットは1年に一度工場で健康診断を受けなくてはならないのだそう。
ドラえもんは露骨に嫌がって逃げ去るが、
「僕には具合の悪いとこなんか・・・ガーガー」
と明らかに調子が悪そうである。
ドラミは、「怖いのよ。面倒な病気が発見されたらどうしようって」と兄を慮る。のび太が面倒な病気とは何か尋ねると、例えば「急性ポンコツ病」とか、とドラミ。この病気にかかると、永久に直らなくなってしまうという。
のび太は自分の手でドラえもんを工場に行かせることを決意する。
②ドラえもんとのび太の言い合い
ドラえもんを探しに行くのび太。入れ違いでドラえもんが部屋に帰ってきて、「もし自分が半年一年と入院したらのび太はどうなるんだ」、といきり立つ。が、やはり調子悪く昼寝をすることに。いびきと同時に、「ギリギリ」「ガクガク」といかにも調子の悪い機械音が混じっている。
しばらくして、ドラえもんが目を覚ますと、何と部屋の片隅にネズミがいて、目が合う。「誰か助けて」と大きな口を開けると、ネズミが走ってきて・・・何かがピョコとドラえもんの口の中へと入っていく!
ドラえもんがのた打ち回っているところへのび太が帰ってくる。悪いユメでも見たのかと声を掛ける。ネズミが口の中に入っていったのは夢だったのか?
のび太はドラえもんに工場に行くように勧めるが、やがて自分が心配だから行けないのではないかと気がつく。のび太は、ドラえもんがいなくても平気だと主張するが、信じられないドラえもん。
言い合いの末、のび太がテストで60点以上取れば工場に行くと約束する。やるしかないと勉強机にのび太が向かうと、ドラえもんが急にガクガクガクと振動し、ポケットからひみつ道具が次々と飛び出してくる。
何者かがドラえもんの体内で動いている。やはりネズミを飲みこんでしまっていたのだろうか。すると、散らかった道具の中に、「スモールライト」を見つけるのび太。
のび太はドラえもんの反対を押し切って、小さくなってドラえもんの中に入ることを決断する。
③ドラえもんの中に入るのび太
ドラえもんの体内には、高圧配線や原子胃袋、オイルパイプと危険だらけ。それでものび太は危険を顧みずにドラえもんの口の中へと飛び込む。手には光線銃を持っている。
中はまるで巨大な工場のように、機械やら配線が張り巡らされている。行けるとこまで行こうと進むと、奥の方に青白い光が見える。そこへと近づいていくと、物陰でササっと何かが動いている。
「いたっ、赤い小さな怪物!!」
のび太は叫ぶ。赤いということで、どうやらネズミではなさそうだが、何者かがいることは間違いない。ドラえもんは引き返してくれとのび太を心配する。
のび太はマンホールを覗く。すると誤って落ちてしまい、中の液体と一緒に流されてしまう。これがオイルパイプだと思われる。すると、タケコプターを付けた「ミニドラえもん」が飛んできて、のび太を救出してくれる。
④ドラミ&ミニドラ
ミニドラが突然登場してくるので驚くが、これは、健康診断に行かないドラえもんの体内を調べるために、ドラミが小さくして送り込んだもの。ドラえもんの口の中に飛び込んだのは、ネズミではなく赤いボディのミニドラなのであった。
ミニドラは
「スースー シーシー ワーワー ナーナー」
とドラミに報告する。これは「すっかり調べて悪いとこを直した」という意味らしい。
ミニドラのおかげで、急場は凌ぐことができた。当分大丈夫だろうが、工場へも行ってと告げて、ドラミとミニドラは未来へ帰っていく。ドラえもんも、「約束する」と答えるのであった。
ミニドラは、映画「ドラえもん」での併映作などでお馴染みキャラクターだが、漫画の中では滅多に登場しないレアキャラである。初登場は『ぼくミニドラえもん』(1987年4月)で、コロコロコミックの公募企画「読者が考える道具コンテスト」によって考案されたものである。
厳密に言えば「幼稚園」掲載の『はりええほんドラえもん』(1973年3月)にも顔を出しているが、これはほとんど知られておらず、おそらく藤子先生も存在を忘れていたのではないだろうか。
その後、本作を挟み、「大長編ドラえもん」『ドラえもん のび太とブリキの迷宮』(1992-93年)にも登場して、完全に故障したドラえもの修理を行っている。
⑤のび太の成長
ドラえもんの故障はなんとか食いとめられた。お話はここで、のび太の成長をテーマに押し出して、物語が終了する。
冒頭でのび太は、「1日平均10分も勉強時間を増やしている」とわずかばかりの努力を強調していたが、テストには対応できず「コンピューターペンシル」をねだっていた。
ドラえもんは「ない」と答えていたが、途中でドラえもんの道具がポケットから飛び出した中に、コンピューターペンシルがそれとなく描かれていた。(他にも桃太郎印のきびだんごやスケジュール時計、エスパー帽子など)
のび太は目ざとくその存在に気がついていて、ラストでドラえもんにこう切り出す。
「ところでさっき散らばった道具の中に・・・確かコンピューターペンシルが・・・」
「ギク」と焦るドラえもん。しかしのび太はここでグッと堪えて、
「ま、いいか。約束したんだから、僕だけの力で頑張ってみるよ」
と、机に向かってテスト勉強を始めるのび太。
思わず「のび太・・」と涙をこぼすドラえもんなのであった。
ちなみに「コンピューターペンシル」は計3回登場しているが、のび太は使う使うと言いながら、結局一度も使用していない。0点は取るが、カンニングをするような真似はしないのだ。(宿題は他の人のを写したりしているが)
また、ドラえもんが体調悪い時、都合悪い時、未来に帰らなくてはならない時には、のび太はドラえもんとの友情や約束を優先することがほとんどである。二人の固い絆は、互いのピンチの時に明らかとなるのである。
結論:不調なドラえもんを見ると、のび太は放っておけなくなる。
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