見出し画像

1985年は怖い話の当たり年『オバケタイマー』&『恐怖のたたりチンキ』&『きもだめしめがね』/ちょっぴりホラーな物語⑦

「ドラえもん」では、怖がりなのび太が主人公ということもあり、「少し怖いお話」が多い印象がある。

そこでドラえもんの作品一覧を眺めながら、怖い話はないかな・・と探していくと、1985年の一時期に集中していて描かれていることを発見した。

もちろん、怖い話と言ってもバリエーションは豊かなので、ワンパターンとということではない。むしろ、同傾向のジャンルを並べてみると、逆に作品の幅を感じることになる。

そこで本稿では、1985年の5月から9月の間に立て続けに発表された「ちょっぴりホラーな物語」を一挙3作品まとめて紹介したいと思う。

なお、本題に行く前に、既に記事している他のドラえもんのホラーエピソードを並べておく。


それでは、1985年の3作品を、発表順にザザッと解説していきたい。

「ドラえもん」『オバケタイマー』
「小学五年生」1985年6月号/大全集14巻

まず最初は、オバケを出したい時刻にセットしておけば、その時間にオバケが現われて近くの人を怖がらせるという道具のお話。

事の発端は、どんな目覚ましを使っても朝が起きれなくなってしまったジャイアンが、毎日学校に遅刻して叱れてしまうことに腹を立てて、八つ当たりでのび太をボコボコにすることから始まる。

ジャイアンの遅刻癖というのは珍しい展開だが、もちろんこの設定はオチへの伏線となっている。


ジャイアンに恨み骨髄ののび太は、家に帰っても宿題をする気になれないでいた。すると突然、家の形をした目覚まし時計のようなものが廊下に置かれ、そこから幽霊が姿を現す。そして「宿題をやれ」と脅してくる。

見た目はそんなに不気味ではないが、怖がりののび太はビビッて言うことを聞き、宿題に取り掛かる。途中挫折しかかると、「手を止めるな」と幽霊がせっついてくる。

ヘトヘトになりながら宿題を終えると、そこで役目を終えたとばかりに幽霊は姿を消す。設置してあった時計を確認すると、「オバケタイマーの使い方」と書かれている。

のび太はこのオバケタイマーを使って、夜中に寝ているジャイアンを脅かそうと考える。


この後すったもんだがあって、のび太が逆に幽霊に驚かされたりしつつも、何とかジャイアンの部屋にオバケタイマーを放り込む。のび太はジャイアンの悲鳴を聞こうとそのまま夜更かしモードに突入。

ジャイアンは、突然放り込まれたオバケタイマーを新しい目覚まし時計と勘違いして、朝の7時にタイマーを合わせる。これをのび太は知らぬまま。

翌朝、夜更かししたのび太は学校に遅刻して立たされる。ところがこの日はジャイアンは遅刻せずに登校している。聞けば、オバケが出てきて起こしてくれる目覚まし時計を手に入れたからだという。

最初から最後まで、のび太だけが幽霊に何度も脅かされ、遅刻して先生に叱られるという憂き目に遭ってしまうのであった。

策を弄して策に溺れるという、いつもののび太が描かれるお話である。


「ドラえもん」『恐怖のたたりチンキ』
「小学五年生」1985年8月号/大全集14巻

続けて、「オバケタイマー」から二ヶ月後。前回は良い思いしかしなかったジャイアンだが、本作では冒頭で化け猫のたたりに遭う。何とかしてくれと相談されたドラえもんは、いつもネコを苛めているせいだと指摘する。

ジャイアンは言われた通りに、いつも虐めている黒猫に手をついて謝り、魚を一匹献上するのであった。

このたたりを創造したのは、もちろん猫の味方のドラえもんで、「たたりチンキ」という道具を使ったのである。この薬を使えば、酷い目に遭わされた者に代わって抗議してくれるというもの。

のび太はマンガをママに焼かれたことに腹を立てて、灰となったマンガのオバケを作り出す。これはマンマと成功し、ママは二度と本は焼かないと誓う。

調子に乗ったのび太は、いつもガミガミ叱ったり立たせたりする先生が恨めしいということで、自分自身にたたりチンキを掛ける。

夜中になり、化けのび太が先生の枕元に立つが、先生は驚きもせずに、「夜遊びしているとはけしからん、庭に立っとれ」とタタリを叱り飛ばす。

これに恐れをなした化けのび太は、「恨めしい」とのび太を恨み、寝ているのび太を追い回すのであった。


「ドラえもん」『きもだめしめがね』
「小学四年生」1985年9月号/大全集15巻

さて、さらに一ヶ月後。すっかり怖がりが自他共に認められたのび太だが、本作ではわざわざ自ら怖い思いをする羽目となる。すなわち、肝試しに強制参加させられることになるのである。

冒頭、のび太のパパから、スーパーが建っている辺りは昔は墓地で、夏の夜などは肝試しなどをしたものだと聞かされる。その話だけで震え上がる、怖がりのび太。

ドラえもんは簡単に肝試しができる道具「きもだめしめがね」を取り出す。これを掛けるだけで、周りの世界が怖く見えると言う。なんともインスタントな怖がらせ道具なのである。

さっそくのび太が掛けてみると、部屋が暗い森へになり、ドラえもんは巨大なお化けタヌキへと変化する。ギャーッと悲鳴を上げたのび太は、たまらずめがねを放り投げる。狸呼ばわりされたドラえもんも気を悪くして、二人とも得しないのであった。

さて、その後何んやかんやあって、きもだめしめがねの存在がジャイアンたちにバレて、スネ夫と3人で町内を巡る肝試し大会が開かれてしまうことになる。

ルールは、めがねを掛けたまま町内を一周し、恐ろしさにめがねを外したヤツは皆の笑い者になるというもの。そしてのび太はクジで一番目を引いてしまう。

めがねを掛けると、人はオバケとなり、車は恐竜のような怪物になる。タバコの火が火の玉に見え、直径30㎝の水たまりは巨大な湖へと変化する。どこか、「オーバーオーバー」に似たような効果であるようだ。

些細なことでも飛び上がる怖がりのび太だが、「かくれマント」で透明になったドラえもんに手引きをしてもらい、何とかめがねを外さないまま、町内一周に成功する。


その後、スネ夫もやせ我慢をして、途中まではクリアするも、お化け扱いされた通行人に殴られてめがねが取れてしまう。

続けてジャイアンの番となる。ジャイアンは幽霊など怖くないという触れ込みで、大勢のお化けとすれ違っても全く意に介さずに歩いていく。

ところで、きもだめしめがねは、普通のものが怖く見える訳だが、怖いものを見せたらどうなるのだろうか。そんな疑問を感じたスネ夫は、試しに怪物のマスクを被って、ジャイアンの前に出てみることにする。

その結果は・・・。

ジャイアンにとってお化けよりも怖いもの、自分のかあちゃんが3人も目の前に現れて、ギョエ~と大絶叫して飛び上がる。

つまり、「きもだめしめがね」で怖いものを見たら、最恐なものが見える、が正解なのであった。


さて、以上3作品を見てきたが、お話のパターンはともかく、のび太は常に人一倍の怖がりで、全作品で震え上がったり、悲鳴を上げる羽目となる。

なお、上の文章ではあまり触れていないが、のび太のママもオバケの類いで恐怖に慄く場面が2作品に描かれており、のび太の怖がりは母親譲りであることがわかる。


ここで、さらにもう一本、上の3作品と同じ1985年に発表となった、少し怖い話があるので、チラリとご紹介。

「ドラえもん」『出ちょう口目』
「小学三年生」1985年5月号/大全集15巻

この作品ではのび太が怖がることはなく、のび太が怖がらせる側に回ることになる。

ドラえもんの留守中に未来デパートから送られてきたという「出ちょう口目」という道具を使い、ドラえもんに内緒でいたずらをしていくのである。

「出ちょう口目」は、自分の口目と同じ働きをするという口と目を自由に操ることができる道具。

謎の目と口が飛んできて、スネ夫やしずちゃん、出木杉までを驚かせていく。ドラえもんも、この道具のことを知らないようで、全く見当もつかない。

ところが野球中のジャイアンにあっさりと目口を捕まえられてしまい、コショウ責めを食らってしまう。

ドラえもんも「出ちょう口目」の正体に気がつくが、知らないふりをしてのび太を助けないのであった。

のび太が怖がることはなかったが、結局痛い目に遭うことになる。これはやはり逆人徳のなせる業ということなのだろうか。




この記事が参加している募集

コンテンツ会議

マンガ感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?