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キテレツとみよちゃんの場合(+勉三さん)/藤子恋愛物語②

藤子Fキャラクターたちは、実は恋愛体質の持ち主ばかり。
恋をしては、フラれたり、成就したり、片思いのままだったりと、悲喜こもごもが繰り返されている。
そこで、恋するFキャラの恋愛模様を考察していく大型企画「藤子恋愛物語」シリーズを始動!
第二弾は、「キテレツ大百科」からキテレツとみよちゃんの微妙な恋模様を紹介します。おまけで勉三さんの大恋愛にも触れています。

「ドラえもん」において、のび太がしずちゃんを好きなように、「キテレツ大百科」でもキテレツはヒロインみよちゃんのことが好き。けれど、それ以上に発明に心を奪われており、二人の関係は一向に進まない・・・ように見える。

本稿では全40話の中からみよちゃんとキテレツが互いにどのように思っているのかわかるシーンを抜き出して、二人の絶妙な関係性について考察していきたい。


みよちゃんは、初回『ワガハイはコロ助ナリ』で早速姿を見せる。考え事をして歩くキテレツが野球のボールにぶつかって倒れてしまうシーン。駆け寄ってきたみよちゃんは、その帰り道で、危なっかしいキテレツに対して「空想にふけりながら歩くのおよしなさいよ」と気遣ってくれる。

みよちゃんはキテレツのことを変人と知りつつ、一方で頼りになる友だちだという認識は持っている様子。『モグラ・マンション』では防空壕跡に生き埋めとなってしまい、キツレツに「なんとかして」と頼ってくる。

『地震の作り方』では、家にやってきたキテレツに壊れた掃除機の修理を依頼する。「機械いじりになると、キテレツさんは夢中」と暖かく見守るみよちゃん。

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『潜地球』では、ブタゴリラが城山に登って帰ってこなくなったことをキテレツに伝えようとする。何かあった時に頼りになる存在だと認識しているのだ。
『チョーチンおばけ捕物帖』では、召捕り人から逃げてきたキテレツを匿ってあげたうえに、家にはいないと嘘もついてくれる。

みよちゃんは、基本的にキテレツのことをとても気にしてくれて、機械いじりなどの点で信頼できる存在だと考えてくれているようである。


そんなことでみよちゃんは、ことある毎にキテレツを遊びに誘う

『キテレツの団体』では、お正月から電話で遊びに来るよう誘っている。のんびりオセロをしたり、研究室に籠りっ放しのキテレツの体を気遣って、空き地ではねつきを教えてくれたりする。
『らくらくハイキング』では、みんなと一緒だが山登りハイキングに誘ってくれる。


その一方で、発明最優先の生活をしているキテレツには誘いを断られることも多い。

『潜地球』では虫取りに誘うが断られる。『わすれん帽』では宿題を一緒にやろうと誘っていたが、キテレツに忘れられてしまう。『海底の五億円』では泊りがけでの海水浴に誘ってくれるが、「今は手が離せない」と言って断られる。


断られ続けた結果、OKの返事をNGと決めつけて聞いてしまったりもしている。

『念力帽』という作品で、クリスマス会の誘いに来るのだが、キテレツの両手に握られた工具を見て、黙って帰ろうとする。

「黙って帰るなんて!」とキテレツが抗議すると「だって相変わらず忙しそうだもの」と皮肉を言う。

キテレツは「パーティー? 行く!」と答えるのだが、「やっぱり断られると思ったわ」と聞き間違えてしまう。断られることが当たり前と思ってしまっているのだ。(それでも一応声かけに来るところは愛を感じるが・・)

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続けて、みよちゃんのキテレツへの気持ちが、分かりやすく発せられる回を見ていきたい。

『人間植物リリー』
自分で考えて動き回ることのできる「人間植物」を作ることに成功したキテレツ。ユリとカエデとダイコンを掛け合わせて作ったリリーは、生みの親であるキテレツに好意を抱き、身の回りの世話などを買って出る。

そこへみよちゃんがキテレツを尋ねてくる。家の庭に飛び込んできた実験植物を持ってきてくれたのだ。ところがリリーはキテレツの発明の邪魔だと門前払いをしようとする。

キテレツは、「みよちゃんはいいんだ」と部屋に呼び入れる。これに嫉妬したリリーは、塩入りのお茶を飲ませるなど、みよちゃんに嫌がらせをする。

キテレツが席を外したところで、リリーがみよちゃんに「キテレツさんに馴れ馴れしくしすぎるのよ。さっさと帰んなさい」と迫ってくる。みよちゃんはここで

「あんたの指図なんて受けないわよ! 私とキテレツさんは昔からの友だちよっ」

と強く反論する。深い結びつきを感じさせる発言である。

なお、みよちゃんが持ってきてくれた実験植物は、キテレツがみよちゃんに「よかったらあげようか」とプレゼントし、みよちゃんは「本当?ありがとう。大事に育てるわ」と嬉しがっている。

ちなみにリリーは犬に襲われたところをブタゴリラに助けられ、その二人が仲良くなるというオチであった。

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『ネパール・オパール』

みよちゃんの誕生日は9月4日。まんまと誕生会当日まで忘れていたキテレツは、海で拾ったガラス玉をお守りだと偽ってプレゼントする。

「そんなもん役に立つのか」とみんなは疑ってかかるのだが、みよちゃんはここでも強く反論する。

「失礼ねっ。キテレツさんはそんなインチキしません! ほんとにありがとう。これからずっと身に着けてるわ」

と感謝感激雨あられ。キテレツのことを心底信用しているのである。

キテレツはみよちゃんの期待に応えるために「ビードロ丹」という、姿を透明にできる薬を使ってみよちゃんに近づき、災難から守ってあげようとする。

この話のオチは是非コミックなどでご確認を。

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続けてキテレツ側からみよちゃんへの気持ちがよく表れている作品を見ていく。

『失恋はラブミ膏』
「キテレツ大百科」屈指の恋愛回。キテレツとみよちゃんの関係性に迫りながら、勉三さんの恋愛模様も並行して描かれる。

作中ではコロ助にもガールフレンドが登場する。これは初期ドラの『すてきなミイちゃん』のミイちゃんを同じく、手動のスイッチで動くおもちゃのロボットのことである。

研究室暮らしが続いたので、たまには休みにしようということになり、キテレツは久しぶりにみよちゃんの家へと遊びにいく。みよちゃんは「まあ珍しい。雪でも降るんじゃないかしら」と喜ぶ。

ただキテレツは「たまにはボヤーッと、無意味な時を過ごそうと思って」と余計なことを言ってしまい、みよちゃんを「私とおしゃべりするのが無意味なの?」と不機嫌にしてしまう。

ホットケーキを作ってくれるみよちゃん。少し焦がしてしまうのだが、キテレツはそこで「コゲ防止器」のアイディアが浮かんでしまい、みよちゃんを放って設計図を書き始めてしまう。

放って置かれたみよちゃんは、つまらなそうにひと言。

「あんたのお嫁さんになる人は大変ね」

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みよちゃんはトンガリの遊びの誘いを受けて、「出掛けてきます ごゆっくり」と張り紙を残して外出してしまう。

キテレツはさすがに「怒らせちゃったかな」と自覚し、

「僕、ほんとはみよちゃんが好きなんだけどな・・・」

と独り言を呟くのであった。


その後、勉三さんの恋愛成就のために「羅部身膏(らぶみこう)」という惚れ薬を作るのだが、その実験でみよちゃんに試して大成功。実験台とされたみよちゃんには益々呆れられてしまう。

結局勉三さんは「羅部身膏」を使わずに、一目ぼれした女性と仲良くなり、キテレツも膏薬なしでみよちゃんと仲直りをしようとする。

一度は「もうあんたなんか!」と拒絶されるが、落ち込むキテレツを見てみよちゃんから話しかけてきてくれる。何度読んでもほっこりするラストカットだ。

なお勉三さんと仲良くなった女性は、君子さんという名前を得て、後に再登場を果たしているが、それはまた別の話である。

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さて、本稿のハイライトとなる作品を見ていく。キテレツとみよちゃんは、生命の危機を目の前にして、互いを思いやる気持ちを爆発させる。

『空き地の銀世界』
キテレツ斎発明のスキーを作るキテレツ。ショートサイズのスキー板だが上に立つと周りの空間が広がって感じられる。ダイヤルを百倍にしておけば、3メートルが300メートルになる。

これをみよちゃんと履いて、空き地でスキーをする。狭い空き地とは思えない程のスピードとスリルを楽しむのだが、調子に乗って千倍の世界に挑戦することに。これによって15メートルの空き地が15キロの広さとなる。

ところが強く板を締めたので、スキー盤が外せなくなり、ダイヤルも故障して千倍に広がったまま戻らなくなる。歩いて空き地を出ようとするも、あまりの広大さに遭難しかかってしまう。

そんな絶体絶命のピンチに際して、二人は互いを励まし合う。

キ「歩けない。足が痛いんだ」
み「頑張って! 道路に近づけばきっと通りがかりの人に助けてもらえるから!」
キ「もうだめだよ、僕は。構わないで君だけ行ってくれ」
み「あんたを残して私一人行けないわよ」
キ「二人とも遭難しちゃうぞっ!」
み「死ぬなら一緒よ!(涙)」

「みよちゃん」「キテレツさん」と、涙を零しながら手を取り合う二人。死の危険を目の前にして、はっきりとロマンスが生まれたようだ。いや、兼ねてからの思い合いの気持ちが明らかとなったのかも知れない。

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その後もみよちゃんがキテレツに肩を貸して歩き続けたり、疲れて眠りそうになるみよちゃんをキテレツが抱き寄せ、大声で歌ったりする。

困った時にその人間性が明らかになると言うが、キテレツもみよちゃんも互いのことをしっかりと思い合っていることが明かされたのである。


最後にオマケ的な作品。

『ままごとハウス』
「ドラえもん」にも似たようなひみつ道具があったが、中に入ると催眠術にかかったように本当の夫婦の気持ちになるという簡易ハウスセットを使ったお話。

これから結婚しようとする人たちにリアルなままごとをさせて、仲良く暮らせるかテストするという訳である。30分で約1日程度の時間が流れる感覚となるようだ。

キテレツはこのハウスにガールフレンドたちを一人ずつ誘って、自分と最も相性の合う人を探そうと考える。美人でクラストップの頭脳派花野花子さんや、大人しい性格の乙梨さんなどで試していく。

中々うまくいかない所で、みよちゃんがハウスに入ってくる。みよちゃんとの結婚生活は、幸せなムードに包まれた優しい雰囲気となる。やはりみよちゃんはキテレツの有力な結婚相手の候補となりそうである。

なお、先に外へ出たキテレツだったが、テレビの修理に熱中して4時間みよちゃんを放置してしまう。その間ままごとハウス内では8日間が経過してしまっている・・。

急いでキテレツがハウスに戻ると、一人で8日間放って置かれたみよちゃんは「離婚していただきます」と書き置きを残して既に不在。機械いじりに夢中となってしまう性格は結婚までに直しておかないと、あっという間に離婚されてしまうことがわかるキテレツなのであった。

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藤子F先生の名作を考察しています。その数270本以上!


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