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ドラミちゃん&どこでもドア初登場!『ハイキングに出かけよう』/ドラミ大活躍①

ドラえもんの妹として有名な「ドラミちゃん」。1300話以上ある短編の中でも30話くらいしか登場しないが、なぜか知らない人はほとんどいない。

理由の一つは、アニメでのイメージが強いことが挙げられる。オリジナルエピソードで、ドラミを登場させることが多い。映画でも併映作品としてドラミちゃんが主役を演じていた。

もう一つはてんとう虫コミックなどに「ドラミちゃん」を主人公にしたお話がいくつか収録されており、そのどれもがインパクトの強い中編だからである。


ではまず、そもそもドラミちゃんって何者?というところから解説したいが、既にドラミちゃんの記事を書いているので、まずはこちらを読んでいただきたい。

この記事のポイントは、以下のようにまとめられる。
・ドラミは最初ドラえもんの恋人役として、読者から公募したキャラクターだった
・「ドラミちゃん」というスピンオフ作品が全8話で連載された
・ドラミちゃんは、のび太ではなくのび太朗の家に居候した
・てんとう虫コミックには、のび太朗をのび太に変更して書き直してして収録した
・「ドラミちゃん」はページ数の多い読み応えのある中編ばかり


ちなみに、ドラミちゃんをメインにしたお話は既に2作の記事を書いている。


上記の記事以外で、ドラミちゃんがメインとなるお話が6作残されているので、「ドラミ大活躍」と題して、それらを全て紹介していく。


その第一弾となる本稿では、ドラミちゃんが初登場した『ハイキングに出かけよう』を見ていく。てんとう虫コミックス0巻に収録されるまではあまり知られていなかった作品である。

『ハイキングに出かけよう』
「小学五年生」1973年4月号/大全集2巻

本作はドラミちゃん初登場と同時に、「どこでもドア」も初めて登場する実はかなりのエポックメイキングな作品。語るべきことが多いので、ストーリーを追いつつ、ポイントごとに区切って解説していきたい。


パパとママがドラえもんを頼る展開

冒頭、のび太のパパとママが、のび太に「どこかへ行こう」とお願いしてくる。「それはアベコベだ」とのび太が答えると、「ドラちゃんに頼めばどこへでも簡単に行けるじゃない」と言い出す二人。

これは何気に珍しい展開で、のび太の両親がドラえもんを頼ってくる場面は、他ではほとんど見られない。あえてそうしていないのだ。

これはなぜかと言えば、野比家のモラルハザードとなりかねない話題だからである。いちいちのび太の両親がドラえもんにお願いしていたら、究極的には仕事をする必要もなくなるし、便利な未来の生活をすることが可能となる。

未来が現代に大きな影響を与えないという原則の下、のび太がドラえもんの道具の恩恵を受けることがあっても、野比家全体が目立った未来の恩恵を与かることを意識的に避けているのである。


ドラミ初登場

ドラミ登場

のび太はドラえもんに「なんか旅行の機械を出して」とお願いに行くと、「今なんだかだるい」とゴロゴロしている。珍しくダルそうにしているので、病気かと疑うのび太。

すると「こんなことだと思ったわ」と、突然引き出しの中からドラミちゃんが姿を現わし、のび太は驚きの表情を見せる。ドラえもんは「ドラミ!ぼくの妹だ」と嬉しそうに紹介する。

ドラミは、ドラえもんを一目見て「くたびれてるみたいね」と感想を漏らす。ロボットは年に一日くらいスイッチを切って休まなきゃいけないのだという。ドラえもんは休むのが嫌いらしく、「まだまだ平気だ」と言い張るが、ドラミちゃんに取り押さえられて、無理やりシッポのスイッチを引っ張られてしまう。

ドラえもんが休みたくないという展開は、後の『ドラえもんとドラミちゃん』などにも登場する。ドラえもんを力づくでねじ伏せていたドラミは、なんと一万馬力を持つという設定が明らかとなる。

ドラえもんは休むのが嫌い


お節介&おっちょこちょいのドラミ

ドラえもんが休む間、ドラミがのび太の面倒を見てくれることに。さっそく取り出した道具は、のび太が今朝顔を洗わなかったことがわかる機械。ドラミは、だらしないことは嫌いなのだという。

他にどんな道具を持っているかというと、「そくせき料理機」「自動買い物かご」「ぞうきんクリーナー」といった家庭科専門の道具ばかり。

のび太は手軽に旅行できる機械をリクエストすると、持っていないのでドラえもんのポケットから探してみることに。気絶状態のドラえもんのポケットを漁ると、未整理なので訳の分からない道具ばかりが出てくる。

ドラミはおっちょこちょいの性格らしく、「空飛ぶ旅行カバン」だと思っていたものが奇術用のトランクだったり、「空飛ぶじゅうたん」かと思いきや、「オメグミクダサイ」と声を出してくれる物乞い用の敷物だったりする。

「どこでもドア」とは呼ばれていない。


どこでもドア初登場!

ドラえもんのポケットからドアを取り出すドラミ。これを探していたという「どこでもドア」である。まだ名前が付けられておらず、「くぐるとどこへでも行けるドア」だと呼ばれている。

外観は、その後の木製ではなく、金属製のような光沢がある。今回は全編を通じて初登場なのだが、のび太は「どこでもドア」を見て、「それなら前にも使ったことがある!」としている。

このドアを使って、両親とともに旅行に行くことに。最初の両親からのリクエストは「しずかな所」だったのだが、ドアを開くとそこは食事中の源家。「しずか」ちゃんの家に出掛けてしまったようだ。

電車に乗っていくようなもっと遠いところへと、使い直すと今度は電車のホームにドアが開いてしまい、勘違いした乗客が大勢乗り込んでくる。

行先をはっきりさせないのが原因だとして、「みはらし峠の頂上」に狙いを定める。のび太が「頂上というのは一番高いところだ」と念押しをしたばっかりに、木のてっぺんにドアが開いてしまう。

「しずか」違い


ドラミは機械に弱かった。

何とかみはらし峠に到着し、一通り山あそびをしていると、ゴミが散らかっていることに気がつく。そこでドラミは「ゴミ磁石」という道具を取り出し、家族総出でゴミ拾い。

雨が降ってきたので帰ろうということになるが、どこでもドアが開かない。そこで、ドラミは一万馬力を生かしてドアを体当たりで破って野比家へと帰宅する。

ところが、ドアが開きっ放しとなって、山小屋かと勘違いする人々やクマが部屋に入ってくる。慌ててドラえもんを起こして何とかしてもらうことに。ドラえもん曰く、「ドラミは機械に弱い」のだと。未来の機械を操るロボットとしては、致命的な気もする今日この頃・・。


ドラえもんもに元気に戻り、ドラミはお役御免。・・・のはずだが、「ううん、ドラミ帰らない」と、野比家が気に入ってしまった様子。

寝る前には歯を磨け、のび太は下着を代えろ、兄ちゃんはポケットの整理をして・・・と、口うるさいドラミ。のび太は「あのチビ帰せないの」と露骨に嫌がり、ドラえもんは「一万馬力だからなあ」と手を出せないのであった。

迷惑キャラ・ドラミ


補足情報:「どこでもドア」と呼ばれるまで

本作で「くぐるとどこへでも行けるドア」として初登場した「どこでもドア」。二度目の登場は、本作から3カ月後の『のび太漂流記』(73年7月)で、この時は特に名称を告げずに無言でドラえもんが取り出している。

次に登場したのがそこから半年後の「ドラミちゃん」『山おく村の怪事件』(74年3月)である。また次回の記事でも紹介するが、この作品は雑誌掲載時には『ふしぎなドア』というタイトルで、どこでもドアがフューチャーされる回であった。ここでも「そのドアをくぐるとどこへでも行けるんだね」と紹介されている。

その次に登場したのがバケルくんとのコラボ作『ぼく、桃太郎のなんなのさ』(75年9月)。延元3年にタイムトラベルし、この時代で日本とオランダをつなぐ働きを見せた。この時も名前をはっきりと出していない。

続けて『ゆうれい城へ引っこし』(76年6月)では、無言でのび太がポケットを指して、ドラえもんがどこでもドアを取り出しているが、この時も名前を呼ばれず、「どのドアをくぐれば、どこへも行ける!!」でも行ける!!」と語られている。

そしてついに、『宝さがしごっこセット』(77年3月)で、初めて「どこでもドア」という名称が登場し、以後、この名前が定着していく。実に初登場から4年後にようやく「どこでもドア」と呼ばれるようになったという事実は、少し意外である。


では次回では、どこでもドア(ふしぎなドア)を使って山奥へと向かうドラミちゃんの傑作を取り上げたい。



「ドラえもん」も「ドラミ」もたくさん考察しています。




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