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ドラえもん、素で空を飛ぶ『ドラえもん登場!』/ドラえもん初回特集②

明けましておめでとうございます!

2023年も藤子Fノートをどうぞご贔屓によろしくお願いします。

できれば今年中に完結させて、来年は記事に追われることのない新年を迎えるつもりですが、果たしてどうなることやら・・・。


さて、お正月と言えば、やっぱり「ドラえもん」であるのは議論の余地がないところです。(え、と思う方は、この先少しだけ読み進めて下さい)

「ドラえもん」は1970年の1月号にて、全6誌で連載が始まりました。この6誌とは「よいこ」「幼稚園」と「小学一年生」から「小学四年生」までとなります。

1月号と言えば新年号であり、6誌の初回作品のほとんどは、お正月が絡んだお話となっています。つまり、ドラえもんはお正月と共に幕を開けたのです。


ということで、今年2023年のお正月三が日は、ドラえもんの記事で固めていきたいと思います。まず元旦にお届けするのは、昨日(2022年大みそか)よりスタートさせているシリーズ「ドラえもん初回特集」の、二本目の記事。

前回「幼稚園」「よいこ」と未就学児童向けの各4ページの超短編をご紹介したので、本稿では小学校入学後の「小学一年生」の第一話をたっぷりと検証していきます!


『ドラえもん登場!』(初出は無題)
「小学一年生」1970年1月号/大全集2巻

「小学一年生」ということで、いきなりの8ページ。さすが小学生ともなると、読解力が上がるものなのだ(・・と藤子先生は考えていたに違いない)。

そういうことで、本作では「幼稚園」「よいこ」では触れていなかった「ドラえもん」の基本設定が説明されている。


冒頭は小学生にもなって、ロクにお使いもできない・・・という描写から始まる。

びしょ濡れで帰宅したのび太は、犬に追われてドブに落ちたとママに説明。パパからはポストへの投函をお願いされていたが、ポストの前に犬がいて、その後ドブに葉書を落としてしまったらしい。

こんな有様を聞かされたママとパパだが、ママは「子供に頼むなんて無理ですよ」とパパの方をたしなめ、パパも「もう一度手紙を書くからいいよ」と優しい態度をとる。

初期ドラでは基本的に両親はのび太に甘く、そのせいでのび太が甘ったれとして成長していく原因のように描かれている。


「パパもママも優しい」と喜ぶのび太に、「だからダメなんだ」と言いながら、机の引き出しから姿を現したのが、ドラえもんとセワシである。突然の登場に驚いたのび太は、机の引き出しを点検。対するセワシはひと言、

「ああ、ちょっと未来の世界からの出入り口にしたんだ」

と説明する。「小一」ではタイムマシンについて触れぬままである。

のび太は「未来ってなあに」と質問するのだが、セワシはそこで、

「未来って昔の反対。僕らはそこから来たんだ」

と、未来の定義を小学一年生にもわかるように丁寧に説明しつつ、自分たちが未来人であることを告げる。


ドラえもんたちが未来からやってきた目的、それは「のび太を助けるため」だという。一年生になってお使いもできないのび太に、今後はドラえもんが傍にいて面倒を見てやろうというのである。

「お使いくらいできる」と反発するのび太は、手紙を書き直したパパに、お使いのリベンジを申し出る。ママに偉いわねと送り出されるのび太。その後の鬼ばばぶりを考えると隔世の感がある態度である。


ドラえもんたちは、「きっと失敗する」などと言いながら付いてくる。「うるさいなあ」と反発していたのだが、その矢先にしずちゃんとバッタリ会って「みんなとトランプしない」と誘われて、そのまましずちゃんの家へと吸い込まれていく・・。

しずちゃんたち女子三人とトランプをするのび太だが、この中にジャイ子と思しき子も姿が見える。


お使いそっちのけで遊びを選んでしまうのび太。ドラえもんは何かライトのような道具をポケットから取り出し、パパの手紙を吸い寄せる。

手紙の宛先は田舎のおじさん。届けようと言うことで、セワシが髪の色を変えたりしてのび太に扮装。ドラえもんの背中に乗って、おじさんの家まで遥か飛んでいく。

この時、ドラえもんはタケコプターのような道具を一切使わずに、まるでオバQのように自力で飛んでいる

他の作品ではドラえもんは「タイムマシン」なしで時空空間を移動していたりと、初期ドラは、その後失われた驚きの能力を発揮することが多い。


のび太に化けたセワシは、おじさんに手紙を届け、偉いと誉められ、返事の手紙を受け取って帰路に就く。一方の本物ののび太は、しずちゃんちを出てポストに向かうが、手紙がないことにそこでようやく気がつく。

「ごめんなさい」と泣きながら帰宅するのだが、一足早くおじさんからの手紙をセワシが届け済みだったので、逆に「偉いわね」とパパ・ママから褒められるのび太であった。


ちなみに本作では、コマによってドラえもんのポケットが付いたり付いていなかったりする。単なる書き忘れだろうが、まだまだドラえもんの造形が固まっていないことを示しているとも言える。

本作ではポケットから道具を出していたが、「小学一年生」での第二話目『アタールガン』では、ドラえもんが手作りで道具を作り出している。この時点では、ポケットからひみつ道具が出てくるという設定も固まり切っていなかったのかもしれない。


さらに補足情報を書き加えると、「小学一年生」の初期掲載作品は、ほとんど「てんとう虫コミックス」には未収録となっている。初期ドラならではの未完成さが楽しめる作品ばかりなので、こちらについてもまとめた記事を執筆したいと考えている。


ところで本作を読み返すと、一月号掲載作品ということにも関わらず、お正月設定が一切登場していないことに気がついた。お正月一発目の記事として相応しかったのかは、ちょっと微妙だが、そこはご愛敬ということで・・・。

さて、次稿ではさらに学年が上がった「小学二年生」の第一話作品をご紹介する。徐々に難しいSF設定が出てくる点にどうぞご注目あれ。


「ドラえもん」考察やっています。

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