「みつ夫のママはなぜパーマン嫌いなのか」を考察する。
みんな大好きパーマン。みんなの憧れパーマン。パーマンの活躍をみんなが応援している。パーマンはみんなのヒーローであり人気者なのだ。
・・・と思いきや、例外となる人物がたった一人いる。それがみつ夫のママなのである。
この後じっくりと紹介していくが、ママがパーマンのことを快く思っていない描写は数知れない。問題なのは、なぜみつ夫のママはパーマンのことが気に食わないのか、である。これは丁寧に作品を通読していくと、とても納得できる理由が明らかとなる。
そこで本稿では、みつ夫のママがパーマンをなぜ嫌ったのか、普段どのように感じているのか、そして有事の際にはどのような行動を取ったのか、そのあたりを詳細に見ていくことにしたい。
今回の「考察パーマン」の主人公は、みつ夫のママである。
パーマンの正体は家族にも秘密なので、自分の息子がパーマンに選ばれたことなど知る由もないみつ夫のママ。よって、ママからすれば、ある日突然自分の家にパーマンが出入りを始めたように思える。
そしてママからすれば、パーマンは二階の窓から勝手に入ってくる「お行儀の悪い子」であるし、みつ夫の勉強を邪魔する悪友ということになる。
まずはそんなママのパーマンへの感情が良くわかるお話をご紹介したい。
冒頭、パーマンがみつ夫気分でママからおやつのリンゴを奪い取るという暴挙に出る。隣にいたガン子に、あれがパーマンだと聞いたママは、
と愚痴り、最悪の第一印象となったようだ。さらに、コピーのみつ夫の前でパーマンへの批判が続き、
と、パーマンとの絶縁を言い渡す。そしてパーマンが出入りする二階の窓を釘で打ち付けてしまう。ママは本気でパーマンを目の敵にしてしまったようだ。
自分の家に戻るのが不自由となるのは問題なので、パーマンはママに自分が良い子だと分からせようと考える。
さっそくママに掃除をさせて下さいと部屋に飛び込むのだが、靴を履いたままだったり、力が6600倍となっているパーマンパワーの加減ができずに、はたきで襖を破ってしまったりして、乱暴者だと思われてしまう。
その後もやることなすこと、ママの機嫌を損ねることばかり重ねていく。何とかフォローをしようと、背中に乗せて空を飛び回るのだが、高所が苦手なママに怖がられ、最終的には「うちへ来たら、承知しません」と完全にキレられるのだった。
パーマンは家に入れず、みつ夫に戻れない。けれどコピーロボットが何かの拍子に元の姿に戻ってしまったようで、みつ夫が行方不明となってしまう。
そこでパーマンはみつ夫に戻って、悪者にさらわれたところをパーマンに助けられたと嘘をつく。すると、みつ夫の恩人だと言うことで、パーマンを見直してくれるのであった。
オチとしては、お腹をすかせたみつ夫が、パーマンが助けたお礼にご飯をくれと言っていると嘘をつき、パーマンは意地汚いと思われてしまうというものであった。
ちなみにママはパーマンだけでなく、パー子のことも同族として嫌悪している。『パー子の正体は?』(「週刊少年サンデー」1967年11号/大全集1巻)では、やはり窓から飛んで入ってくるパーマンとパー子を見て、
と、眉をひそめる。そしてみつ夫の友だちは変な人ばかりと愚痴るのであった。
ママからすれば、パーマンの素性は知れない、よその子供。『ウラトルPを見たい』(「小学館コミックス」1967年3月号/大全集5巻)では、パーマンに対して
と叱りつけて、パーマンを震え上がらせる。
『パーマンはつらいよ』(「週刊少年サンデー」1967年39号/大全集2巻)では、コピーロボットを学校に送り出して押し入れでパーマンが寝ていたのだが、ママに見つかってしまう。そして、
と、お説教を始めてしまう。
ママにとっては、パーマンの活躍は単に飛び回っているだけと思い込んでいる様子。パーマンをヒーローではなく、勉強が大事な年ごろの男の子という認識を持っているようなのだ。
そしてもう一つ、ママがパーマンを毛嫌いする理由は、パーマンを狙う悪者の犯罪行為に家族も巻き込まれてしまうと懸念しているからだ。
例えば『ねらわれたパーマン』(「小学館コミックス」1967年5月号/大全集5巻)では、全ギャド連の3人組がパーマンを付け狙うのだが、人違いでパパが殴られて怪我を負ってしまう。
パーマンのせいだと直感するママは、
とみつ夫に厳命するのであった。
これは家族を思うママの立場からすれば、当然のこと。パーマンは犯罪者を退治してくれる英雄ではなく、悪者を引き寄せる厄介者のように見えるのである。
このママの懸念がバチっと当たってしまうお話が、『ガン子誘拐事件』(「小学二年生」1968年3月号/大全集3巻)である。ガン子が誘拐され、引き換えにパーマンマスクとマントを要求されてしまうのだ。
ママはガン子を思って、
と泣き出してしまう。
パーマンが須羽家を拠点にしていることが悪者たちの間では有名となってしまったので、起こるべきして起こった事件である。ママはこのような事態をなることを恐れていたのである。
つまり、ママはパーマンが何となく嫌いなのではなく、家族を危険な目に遭わせる存在として忌み嫌っていたのである。
そんなママの気持ちがダイレクトに表現されているお話が、『かなしい勝利』(「小学館コミックス」1967年11月号/大全集5巻)である。
この作品は記事化しているので、詳細はリンクから飛んで欲しいが、内容としては、パーマンの正体がみつ夫ではないかと、世間に噂が広まってしまうお話である。
みつ夫がパーマンだと噂を聞きつけて、友だちや先生は急にチヤホヤしてきてくるし、家族でもガン子やパパも大喜び。ところがママだけはこの噂を聞いて、皆と全く違う態度を取る。
みつ夫に噂が本当かと聞き、はっきりと答えないみつ夫に対して、「いけません、すぐやめなさい」と感情を露わにする。そして、
と、みつ夫のことを心から心配するのである。
逆にみつ夫がパーマンではないと言うことになり、パパはちょっとがっかりしたなと感想を言うのだが、ママは一味違う。
と、常に子供のことを心配する母親の顔のままなのである。
みつ夫のママはなぜパーマン嫌いなのか。
それは家族のことを心配するから、が答えとなる。
もちろん、危ない仕事に取り組んで町の平和に貢献しているパーマンに感謝の気持ちはあるようだ。『ひみつのクリスマス』(「小学三年生」1967年12月号/大全集3巻)では、日頃のパーマンの活動に感謝して、内緒でみんなでシークレットパーティを仕込むのだが、ママは自宅を会場にしてくれる。
また、パーティの存在をみつ夫に知られたらパーマンに伝わってしまうということで、みつ夫も内緒にされるのだが、ママもしっかりと協力している。これは、みつ夫とパーマンの関係が近いことを認めていることを意味する。
まとめると、ママは二階から「行儀悪く」出入りしてくるパーマン(+パー子)に対して嫌悪感を示して、みつ夫と付き合って欲しくないと思う。さらにヒーロー活動によって犯罪者を呼び込む可能性を感じ取って、家に近づいて欲しくないと思っている。
実際にパパやガン子が被害に遭って、そのたびにパーマンのせいだと怒る。自分の息子がパーマンだという噂を聞くと、危ないからパーマンを辞めろと説得してくる。
つまりはパーマンよりも家族のことが大事だという姿勢は最初から一貫していたということである。
しかし、パーマンへの感謝の気持ちはあって、パーマンを労うクリスマスパーティーでは、自宅を会場として提供して、飲み物などを振舞ってくれる。
ママからすると素性のわからないパーマンであったが、みつ夫と仲良くしている様子を見て、少しずつ態度を軟化させていったのかもしれない。まあ、実際にはパーマンマスクを取れば息子なのだから、親しみを覚えることは極めて自然なことだったと思われる。
「パーマン」考察はいよいよクライマックスへ。
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