家出常習犯・のび太の家出年表 大公開!/Fキャラは家出する①
藤子キャラクターたちは、家出する。
特にのび太は、たびたび家を出る。Q太郎もパーマンもエリさまも、みんな家出する。「モジャ公」では宇宙に家出してしまう。大人(中年スーパーマン)だって家を飛び出す。
でも、みんな好きで家出しているわけではない。
それぞれ、仕方のない理由があるのである。
Fキャラの家出の全貌に迫る大型企画、始まります!
藤子Fノートでは、藤子作品に共通しているテーマやモチーフを探し出して、それを記事にしている。今回はずっと温めていた大テーマ「家出」について考えていきたい。
藤子キャラは基本的に家庭を中心とした日常生活を送っているが、何かの問題(特に親子関係)が発生して、家出という選択をすることが良くある。
きっかけは様々で、家出先や家出の方法、家出から戻ってくる収め方もそれぞれである。
本シリーズでは、家出を選択してしまったFキャラたちの思いや葛藤などを掘り下げていく。題して「Fキャラは家出する」。
本稿ではシリーズ第一弾として、家出常習犯・のび太の家出エピソードを見ていくことにする。まず把握できている「ドラえもん」の家出エピソードを年表にまとめた。
◆のび太の家出年表
①『のび太漂流記』「小学五年生」1973年7月号/大全集2巻
②『デンデンハウスは気楽だな』「小学四年生」1975年7月号/大全集5巻
③『無人島へ家出』「テレビくん」1977年1月号/大全集18巻
④『家がだんだん遠くなる』「小学三年生」1977年4月号/大全集8巻
⑤『ナイヘヤドア』「小学六年生」1977年5月号/大全集5巻
⑥『オンボロ旅館をたて直せ』「小学六年生」1980年5月号/大全集5巻
⑦『森は生きている』「テレビくん」1981年1月号/大全集19巻
⑧『のび太のなが~い家出』「小学三年生」1981年4月号/大全集12巻
⑨『やどり木で楽しく家出』「小学六年生」1981年6月号/大全集9巻
⑩『のび太の息子が家出した』「小学六年生」1984年3月号/大全集11巻
⑪『ドラえもん のび太の日本誕生』「コロコロコミック」1988年10月号~
11本見つかったが、Wikiなどにはのび太は14回家出していると書かれているので、まだ見落としたものがあるものと思われる。上記の他に「家出」作品が見つかれば、随時追記していきたい。
簡単に11本をおさらいしていく。
①『のび太漂流記』は、ロビンソン・クルーソーに憧れて無人島で暮らしてみたいと家出をする。
②『デンデンハウスは気楽だな』は、正確にはデンデンハウスの中に隠れてしまう「家入」のお話である。でも冒頭、のび太は家出してやると怒っているので、実質家出と考えたい。
③『無人島へ家出』は見所、ツッコミどころ満載のエピソードなので、別の記事にて考察する。
④『家がだんだん遠くなる』は、のび太が意図した家出ではない。食べると二度と家に帰れないという恐怖の「すて犬だんご」をうっかり口にしてしまって帰宅不能となるのだ。出て行ったのび太に対してドラえもんは「さらばのび太。君との楽しかった思い出を僕は忘れない」と諦めが早いのが笑える。
⑤『ナイヘヤドア』はこの後詳しく。
⑥『オンボロ旅館をたて直せ』は、のび太が家出してつづれ屋にたどり着き、旅館立て直しに奔走するお話。これは別の記事で紹介済み。
⑦『森は生きている』は、家出して学校の裏山に閉じこもってしまうのび太を描く感動作。家出とは別の切り口で近日考察予定となっている。
⑧『のび太のなが~い家出』もこの後詳しく。
⑨『やどり木で楽しく家出』は、「やどり木」を使って他人の家に入り込むお話で、のび太は家出して「やどり木」を置いた家庭に入ろうとするのだが、既に「やどり木」は撤去されていた、というオチ。
⑩『のび太の息子が家出した』はのび太の21世紀の息子・ノビスケが現代に家出してくるお話。こちらは別の記事にて考察する。
⑪『ドラえもん のび太の日本誕生』は、のび太だけでなく、ジャイアン・スネ夫・しずちゃん・ドラえもんまでが家出して、日本が誕生した時代へと向かうというドラえもんの家出総決算のような大長編である。大長編はずっと先になるが、別途考察する予定。
意図した家出、意図せず家出となってしまうもの、そのきっかけは様々だ。ただ、②③⑥⑦⑧⑨⑪はのび太がママに叱られて、嫌になって家出するというお馴染みのパターンとなっている。
ちなみに②⑤⑥⑧では、家出道具の中にカップラーメンが入っている。子供が家出すると言えばカップラーメンなのである。
ところで、のび太の家出年表を見てみると、1977年が家出頻発の年であることがわかる。1月に無人島に家出し、帰れなくなって10年も一人で暮らすハメになる。その後帰宅し、タイムマシンで10年前に戻ってくる。
と、その数か月後、4月には「すて犬ダンゴ」のせいで再び家に帰れなくなる。立て続けに家出で辛い目に遭っておきながら、翌5月には「自分の力を試してみたい」と独立を考える。懲りないというか、家出に貪欲というか・・。
そんな家出大好きなのび太の、家出を好む理由とは何なのか?
『ナイヘヤドア』「小学六年生」1977年5月号/大全集5巻
本作はママと喧嘩して家出を考えるのではなく、いつまでも親に頼りっ放しなので、思い切ってアパートで一人暮らしをしたいと言い出す。のび太の志を聞いたドラえもんは「偉い!」と声を上げ、
「いくじなしで甘ったれで、気も頭も弱い君が、よくそこまで決心した!」
とのび太をディスりながら、褒める。そして出してあげた道具が「ナイヘヤドア」である。
ドラえもんが近所の田中荘というアパートに連れて行く。ここの大家は縁起を担ぐタイプなので4号室がない。そこで3号室と5号室の間の何もない壁に「ナイヘヤドア」を設置すると、その左右と同じ間取りの部屋が現れるのであった。
一度家に帰って家出の準備をするのび太。一瞬ママが心配するかなと気に掛けるが、
「いや、少しぐらい心配した方がいいんだ。僕がかけがいのない一人息子だってことがわかるだろう」
と、逆にママに心配させようと考える。
ところで独立したはいいものの、ゴロゴロとのんびりしてしまうのび太。宿題も残っているのに動き出せない。そこで一度家に戻ってママに会って、「宿題やりなさい」と叱らせて、やる気を起こさせる。全く自立できていない。。
ドラえもんはそろそろ晩ご飯ということで帰っていく。のび太は持ち出してきたカップ麺を作ろうとするが、まんまと中身をこぼしてしまう・・・。のび太はたびたびカップラーメンを持って家出するが、まともに食べられたことはない。
のび太は「ママがそろそろ心配になってあちこち探し始めるはずだ」と思い、もっと見つけやすい場所に引っ越そうということで、田中荘を出て「ナイヘヤドア」を野比家の壁に設置する。
が、そこでもママはのび太の家出に気付いてくれないのであった。
『のび太のなが~い家出』「小学三年生」1981年4月号/大全集12巻
そして、ママに心配してもらいたい。そんなのび太の宿願が叶うお話がこれ。
冒頭、ママとのび太はいつになく激しく口論している。「うちの子じゃない、出て行きなさい!!」というママの売り言葉に対して、のび太は「出て行くとも!!誰がこんな家に!」と家出の準備を始める。
そこでのび太は、
「僕がいなくなったら思い知るだろう、僕がかけがいのない一人息子だってことを…」
と、『ナイヘヤドア』の時と同じセリフを口にする。
のび太を見送ったドラえもんは「どれだけ続くか怪しい」と思った矢先、さっそく次のコマでのび太が帰ってきてしまう。「もう止めたの!?」と驚くドラえもんに、のび太は家出を止めたわけではなく相談があるのだという。
今夜見たいテレビがあるし晩ご飯も食べたいので、六時ころまでには帰りたいが、その短時間の留守でもママがオロオロ心配する道具はないかという都合の良い相談であった。
そこでドラえもんが出したのは「時間ナガナガ光線」という道具で、光を浴びると10分が1時間に感じられるという。本来は楽しい時間をたっぷりと味わうための道具らしい。
光線をママに当てて、のび太は家出を決行。するとジャイアンにどこ行くのかと呼び止められて、家出なら自分の部屋に来いと誘われる。ジャイアンも幾度となく家出したいと夢見ていて、のび太の気持ちがよくわかるので、力を貸そうということであった。
さて、その後のママだが、時間の経過とともに様子がおかしくなっていく。
20分(2時間):家出に気づかずおやつを食べながらテレビを見る
40分(4時間):宿題もせずに姿を見せないのび太を気に掛ける
50分(5時間):帰ってきたらただじゃおかないと怒り出す
60分(6時間):心配になって町のあちこちを探し回る
90分(9時間):ただ事ではないとパパに電話するが聞いてもらえない
120分(12時間):警察に誘拐事件だと捜査を願うが聞いてもらえない
180分(18時間):無事に帰ってくるよう神さまにひたすら祈る
のび太はママの狼狽する様子を見て途中で家に帰ろうとするが、ジャイアンに「それでも男か」と引き留められる。そのため、少しママに心配を掛けすぎてしまうのだった。
恐る恐る帰宅し、ママに謝るのび太。するとママは大泣きしながら、のび太を抱きしめる。それを見たパパは「何事か」とドラえもんに聞くと「のび太が3時間ぶりに帰ってきたの」と答えるのだった。
ということで家出の常習犯・のび太の家出エピソードをいくつか見てきた。
基本的にのび太はママと口論になって、家を飛び出すパターンで、その時はほぼ必ずカップ麺を持っていく。家出といってもテレビも見たいしご飯も食べたい。だから手っ取り早くママが心配になってくれればそれでいいと考えているようなのである。
藤子Fキャラ×家出 のお話は他にもたっぷりあるので、次稿以降で少しずつ紹介していく。
「ドラえもん」各種考察揃ってます。
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