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フニャコフニャオ番外編?『見えなくなる目ぐすり』/ドラえもんミニ考察⑫

『見えなくなる目ぐすり』
「小学四年生」1975年12月号/大全集5巻


「藤子不二雄はコンビ作家」というイメージ

藤子作品にちょいちょいと姿を見せる藤子先生の分身キャラクターのフニャコフニャオについて、全7本の記事を書いた。(気になる方は目次から進んでください)

藤子不二雄はコンビ作家と言いつつ、実際は一人一人別の作品を描いていたが、世間的には合作体制だと思われていた。僕自身、コンビ解散の時に、実は別々で書いていたと聞いてド級の驚きであった。合作だと心から信じていたからである。

というのも、日常に起こる少し不思議な物語という設定は、藤本作品にも安孫子作品にも共通していたし、パーマンとハットリくんが一緒に戦う映画だってあった。

そして、作者の分身として登場したフニャコフニャオの造形は、藤本先生と安孫子先生をうまく調合したキャラクターであったし、本作のように「作者」として登場する際には、コンビで登場している。

つまり、藤子作品では、あくまで合作であるという見え方にこだわっていたのである。


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透明になれる目薬もある

本作ではドラえもんが「年末が近づくと忙しい」と言って、のび太の頼みをしっかりと聞かないことから、のび太はトラブルに陥ってしまう。ドタバタと小さめのカバンを持って未来へに行ってしまうドラえもんだが、年末だと何か忙しいのかは不明である。

それはともかく、ドラえもんがのび太に渡したのは、目薬を差した人間が、他の人を見ることが出来なくなるという道具だった。使い道がさっぱり見当つかないひみつ道具である。

のび太はそんな目薬だとは夢にも思わないので、この後奇妙なことが続いても、まさか自分の目がおかしくなっているとは想像できなかったのである。

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そして、のび太は最初から、透明人間になれる目薬の存在を知っているようだった。「あれを貸してよ、ほら、あれ」と、一度ドラえもんに出してもらったことがあるようである。

実際に、本作の約一年前に発表された『とう明人間目ぐすり』(74年9月)に、透明人間になれる目薬が登場している。

ただし、この作品はドラえもんのスピンオフである「ドラミちゃん」のエピソードであり、使ったのはのび太ではなくのび太朗であった。おそらく藤子先生は、そのあたりを混同して本作を描いているように思われる。

なお、てんとう虫コミックスでは、のび三郎がのび太に書き換えられているので、単行本だけ読んでいる人は、きちんと伏線のように受け止めることができる。


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全く状況が飲み込めないのび太

のび太は、自分が透明人間になったと思いきや、自分以外が透明人間になったとは露知らず。。

しかし、道で透明の誰かとぶつかって怒鳴られたり、自転車だけが走っている姿を見た時には、さすがにおかしいと思うはずである。ところがのび太は、こうした不思議な事象を見ても、「おばけだあ」と言って超常現象として捉えて思考停止をしてしまう。

ここで作者が登場し、ドラえもんが大変な勘違いをしていたと説明する。作者がお話を語るメタ描写は、ギャグマンガの定番でもあるのだが、藤子作品では珍しい。

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のび太は、結局自分が見えていないとは思わないまま、ジャイアンの家に入り、部屋に上がってジャイアンのお菓子などを食べてしまう。

見えていないこともあって、堂々とした態度で家や部屋に入っていくので、ジャイアンの母ちゃんもジャイアンも、絶句して口をあんぐりするばかり。

そしてジャイアンにボコボコにされるわけだが、それでもなお、のび太は気がつかない。殴られて体中が痛くなったことも、おかしな風邪としか思えずに寝込んでしまう。

そして、作者のコメント(ナレーション)が付く。

のび太くんはしまいまで気がつかなかったのだ

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使い道不明の道具に翻弄されつつ、あまりに勘の悪いのび太のお話でした。


ドラえもんのミニ考察、徹底考察、などやっています。


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