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眠らせる砂男・凍らせるアイスマン・消える透明人間/パーマンVS強敵(ヴィラン)!②

アメコミ映画が世界的に大ブームだが、その人気の一助となっているのが、ヒーローを追い詰める敵(ヴィラン)の存在である。

僕らのヒーロー・パーマンにも、様々な技を使ってくる強敵が現れて、パーマンたちを苦しめる。敵が強ければ強いほど、パーマンたちが困難に陥れば陥るほどに、物語は盛り上がる。

なので、強敵が登場する回は、大体において読み応えのある傑作ばかりである。

そこで、「パーマンVS強敵(ヴィラン)!」と題して、強敵とのバトルエピソードをいくつか紹介していく。前稿では『くるわせ屋』という問題作を取り上げた。本稿では、変わり種ヴィランを3種類を一気に紹介していく。


『とうめい人間』「小学二年生」1968年1月号/大全集3巻

ではまずはヴィランの定番「透明人間」登場の回から。

三重内(みえない)博士が作った体を透明にする薬。研究所に忍び込んだ悪者がこの薬を一口飲んで逃げてしまった。透明人間となった悪者がいつどこで犯罪をするかわからない。そういうことで、パーマンが透明人間を捕まえることになる。

なお、透明人間になる仕組みとして、藤子先生はきちんと読者に「透明になる」とはどういうことかを解説している。

三重内博士は言う。

「物が見えるのは光が跳ね返って目に入るからだ。ガラスみたいに光を通してしまえば見えないさ」

仕組みについては一切説明なしだが、透明の定義を明らかにすることで、透明になる薬にリアイティが与えられるのである。


透明人間は宝石強盗や現金強盗を働く。パーマンたちも二日間探し回るが、相手が透明なので捜索は困難を極めていた。

ところが、おなじく透明になっていた博士のペットのネコと犬が元の姿に戻る。博士はこの薬の効果が50時間しか持続しないことを忘れていたようだ。

透明人間となった男も、まもなく薬が切れる。おそらくその前に薬を奪いにくるはずと睨んだパーマンたちは、透明人間が来るのを待ち受けることに。


ここからは透明人間との戦い。挟み撃ちにしようとして、パーマンとパー子が抱き合う描写が萌える。

透明人間が寝室にいることがわかるのだが、姿は見えない。ここで逃げられたらもう捕まえられない。そこでパー子が妙案を出す。

部屋の窓とドアに鍵をかけて、ストーブを止めてクーラーをつける。本作は真冬に描かれたお話である。気温はグングン下がり、パーマンたちも寒さで震えてくる。

すると、ベッドの毛布が持ち上がる。寒さに耐えきれなくなった透明人間が、毛布を被ったのである。これで、姿が分かったので捕獲に成功するのだった。

VS.透明人間 → 透明人間は寒さに弱い


『こおりついたパーマン』「小学三年生」1967年11月号/大全集3巻

次なるヴィランは「アイスマン」。撃たれると凍ってしまう「れいとうピストル」を使って犯罪を繰り返している男である。

アイスマンは銀行に堂々と正面から入り、お客や行員を次々と凍らせてから、金庫で3000万円を盗み出す。パーマンとパー子は現場に急行するが、れいとうピストルを持ったアイスマンには近づけない。


大勢の警官隊がアイスマンの逮捕に動くが、全員返り討ちにあって凍ってしまう。パーマンたちも手を出せずにいると、アイスマンは用意してあったヘリコプターに乗って逃げていってしまう。

パー子は2号とパーやんを呼ぶが、パーマンは一人でヘリコプターを追いかけていく。隙をみて飛び掛かろうという魂胆である。ところが、雲の中まで追いかけていったところで、背後かられいとうピストルで撃たれてしまう。

凍ったパーマンはそのまま地上へ落下。すると、そこではたき火をしているみっちゃんとガン子がいる。凍ったパーマンをたき火で温めると、パーマンは起き上がる。アイスマンの銃で凍らせられても、温めれば簡単に溶けるようだ。


パーマンはこれにヒントを得て、ある策を練って再戦を挑むことに。そこへパーやんから呼び出しのバッチが鳴る。アイスマンのアジトは郵便ポストを入口にした地下にあることをパーやんは発見したのである。

パーマンはアジトへと入っていくが、ブービー、パー子、パーやんは全員アイスマンによって凍らせられている。アイスマンは、続けてパーマンにれいとうピストルを撃つ。

固まった・・・と思いきや、何ともないパーマン。そのままアイスマンをノックアウト。撃たれれてもすぐに溶けるように湯たんぽを体に入れておいたのだ。防弾チョッキならぬ、防弾湯たんぽであった。

VS.アイスマン → アイスマンは温もりに弱い


『砂男』「小学四年生」1968年5月号/大全集4巻

次なるヴィランは本稿では最大の強敵となる「砂男」。キラキラ光る砂をばら撒くのだが、この砂は人を眠らせるガスとなる。たった数粒でも眠ってしまう強い効き目だ。

なお、最初に書いてしまうと、本作ではパパの不眠症というサイドストーリーが並走しており、途中のギャグやオチに使われている。が、今回は対ヴィランについて書いていくので割愛。気になる方は本作を読んでみて欲しい。


砂男の犯行が続く中、パーマンたちは受け持ちの地域を決めてパトロールをすることに。夜のパトロールに勤めるパーマンは、

「みんなが寝静まった夜の町を一人行くパーマン。我ながらご苦労だなあ」

と呟きながら飛んでいく。なんだかカッコいい。


町の一角で大勢の警官たちが何者かに立ち向かっている。パーマンが近づくと、彼らは既に砂男の砂の餌食となっており、全員眠らされている。その先の銀行のシャッターが開いている。

シャッターの奥から、風を吹かせながら砂男が姿を現す。全身防護服に身を包み、頭の部分にプロペラが付いていて、そこから風を送り出す仕掛けとなっている。手に持った砂をその風に乗せて前方に飛ばして、向かってくる人間たちを眠らせるというわけだ。

パーマンに対しても眠る砂を飛ばしてくる。飛んでかわそうとするが、少しだけ砂を浴びてしまい、あっという間に眠りに落ちるパーマン。トドメを刺される一歩手前で、パー子とブービーに救い出されて難を逃れる。


砂男に近づくとすぐに眠らせられてしまう。よって、空高くから動きを見張るだけで手を出せない。砂男は警戒線を張っていた警官たちを眠らせ、パトカーを奪って逃走。パーマンたちは後をつけてチャンスを待つ。

砂男の運転するパトカーはトンネルの中へと入っていく。パーマンも追っていくと、暗く長いトンネルの奥にパトカーが止まっている。近づいていくと、それは砂男の罠。誘い込まれた形となり、眠る砂を浴びせられる。


ところが機転の利くパー子が、バッジを加えればガスを吸わなくてすむことに気がつく。砂が怖くなければもう大丈夫。パーマンは砂男に攻撃を加えるが、倒された砂男が手元にあった石を掴んで強風に乗せて飛ばしてくる。一筋縄ではいかない敵である。

この石の攻撃によって、パーマンたちのバッジは飛ばされてしまう。再び眠るガスに襲われるパーマンたち。慌ててトンネルの外へ出ようとするが、間に合わない。ガスを吸い込んで、3人とも無念、眠りについてしまう。

そこに近づく砂男。手には、とっておきの、一度かけたら永久に眠り続ける砂を握り締める。トンネルの中では、砂男の勝利の笑い声が響き渡る・・。


翌朝。奪われたパトカーを追って警察がトンネルにやってくる。砂男は砂を手にしたまま眠っている。どうやらパーマンが攻撃した際、ゴム服に穴が開き、そこから眠りガスが入ったようである。

間一髪、偶然を味方につけてパーマンたちは砂男に勝利したのであった。

VS.砂男 → 防御服に穴を開けろ!


前稿での狂わせる男に続き、透明な男凍らせる男眠らせる男との対決エピソードを見てきた。

毎回すんなり勝利とはいかず、一度退却したり、やられたりして、十分ハラハラさせた後に、ひと工夫を加えて何とか打倒する。敵は強いほど、ヒーローは光り輝く。毎回数ページの攻防ではあるが、その制約の中で「パーマン」の物語は、きちんと興奮を与えてくれる。

早いところ、パーマンの本格的なリバイバルを望みます!


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