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【1/2エッセイ】哲学を知ればアニメの面白さが倍になる。

✍️1/2エッセイ とは、エッセイ(実体験、思い)にコラム的要素(リサーチ)を足した私の造語です。独自の勝手解釈なので悪しからず。


(その前に……)

私が哲学の本を読むようになった経緯なんですが、答えよりも思考プロセスの方が気になり出したからなんです。

本屋さんに行くと最近は、

〇〇になるには〇〇するだけでよし
この一冊であなたも〇〇
〇〇で完結、〇〇術

などと即座的に解決するような「答え」があるものばかりだなと。

日常のライフハック的なものは、
それでいいかも知れませんが、

自分の内面に関係することに、
答えだけが用意されているものを見ると
考えることが軽視されているなぁと感じることも多く。

著者主観の自己啓発系の本も悪くはないけど、結局やってみないと分からない。

一時的に元気という「モチベーション」はもらえますがね。

自己啓発本がしっくり来なくて、
科学的エビデンスのある本を読む方が
私の性に合っていたのか
脳にスコンスコンと入っていったのですが、
それでも何かが足りない(自分に)

形は違えど結局、

科学的には〇〇だ、
という答えが書いてあるだけ。

著者主観の自己啓発系の本よりも再現性は高いものの、実践しないとうまく行くかどうかなんて分からない。

それより、なぜその仮説にいたったのか、

という思考プロセスの方が気になるなぁ、 と、思考法を辿っていったら哲学に行きついたわけです。

そして哲学を自分なりに学んでいく中で、
思わぬ副産物がありました。

哲学者の思考プロセスは

「答え」よりも「問い」が先。

問いの源は経験や知識。
答えに導く思考法は人によって多種多様。  

それは古代の哲学者たちの思考を覗き見れば分かる。

人が考えることって興味深い。

でも、これをアニメに転用したら
違った視点になるのでは?

と数年ぶりにアニメをイッキ見したんです。

それは、
芥見下々氏の「呪術廻旋」

子供の頃から耳馴染みのある声優さん方が出ているから、というのが見るきっかけではありましたが、

想像以上に哲学で驚いた、

というのが見た後の率直な感想です。

ここではストーリーを割愛しますが、
登場人物が放つ言葉に哲学的問いを感じて、敵味方問わず、

彼らの目的や大義に、決して二元論では語れない何かが存在している、「在る!」と感じたわけです。

生まれもっての才能や境遇に対する肯定や否定。

そから生まれるイデオロギーが
各キャラクターに存在して、
その観念形態が術式となっているのか、
と気づいた時には二週目に👀

横を通り過ぎ子供に「えっ、まじで」
のひと言をいただきました。

実際にどんな哲学ができのか?
印象に残ったセリフ三つとその裏側に感じた哲学を紹介します。

本当はイイねが押し足りないくらい
賞賛すべきセリフがありますが名残惜しくも、ここでは三つに✍️

とはいえ、私は哲学者ではありません。

趣味で哲学の本を読んでいる一端の者ゆえ、
専門家の方からしたら、
不十分な知識かと思いますが、あくまで、

セリフを多方向から解釈して、視座を変えるためのきっかけ(新たな気づきを得るもの)

として捉えていただけましたら幸いです。

また私の勝手解釈によるものですので、
作家の芥見先生との認識が一致しているとは限りませんことをお伝えしてから筆を走らせていただきます🖌️

もとい、
その『呪術廻戦』ですが、
単なるバトル漫画ではありません。
(少なくとも私には)

登場人物たちの言動には
なんとなく日常の根源的な疑問が込められているようで、私の思考をグーンと奥まで導いてくれたのです。

以下、印象に残っている哲学セリフたち。

哲学的セリフ①

「ねぇあんたはさ、魂と肉体、どっちが先だと思う?」
「肉体に魂が宿るのかな?それとも魂に体が肉付けされているのかな」

呪術廻戦(作:芥見下々)アニメ•第一期、
真人のセリフより

これは呪いから生まれた呪霊の真人まひとが戦う際に呪術師の七海ななみに尋ねる質問です。

ここで七海が答えたのは「前者」、
つまり、肉体に魂が宿ると。

ですが真人は、正解は後者であると言いました。

さらに、
『肉体の形は魂の形に引っ張られる』
と付け加えたのです。

端的に言えばこの真人は「魂と肉体の在り方」をサラリと言ってのけている。

ここからは私のひとり哲学ですが、

なぜに彼は魂の方が体よりも先、
と答えたのか?

それはきっと彼が「呪い」から生まれたから。

そして「呪い」が魂になり、
その魂に準じたカタチ、
すなわち肉体が出来上がったからだろうと。

となると私たち人間はその反対で、
肉体が先で魂が後。

だからゆえに人間は肉体を真っ先に意識するあまり「死」を怖いもの、恐れるべきもの、
と捉えてしまう傾向がある、

と思えたんですよね。

とソクラテスがこの作中にいたとしたら

そもそも「在る」ってなんだろう、

と問答されるかも知れない、
と想像させられた会話でした。

この真人という呪霊は慈悲深さがなくて残酷で嫌な奴なんですが、親に愛を与えられなかった子供のようで、同情してしまう節があるんですよね。

哲学的セリフ②

「“死んで勝つ”と“死んでも勝つ”は全然違うよ」

呪術廻戦(作:芥見下々) アニメ•第一期、
五条悟のセリフより

本作品の人気キャラクターで最強の呪術師、五条ごじょうが、自分の呪術の出し方、使い方に悩む生徒の伏黒ふしぐろに放つセリフであります。

更に彼はこうも言います

「本気でやれ、もっと欲張れ」と。

五条が先の質問を投げかけることで、
本当は大きな潜在的チカラを秘めているのに、完璧主義的な考えがそれを阻んでしまっている伏黒を

思考のフレームワークから連れ出した瞬間

のように思ったんですよね。

まさに、フランスの哲学者デルダの「脱構築」みたいに。

ただ死ぬことが目的になって何かを成し遂げるのと、目的の過程でやむを得なく死に至るのでは全く違う死生観がそこには在るんじゃない?

誰にだっていつかは必ず死が訪れんだから死を目的として何かを遂行するのは、ナンセンスじゃないの? それって君の本心? 

という五条のメッセージがあるようで、
怒ることもなく、かといって慰めることもない、

ただ問うことで生徒の気づきをサラリと促す彼の存在は、フィジカルな強さだけでは語れないインパクトがあると感じてなりませんでした。

哲学的セリフ③

「そういう小さな絶望の積み重ねが 人を大人にするのです」

呪術廻戦(作:芥見下々)アニメ•第一期、
七海建人のセリフより

そして最後、先にも出てきた呪術師の七海が主人公の虎杖悠二と共闘するシーンで放ったセリフ。

彼の言うように
小さな絶望は日々起こっているのです。

あ、思っていたこととは違ったなぁ、

そんな現実。

けれど、その小さな絶望によって今ある幸福を知ることができる。

つまり絶望は確かにがっかりするけど、
不幸ではない

ということ。

無理にポジティブに考えるよりネガティブを受け入れることが、小さくてもずっと続く幸せを手に入れられる。

そんなペシミスティックな考えあってこそ、真の大人に近づけるのかも、
なんて思わされた七海のセリフでありました。

彼はキャラクターの中でも冷静沈着で、
人の孤独さをどこか受け入れている。

けれども真の幸せの理解に近づこうとする姿はどこかドイツの哲学者、ショーペンハウアーのようで、彼の精悍な顔つきが物語っているように思えました。

人気な作品には必ず理由があります。

でもそれは、売れる原理原則に読者が突き動かされているというより、作品に存在する哲学に突き動かされている気がします。

だからゆえに、
いいなぁ、と思った作品に出合う度、
作家の方の思考回路に興味が走ってしまうわけです、今回のように。

呪術廻戦を視聴中も、

キャラクターたちの思考の裏側が気になりながらも、

彼らを生み出した芥見下々先生の思考の源にはどんな哲学や信念存在しているのだろう?

と気になっては三週目に突入していました。
さすがにこの時ばかりは子供もスルーでした。

話はもどり、
刺さる言葉にはきっと作家の方々がこれまで人生で問うてきた「問い」が少なからず存在しているだろうし、

読者の視座をセリフによって一瞬にして
変えることができる作家こそ
特殊技能の持ち主だと思えてなりません。

ある意味、「術式」です。

そんな多角的な思考法に自分もなりたいと、普段意識している思考スタンスがあります。

これは自分用にまとめた思考MAPです。

©️2024しゃろん;

これら三つの基本思考スタンスに哲学的問いを加えると、

段々と見えなかったものが
見えるようになってきました。

霊的な意味ではありません、
哲学的な意味です。

そう思うと哲学の探求は簡単ではないにしろ、
決して退屈なものではありません。

それに思っているより
難しいものでもありません。

人の話でも、漫画やアニメ、小説でも、
物語を通して日常の中に隠れている「問い」を見つけ出し、新たな視点を得るのは何とも楽しいものです。

秩序化されていく世を見ていると、
濁り一つない世の中になろうとしているようで、どこか抗いたくなります。

だから、人間臭さとか
人間らしい何かに惹かれるのかな、

なんて思うこの頃です。

久方ぶりにアニメに足を踏み入れて、
日本のポップカルチャーの質の高さに驚き、今はドラマよりアニメ派になっています。

原作者、制作者、演者の方々の想いのかたまりが詰まっていて、アメリカに住んでいるせいか、

「日本のアニメーション、凄いでしょ」

と誇らしくなっています。

さて、長くなりましたね。

そんな私のながーい呟きにお付き合いいただきまして、本日もありがとうございました。

それから
哲学を学びたいけど、
いきなり分厚い難しい哲学書はムリ!

という方に、初心者用の哲学の指南書になる本を明記しておきます。

哲学を知らない人がいきなり特定の哲学者の本を読むことは、地図なしに広大な樹海を進むようなもの。

そうではなくて、まずはざっくりでも、各時代の代表的な哲学者を知って、簡単な思考MAPが頭の中に浮かぶようになってから、気になった哲学者に触れることをオススメします。

新たな一週間もあなた様にとって
有意義なものとなりますように。

しゃろん;

📚ライフログ読書📚
📖「世界が面白くなる! 身の回りの哲学」(著:小川仁志)あさ出版

📖「その悩み、哲学者がすでに答えを出しています」(著:小林昌平)文響社

📖「超訳 哲学者図鑑」(著:富増章成)かんき出版

📖「史上最強の哲学入門」(著:飲茶)河出書房新社


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