見出し画像

1年間インターナショナルスクールで働いてみて感じたこと

かれこれ1年ちょっとインターナショナルスクールに勤めさせてもらっている。何かと貴重な経験をさせてもらっているので、忘れないうちにインターナショナルスクールでの経験をまとめてみようと思った。働く側から「インターナショナルスクール」というものがどのように目に映るのか。もちろん、インターナショナルスクールによって感じることは異なるだろうが、ひとつの意見というか指標みたいなものとして、残してみたい。

〜子どもについて〜

①幼稚園児の英語力は特に伸びる

インターナショナルスクールに通う子どもたちは文字通り「英語漬け」にされる。専門用語的には「浸す」という意味の"Immersion(イマージョン)"教育とも表されるほどで、朝から晩まで英語を使うような環境に置かれる。そんな環境にいればある程度英語の表現ができるようになるもので、文法が正しいかどうかはともかく、いわゆる「伝わる英語」を4歳くらいから本格的に話すことができるようになってくる。

学校外の日常生活では日本語を使うのが当たり前のこの日本という国において、4歳くらいにして母語とそれ以外の言語の使い分けがある程度できることは、すごいことに感じた。

もちろん、子どもたちがインターナショナルスクールの学校生活において母語である日本語を使ってしまうこともある。それもそのはずで、小学校未就学児は母語を使いたくなってなんぼの年齢だ。だが、そこを私たち日本人教師がサポートすることで、だんだん新しい表現を覚えたり、英語を使うことに自信を持つようになってくる。

小学校に上がる前の4−6歳の英語の伸びは、目を見張るものがある。もちろん子どもたち自身の英語に対する得意・不得意も関係していることではあるが、外国人スタッフの教え方も上手で、子どもたちが楽しむことを第一にサークルタイムや英語の活動を展開している。その点はけっこう教える人の技量にかかっている部分があるので、子どもと先生の相性が合致すると、そのシナジー効果は凄まじいものがあるだろう。

②小学校以降の子供たちの英語力

幼稚園時代から英語漬けにされてきた子どもたちが初等部や中高等部にやってくるのだが、子どもたちの英語を見ていると幼稚園時代よりも英語力の差が大きくなってきていることに気がついた。母語が話せるようになる前からインターナショナルスクールで英語漬けにしても、日本人的発音になる子はなるし、海外の同じ年代のレベルには全然至らないなと感じる。反対に、英語が好きな子や英語が得意でハマった子は自ずと成長しており、ずんずんレベルアップしている様子だった。結局のところ、言語の成長はその子がどれだけその言語に愛着や興味を抱けているかが問題なのだろう。

加えて、語彙力が高い子は必ずといっていいほど読書をしている。そして、本を読む子は文章が上手に書けている。まあこの辺は日本語でも同じなのかもしれないが、英語を中心としたインターナショナルスクールでも似たような傾向が見られた。

③子どもたちが遊ぶ時間は十分なのか

英語の学習や活動を通じて英語力が伸びるのはけっこうなことだが、そこに時間と労力をかければかけるほど失われていくものもある。

インターナショナルスクールに勤め始めたときから感じていたこととして、「子どもが遊ぶ時間」が少ないことが挙げられる。これはインターナショナルスクールによって差異が出る部分かと思うが、私が勤めている学校は学習に割く時間がとても長い。だからほとんどの時間を「椅子に座る」か「英語の活動をみんなとする」時間に充てられる。

子どもたちが自由に遊ぶ時間といえば、午前中の30分とご飯を食べたあとの30分。ご飯を食べる時間が遅い子どもたちは自動的に午後の遊ぶ時間がなくなってしまうので、ほとんどの子が学校生活において1時間も遊んでいない。これはさすがに少なすぎではないか。

小学校に上がる前の年代が、これほどまでに机に向かったり学習をしなければならないのは、はたしてどうなのだろうかとよく疑問に思う。自由な遊びから生まれる発想もたくさんあるし、あちこちをかけまわって身体が刺激され、脳の発達も促される。自由な遊びから友だちとぶつかることもあるが、そこから学ぶこともたくさんある。そんな点を無視しているのか、はたまた見えていないのかはわからないが、「机に向かう」以外にも子どもたちにとって大切なことはたくさんあるように思える。

〜働く大人について〜

①上下関係があまりない

英語を中心にスタッフ間の会話が進むせいか、あまり上下関係みたいなものはない。思ったことは誰しもが意見するし、だからディスカッションなどは盛り上がりやすい。それに誰しもが意見を求めらる環境なので、各個人がはっきりとした考えを持っているのはいいことのように感じる。

②日本人スタッフどうし、外国人スタッフどうしの繋がりの強さ

言語のせいか何が理由か、スタッフの中でも日本人どうしの繋がりはやはり強いし、外国人スタッフどうしの繋がりも同じくらい強い。もちろん、日本人スタッフと外国人スタッフの間に軋轢あつれきがあるわけではないのだが、「深いところの話」をするとなるとそこには言語の壁がそれなりにある。だから、心がつながるレベルの話し合いができているかどうかでみると、そんな分かれ方をしている。私も日本人だからか、日本人スタッフを頼っている節がある。外国人スタッフもそんなことを考えているのかも?

③息抜き上手の外国人スタッフ、机にしがみつく日本人スタッフ

デスクにしがみついている日本人スタッフに比べて、外国人スタッフは適度に個人的なレベルの会話を楽しみながら仕事をしていると感じる。

外国人スタッフと顔を合わせると、必ず「Hello, how are you?」「How was your weekend?」など簡単な挨拶文から始まる。そしてこれら定型文が、身の上話に発展する。一方、日本人スタッフとは「おはようございます」からの話の進展がない。お互いに興味がないのか、会話に普遍性がないからなのか、とにかく会話はキャッチボールではなく、一方通行のパスで終わる。何気ない会話が仕事の中の息抜きになっているのだが、それが日本人スタッフからはなかなか生まれてこない。

まじめに仕事に取り組めるのは素晴らしいことだが、どこかのタイミングで息抜きくらいして欲しいものである。以前、「雑談は人間関係を構築する」という話を聞いたことがある。外国人スタッフはそれを実践しており、外国人スタッフ内ではある程度協力して仕事を進めている様子が見られる。意外にも、日本人スタッフの方が個人プレーが多いのだ。だからかだろうか、事によっては外国人スタッフとの方が仕事がしやすかったりする。

まとめ

まあ先述した通り、この話はどのインターナショナルスクールに所属するのかによっても変わってくる。なのでこの話を鵜呑みにはせず、「そんな話もあるのか」くらいに捉えてもらえたら幸いである。働く場としての「インターナショナルスクール」にも一長一短あり、子どもとしての「インターナショナルスクール」にも一長一短がある。だからぜひ、「インターナショナルスクール=すばらしい教育環境がある」とは考えず、自分の働きやすさや子どもの幸せを考えて決断をして欲しい。

2022.12.23
ShareKnowledge

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?