【アップサイクル話vol.1】「その茶殻は、もはや食品ロスではなく、『貴重な食材の一つ』だった。」〜株式会社みなも園部氏〜
こんにちは!シェアシマ広報担当です。
このnoteでは、私たちのパーパスである ”大切な食資源を活かす”をテーマに、あらゆる人・コミュニティ・企業にインタビューをしています。今回は、フードコンサルタントとして、食にまつわる多岐にわたる事業を展開する株式会社みなも 代表取締役の園部さんと、当社代表・小池による対談です。
茶葉から生まれる新たな味わい:緑茶カテキンカレー誕生物語
小池:園部さんの現在の活動と、開発されたアップサイクル商品のお話をうかがえますか?
園部:私は現在、株式会社みなもの代表として大阪を拠点に[食]に関わる事業展開をしています。もともと17年前、大阪•北新地で 和食料理のお店を立ち上げました。以来、ずっと料理人をしながら食にまつわる現場に立ち続けています。
アップサイクル商品を作ったきっかけは、10年ほど前に出会った鹿児島県大隈半島で採れる有明茶。生産者さんから「お茶には、アレルギー反応を抑える効果があるんだよ」と聞いてから、私自身アレルギー持ちだったため有明茶を飲み続けてみたんです。すると、アレルギー症状がどんどん緩和されたのです。それがきっかけで 「お茶についてもっと詳しく知りたい」と思い、栄養素や効能について専門家に詳しく聞くようになりました。
” お茶は医者いらず ”とよく言われますが 、 飲料のお茶には、茶葉本来が持つ効能の約30%しか抽出されていないのです。 残りの約70%は、じつは捨ててしまう茶殻に残ってるんですよ。アレルギー症状が緩和された経験から、「わずか30%の摂取量でも症状緩和に役立ったのだから、のこり70%も余すことなく活用できたら、もっとお茶の効能を引き出せるのではないか?」そう考えました。
それから、茶葉をもっと取り入れやすくするためのレシピ開発をはじめます。最初は、生産者さんにレシピを作って送るところからスタートして、やがて輪が広がりJAあおぞらとつながります。ある日、JAあおぞらさんから「製造工程で出た茶葉を、園部さんのところで加工品にできないか?」といったご相談がありました。それで、茶葉を活かしたアップサイクル商品「緑茶カテキンカレー」を考案したんです。お茶って、68度以上加熱すると”渋み”が出るんですね。その”渋み”を活かしてスパイスに使えないだろうか、という発想を元にレシピ開発をはじめました。お茶には独特の渋みがあるので、香辛料を抑える代わりにその渋みを生かしました。見た目は完全な緑、グリーンカレーのようなイメージです。味は、緑茶の風味を生かした和テイストのカレーとなっています。
小池:残った茶葉から緑茶カレーを作るとは、これまた斬新ですね!カレー を食べた後の体の変化や 、食べていただいた消費者の声はありましたか?
園部:じつはこの緑茶カテキンカレー、約60%が茶葉で作られているんです。結構な量ですよね。一般的に、お茶で必要な栄養素を摂るためには一日300回以上飲まないと栄養過多にはならないと言われています。300杯飲むよりは、緑茶カレーを食べたほうが、手軽に栄養素を摂ることができます。ちなみに私、市販カレーを食べるとたまに胃もたれしてしまうことがありますが、この緑茶カテキンカレーは食べ過ぎた翌日も、全然しんどくないんですよ。
そのワケは、調味料の使用量を極力抑えているためです。調味料を多く使った味の濃い食べ物は、体内に添加物が残りやすく、それが身体の不調につながります。けれど茶葉60%を配合し、食材が本来持つ味を生かした緑茶カレーは、天然に近い食材をふんだんに使っているため身体への負担が少ないんです。お気に召された方は、来店するたびに買って帰ってくださいますね。
「もったいない。」これがきっかけで、食材の良さをもっとうまく活用できないか?そんな意識から開発されたのが、この緑茶カテキンカレーです。これ以外にも、柑橘の皮・ホタテのヒモ・サザエの肝部分とか、全国各地から「これどうしたらいい?」といったものが私の元に届きますね。
母からの教え:食品ロスをチャンスに変える
小池:捨てられてしまう茶葉を活かしたいという想いからアップサイクル商品ができたのがわかりました。そもそも園部さんはなぜ、 食ロスに着目されたのですか?その前段で”食品ロスに関する 課題意識”みたい なものがおありだったのかなと。
園部:これは料理人になったきっかけでもありますが 、元々私の母が大根やにんじんの皮とか 、いわゆる食品残渣を生かした家庭料理をしていたんです。ただ子供の頃は、正直「美味しい」とはあまり思えていなかったんですよね。煮込み料理のなかに、肉だろうが魚だろうが、なんでもぶち込む豪快な人でしたから。お肉を食べているのに、なぜか魚の骨が口の中でつっかえるみたいな。ただ、そんな母の姿勢がきっかけで、食に興味を抱くようになりました。「もしも私だったら、魚の骨が余ったら骨ごと乾燥させて粉末状にして料理に入れるかな」とか、もしも自分だったら?を色々と思考するうちに、料理人の道へと進んでいきました。
食品ロスって言葉だけ聞くと、マイナスなイメージがあるかもしれないし、「わざわざお金を出してまでは・・」と思う方も多いかもしれません。ただ、マイナスとマイナスのものを足していけばプラスに転じることもあるし、緑茶カテキンカレーのように食品ロスの食材でないと出せない味もあります。ですから私は、食品ロスと言われる食材も、もはや食品ロスではなく『貴重な食材の一つ』だと思っています。逆転の発想で、この食材を選んでみたら、それがたまたまそれが食品ロスと言われる食材だった、という感覚なんです。
シェアシマと料理のプロが描く、持続可能な食の世界
小池:これってまさに、我々にはできないことですよね。 Webを通じて食品メーカーと広く繋がりを持つのは当社の領域ですが、料理人である園部さんだからこそ、できることがいくつもあるなと感じます。例えば、栄養素に関する知識だったり、食材を活かす調理方法だったり。
さっきの園部さんのお話って、一次産業の課題がメインですよね。「この素材をいかに美味しく調理して、ムダをなくすか?」といったような。 シェアシマの場合は、一次産業ももちろんですが、メインに扱うのはすでに加工されたもの。だから解決する領域が違うんです。ただ、シェアシマの会員さんから上がってきた相談ごとに対して、園部さんが解決できそうなものであれば、横展開させてもらうこともできますよね。つまり、シェアシマ内にとどまらず、生産者にとって相談・解決の間口はより広い方がいいということです。
園部:おっしゃる通りです。 小池さん率いるシェアシマチームの中に、ある意味私というプロの料理人としてやっている人間が開発チームにいる、といった感覚でいていただけると可能性が広がるかもしれません。逆に私は、小池さんがやられてるようにビジネスにつなげるというのは苦手なんですよ。
小池:我々としてはやっぱり、シェアシマを通し て、一人でも多くの方に食品ロスの課題を知ってもらいたい。そうした中で、園部さんのような活動をされている方がいるということが、世の中に広く認知されればいいなと思っています。せっかくビジネスとしてやるならば、それぞれの得意な領域の中で、みんながみんな笑顔になれる方法を考えたいですよね。目指している場所は、”大切な食資源を活かす”ことにつながるので、共通する部分が多くあると感じます。
食の共創:大切な食資源を活かす取り組みを広げる
小池:ほかに現在取り組まれていることがあれば教えていただけますか?
園部:今年7月から、「一般社団法人|栄養まるごと推進委員会」理事に就任させていただきました。野菜や果物の皮に隠された栄養を余すことなくいただくことを目的に、食品ロスのための活動を多岐にわたって展開しています。私個人の活動ともリンクしたので、ここに携わっています。
例えば、子ども達が毎日食べる学校給食。この学校給食において、栄養価を余す事なく食べる「栄養まるごと給食」活動を実施しています。最近だと、子どもの野菜嫌いをなくすためにはどうしたらいいのか?という相談から、野菜嫌いな子でも食べられるレシピを考案しています。例を挙げると、嫌いな野菜に代表的に挙げられるにんじんを、隠すのではなくまるごと一個メインに使った料理だとか。ネギを使って料理にかけるソースを作ったりだとか。
それらを、学校給食に採用してもらったりしています。
小池:とてもいい取り組みですね。今後お互いにとって、より良いところを共有し合いながら一緒に共創する道なども模索できたらいいですね。
園部:そうですね。「食材の話が来たら、株式会社みなもの園部に振れば必ず答えが返ってくる」そんなイメージを持っていただけたら嬉しいですね。そのためにも、シェアシマさんのような企業とも広くつながりを持ち、もっともっと商品開発に専念していければ幸いです。
小池: 当社も目指すべきゴールは同じなので、ぜひ協力し合いながらやっていきましょう。今度大阪に行った際には、園部さんのお店に立ち寄らせてください!
いかがでしたでしょうか?
私たちは、これからも”食”を起点に、さまざまな人・コミュニティ・企業とつながります。今後の記事も乞うご期待!