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大阪会議 ~やってよかった!具体的施策 ②~

ここまでの流れは、以下の記事をご覧ください。

異次元⁉ 少子化対策 大阪会議

大阪会議  ~やってよかった!具体的施策 ①~

その①では、「福祉」がキーワードの具体的施策を紹介してきました。

お手紙共有許可をいただきました

「福祉」の施策をいくら行っても対症療法にすぎないことが多く、根本解決に必要なのは「教育」施策です。

「こどもの意見を聴く」と言いますが、そもそも言葉がわからないと、何を伝えたらいいかわかりません。

言葉による見方・考え方を働かせ、言語活動を通して、国語で正確に理解し適切に表現する資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
⑴ 日常生活に必要な国語について、その特質を理解し適切に使うことができるようにする。
⑵ 日常生活における人との関わりの中で伝え合う力を高め、思考力や想像力を養う。
⑶ 言葉がもつよさを認識するとともに、言語感覚を養い、国語の大切さを自覚し、国語を尊重してその能力の向上を図る態度を養う。

小学校学習指導要領 国語科 目標

日本の福祉は「申請主義」なので、申請をした人が制度につながります。

申請をするには書類が必要なので、日本語が読める・書けるが大前提です。

制度を知るには、調べるチカラも必要です。

教育には、人をエンパワメントするチカラがあります。

福祉施策だけを行っても効果は出ません。
教育施策を同時に行うから効果が出ます。

その②では、教育を中心に具体的施策を紹介させていただきます。

多様な学びを確保する

✅オルタナティブスクール

オルタナティブとは
(主流な方法に取って代わる)新たなもの、代わりとなるもの

画一的な教育ではなく、自律的・主体的に学習や行事が展開されるようにカリキュラムが組まれていることが多いです。

約20年の実績があり、ユネスコスクール の認証を受けている 箕面こどもの森学園 をぜひ参考にしてください。

✅フリースクール

文科省HP

✅不登校児童生徒が通信制・単位制高校で同じ授業を受ける

茨木市は 学校法人早稲田学園 向陽台高校 と連携協定を結んでいます。
不登校児童生徒は、向陽台高校の講座を受講することができます。

「ロボット初級」
「馬を知ろう」
ぱかぽこ広場
ドローン
キャッチコピーを学ぼう
メタバース教室で鑑賞しよう
向陽台高校の理念

向陽台高校の取り組みは、文科省「多様性に応じた新時代の学び充実支援事業」の委託事業です。

茨木市HPより

不登校・いじめ・自殺

文部科学省も厚生労働省も、子ども・若者の自殺防止に向けた取り組みを強化しています。

多様な学びが広がっていて、不登校・いじめ・自殺対策を国は進めている。
でもなぜ結果が出ないのか?

教育の根幹が変わっていないからです。

学校教育法
第一条 この法律で、学校とは、幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校とする。

オルタナティブスクールや、フリースクールは学校教育法で認められていないので、学校として認定することのハードルの高さが前提にあります。

加えて、出席の取り扱いは校長判断に委ねられているので、地域によって対応がバラバラなのが実情です。

出席扱いの要件
個別指導等の適切な支援を実施していると評価できる場合、校長は指導要録上出席扱いとすることができる。
(一部抜粋)

義務教育段階の不登校児童生徒が学校外の公的機関や民間施設において相談・指
導を受けている場合の指導要録上の出欠の取扱いについて

1947年(昭和22年)に施行された学校教育法が、今の子どもに合っていないのです。枝葉の対策をいくらやっても事後対策にしかなりません。

全ての子どもに、教育の機会が確保される必要があります。

そのために法律もできたはずなのですが、「出席」として認められないと進学につながらないので、絵に描いた餅でしかありません。

東京都教育委員会の子ども向け資料がわかりやすいです。

令和4年11月 東京都教育委員会 デジタルリーフレットより
令和4年11月 東京都教育委員会 デジタルリーフレットより

性・生教育 生きる教育

「暴力を言葉に」
「生い立ちを誇りに」

暴力・貧困・いじめ・不登校・非行・自殺…

様々な課題の根本解決に向けて、大阪市立生野南小学校(2022年4月より田島南小中一貫校)で約8年間「授業の力を信じる」と、学習指導要領に抵触しない内容で授業が行われてきました。

結果が出ました。

ポイントは「国語科教育」と「性教育」の2本柱で、子どもたちの現状に即した独自のプログラムを開発してきたことです。

大阪市立生野南小学校 本校の研究
2022年度(令和4年度)より、田島南小中一貫校になりましたが、研究は小中一貫の9年間のプログラムに引き継がれ、更に充実しています。

京都大学 教育学研究科 教育学環専攻教育・人間科学講座 教授 西岡 加名恵さんがまとめてくださっている書籍もあります。

『生きる』教育

【国語科教育】

心を育てる国語科教育

国語科教育は、全ての課題解決に必要な土台です。

自分の心を伝える言葉・文脈がわからないから、自分と相手を傷つけます。

生野南小学校の授業を通して感じた、印象的だったエピソードを2つ紹介させていただきます。

✅小4で習う「ごんぎつね」

複雑な長文が初めてなので「起承転結」の全体を理解することも目的の一つですが、流れと単語が理解できて、登場人物のセリフと心情も整理できないと、話についていけません。

ごんぎつねは、情景や心情を現代っ子の小4が理解するには複雑なので、「この時、どんな気持ちでしたか?」と質問をされても、物語自体を理解できていないと人の心は理解できないので、理解できるように教え方にも工夫が必要です。

✅まずは「型」で教える。

子どもは、年長者を見て・学びます。
言葉は、誰かが話しているのを聞いて習得します。
暴言は、周りの大人が使っているから、同じように使っているだけです。
「そんな言葉を使っちゃダメ」
正論で言われても、家でもっとひどい言葉を投げつけられている子もいます。

傷つけられているのに、「友達にやさしくしましょう」子どもに指導をするのは、大人の理想の押し付けです。

(心の取り扱いについては、第1巻に詳細が書かれています)

友達が意見を言った時に、自分が大人から言われているような否定の言葉が無意識に出てしまうので、「型」から始める。

大阪市で「性・生教育」として位置づけられ、大阪市会は内閣総理大臣宛てに「性教育の充実を求める意見書」も提出しています。

生野南小学校では3年生で「子どもの権利」についてしっかりと学びます。

権利について学んだ子どもたちは、自分は守られるべき存在なのだと気づきます。
一人一人が大切な存在なのだと気づきます。

そして、自分の権利が守られるためには、相手の権利を守る必要があることにも気づきます。
そのために果たすべき義務があることにも気づきます。

【子どもの権利って?】 政府は『こども家庭庁設置法案』を2月25日に閣議決定しました。 議論にあがっている子どもの権利と子どもの意見表明を、徹底的に追及してきた大阪市立生野南小学校🌸 「現場を見に来てください!」の叫びに(笑) 応えて...

Posted by 辻 由起子 on Saturday, March 5, 2022

9年間のプログラムの最後は「児童虐待について考えよう」です。

子ども以上。大人未満。
子どもたちの意見をぜひ読んでいただきたいです。

調整が整わず総理大臣に手渡すことはできませんでしたが、関係する大臣・副大臣・政務官に手渡すことができました。

生野南小学校(現・田島南小中一貫校)は、文部科学省「生命の安全教育」モデル校に指定されています。

家庭支援・小1プロブレム解消

未就学児の間は、身辺自立を幼保園が支えてくれますが、
小学校に上がった途端にサポートが一気になくなります。

生活習慣が整っていないと、学校生活にうまくなじめません。

学校で椅子に座って先生の話を聞く前に、

ノートの書き方がわからない。
板書の仕方がわからない。
わからない間にみんなは先に進んでしまう。
面白くないから違うことをする。
「ちゃんとしなさい」と言われてもやり方がわからない。

そこでエプロン先生の出番です。
小1の4月の1ヶ月、地域のボランティアさんが1クラス5人程度入り、
子どもたちをサポートします。
(空いている時間に、入れる人がシフトを組んで入ってもらうので、それほど大きい負担はありません)

先生は教えることに集中できます。

休み時間は「遊んで!」とひっぱりだこです。

学力は「アウトプット」つまり、話すことで身についていくので、
休み時間に「聞いて、聞いて!」と、子どもたちがアウトプットする内容を、エプロン先生がしっかりと受け止めてくれます。

給食と掃除の時間が、本領発揮です。

家庭の文化は食卓に出ます。

「食」は生きる基本なので給食も一緒に食べます。
一緒に食べることで、家庭の様子が見えてきます。

アウトリーチをしなくても、小1の4月のタイミングは、
全家庭とつながれるチャンスです。

地域の人もつながる事ができます。

まちで子どもたちが「エプロン先生!」と声をかけるので、
多世代交流も生まれます。

教育基本法
(家庭教育)
第十条 父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有するものであって、生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努めるものとする。
2 国及び地方公共団体は、家庭教育の自主性を尊重しつつ、保護者に対する学習の機会及び情報の提供その他の家庭教育を支援するために必要な施策を講ずるよう努めなければならない。

アウトリーチ

内閣官房
こども向け資料より

こども・若者の声は、待っていても聴こえてきません。

✅LINE相談 ユキサキチャット 

日本は「世帯単位」の原則のため、世帯主に支援がいくため、
親や保護者を頼れない若者には支援が届きにくいです。

大学生の2人に1人が、奨学金を受給しています。
生活費をアルバイトで工面している学生は、コロナで仕事がなくなり、
生活困窮状態に陥りました。

固定費の高い家賃を払わないと住所を失うので、家賃、スマホ、電気・ガス・水道代を払った後は、食事をガマンするしかありません。

ユキサキ支援パック

家賃が払えない・頼れる保護者や親族がいないと、
あっという間に路上生活に陥ります。

✅グリコ下(通称:グリ下)
アウトリーチ

未成年者を保護者に無断で家に泊めると、状況によっては未成年者略取誘拐罪などに問われるおそれがあります。

家庭に暴力があると、逃げる場所がありません。
社会のルールが子ども・若者を闇に追いやっています。

若者が社会に絶望し、未来に不安を抱くのは当然です。

元ヤングケアラーからのメッセージ

「アウトリーチ」

事業計画に書くのは簡単ですが、実際に動くにはとてつもないマンパワーが必要です。

相談体制
▶️ SNS必須
▶️ 人 (質・人数・人件費の確保)
▶️ 時間 (学業・バイト以外の時間に相談がある)
▶️ 継続的な関わり (相談員が変わると信頼関係が築きにくい)
▶️ 社会資源 (つなぐ先がないと解決しない)

子ども・若者の相談は多岐にわたります。

相談内容の主なカテゴリー
▶️ 友人関係
▶️ 学校関係
▶️ 部活関係
▶️ ネットトラブル
▶️ 金銭トラブル
▶️ いじめ
▶️ 学業
▶️ 進路
▶️ 経済的な悩み
▶️ 家庭問題
▶️ 児童虐待

学校、家庭、役所、民間…どこか一つで解決できるケースの方が珍しく、
関係する機関・人がタッグを組んで「重なり合う支援」をしないと解決しないケースばかりです。
それも継続的に。

ヤングケアラーにしろ、子どもの貧困にしろ、そもそも大人の課題を子どもが抱えてしまっているので、ほんの数回の関わりで魔法のように解決することはありません。

今あらためて。政策キーワード【居住福祉】

『住居は人権 福祉の基礎』

早川和男・岡本祥浩『居住福祉の論理』東京大学出版会、1993、P11

コロナが招いた福祉崩壊。
しんどい人が、よりしんどい状況に置かれました。

若年ホームレス状態を例に、解説させていただきます。

【若者ホームレス状態 増える理由】

仕事がなくなると、固定費の高い家賃が払えなくなるので、あっという間にホームレス状態になります。

支えてくれる身寄りがあれば、なんとかなりますが「助けて」と言える相手がいないと、あっという間に人生詰みます。

✅家賃だけではなく、ライフラインも滞納していく。

✅スマホがないと学業・就職活動ができないので、スマホの支払いが最優先。

✅面接に行く交通費すらなくなる。

✅仕事が見つかっても給料の支払いが1ヶ月後だと、更に滞納が増える。

✅食費を削り、病院に行くのを控えるので、心身ともに疲弊していく。

✅見た目を保たないと面接に辿り着かないので、服装は整っている。
メイクやネイルもしている。
道具は100均で揃うので、困っているようには見えない。

✅頼れる大人が身近にいないと、保証人や連絡先を書けないために就職できないこともある。

✅就職できない空白期間が長引くと、面接で不利になっていく。

✅更に支払いがたまっていく。就職したとしてもマイナスの支払いからスタートなので、プラスになるのに時間がかかる。

実務として。

✅不動産契約。役所手続き。各種住所変更手続き。保険。年金。郵便局。銀行口座。ライフライン解約・契約。書類、書類、書類の山。

引っ越し・家具・家電、設置&買い替え。

平日昼間にしかできない事も沢山あるので、仕事を休まないといけない。なかなか安定しない。

社会に出たばかりの若者が誰にも教えてもらわず、一人でやるのはムリです。

「頑張れ」「自己責任」と、努力根性論を押し付けるのは浅慮です。

若者が安定した仕事に就職できない → 納税者が減る。
若者が心身ともに疲弊する → 恒久的な社会保障費の増加。

社会全体の不利益につながるので、若者の居住支援と就職支援を手厚くした方が未来につながります🍀

支える側が仲良くなる

「民」が「官」をひっぱってきた歴史・風土のある大阪で、制度にないことをつくってきた私たち💪

民民連携 & 官民連携が得意で10年単位で現場をつくってきました。

民間、行政、マスコミ各社、政治家全党、企業…
みんなで一緒に何をすれば効果的か考えます😊

支える側が仲良くないと、支えることができません。

同じゴールを目指す者同士、めちゃくちゃ仲が良いです。

それぞれ、得意分野が違います。
それぞれ、できることは限られています。

役割が違うので、それぞれの役割でできることをタッグを組んで最大限活かしています💪

課題

✅こども家庭庁は「こどもの意見表明」「こども・若者の声を聴く」と謳っていますが、国語を習っていない未就学児の声を拾うのは限界があります。

就学してから周りの大人に伝える機会が増えるので、文部科学省との関わりがないと、絵に描いた餅で終わります。

学校を中心に考えると、地方自治体は教育委員会との連携がないと効果を発揮しません。

内閣官房資料より

✅縦割りがつながりを分断していくので、法的根拠、省庁の縦割りを打破していく。

✅対応をしている間に「こども」が「大人」になるので、スピード感をもって柔軟に取り組む。

✅命を年度末で区切ることはできないので、予算・事業・人を年度末で途切れさせない。5年~10年単位で取り組む。

✅「仕組」「制度」も大事だけれど、「人」も大事。
制度や社会資源を熟知した「人」が、制度や仕組みを活用できる。
いくら立派な制度をつくって予算をつけても、運用するのは「人」なので、「属人的」な関わりも必要。

居場所も同じ。
「場」も大事だけれどそこに居てる「人」に会いたくて来る。

✅書類改革が国民を救う。

日本の福祉は「申請主義」なので、書類を用意して受理されないと制度を利用できない。

制度にあてはまらないと救われない。

制度の切れ目は「人」でうめるしかないのに、書類に手間を取られると動けない。
動ける人を増やすためにも、時代に合っていない書類は変える。

ほんの一例。
妊娠~育休復帰までの手続き。

厚生労働省 育休復帰支援プラン策定のご案内より

✅そもそも貧困から抜け出せない仕組みになっている。
所得制限の見直し。

「ひとり親」「児童虐待」「ヤングケアラー」「子どもの貧困」「奨学金」

政府が「こども」に関して対策をしている、様々な課題を抱えた高校生が、大臣にプレゼンしてくれたスライドがこちらです。

「支援」メニューをつくると、制度を知っている人にしか届きません。
そして、繰り返しになりますが、制度にあてはまって、書類を申請した人しか恩恵を受けることができません。

貧困の連鎖は国がつくっています。

制度では救われなかった彼女が、「重なり合う支援」で自分の道を歩み出しています。

お手紙共有許可をいただいたので紹介させていただきます。
(「ゆきさん」と書かれていますが、私だけではありません。
高校の先生、市役所、地域の皆さん…様々な「人」に支えていただきました)

ゆきさんと出会えて人生がガラッと変わりました。

自分の考えを尊重してくれて、否定をしないで認めてくれる。
それ自体が初めてでした。

今まで自分の生きてきた環境では味わえなかった幸せを感じてます。

人とのつながりを教えてくれて、ありがとうございます!!

私の周りからは「性格変わったな!!人間らしさが出てきたな!!」ってよく言われます(笑)

本当に、言葉では表せないぐらいの感謝をしています。

ゆきさんが生まれてきてくれて、本当に良かったです!♡

いっつも他人のことを優先して、いいよいいよ私なんてって言ってて、私も今まで助けてもらうのを拒否していました。

でも、こんな私でよれければもっともっと頼ってほしいです!!

自分をもっと大切にしてあげてほしいです。

これはゆきさんから学んだことで、とっても今、大事にしていることです。

私は今、本当に一番幸せです!!♡

こんなにも自分を見てくれて、こんなにも、自分のことで動いてくれる人は家族ですらいなかった。

ゆきさんが、私のことで泣いていてくれるとき、本当に心が温かくなります。

「あ、自分のためにこんなにも泣いて喜んでくれる人がいたんや!」って本当に嬉しいです。

人の温もりを教えてくれて、与えてくれてありがとうございます。

出会ってくれて、本当にありがとうございます!!♡

その1 異次元⁉ 少子化対策 大阪会議
その2 大阪会議  ~やってよかった!具体的施策 ①~
その3 大阪会議  ~やってよかった!具体的施策 ②
その4 制度がある 制度が使える 別物です


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