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保健医療福祉従事者と外国人妊産婦へのインタビューから見えたこと

こんにちは。在日外国人支援事業部の松尾です。先日、青年海外協力隊(現、海外協力隊)時代のザンビアのホストブラザーから「今日本にいるよ」と急に連絡が来て、お盆休みに会いに行くことを楽しみにしている今日この頃です。

さて、シェアでは現在、赤い羽根福祉基金の支援を得て、東京都内4区(杉並区、新宿区、中野区、豊島区)を中心に、母子保健分野の医療通訳活用促進と外国人母子への連携した支援体制作りに取り組んでいます。その中で、昨年10月より約4か月かけて、「外国人母子支援におけるニーズ調査」として、外国人母子支援に携わる保健医療福祉従事者20人と外国人支援団体職員3人(以後、保健医療福祉従事者等とする)、日本で妊娠・出産・子育てを行う外国人の母親10人を対象にインタビュー調査を行いました。昨年12月には調査期間中の進捗をご報告しましたが、今回は、調査を終えて、まとめた結果から見えてきたことを、少しご紹介します。

外国人支援団体の方へインタビュー

調査から見えてきた外国人母子支援における課題

インタビューで聞かれた内容から、保健医療福祉従事者等が外国人妊産婦と関わる際に感じている課題と、外国人妊産婦が日本で妊娠・出産・子育てする中で感じている課題は、主に「言葉」「仕組み」「文化」「制度」「知識・情報」の5つに分けられました。

そして、その中でも、調査協力者すべての方から聞かれていたのが、言葉の壁による課題でした。

「何を言っているかわからず『はい』と笑って答えた」
「『大丈夫』としか言えず聞きたいことも聞けない」
「冊子やクーポンは何が書いてあるかわからず、使っていない」
「『困ったら連絡して』と言われたが、言葉の問題もあり、連絡できていない」
外国人の母親からは、日本語でしか話せない環境では、説明の理解が難しく、聞きたいことも相談できず、サービスの活用が難しい状況が聞かれました。

「パパが『大丈夫』と言うが、ママ自身の困りごとや気持ちはわからない」
「生活環境、障がいのある子どもへの思い等、具体的な話は聞けない」
「説明を理解しているかわからず、最低限の情報提供しかできない、自己管理の必要な治療は行えない」
「入院患者へ、病状説明時のみ医療通訳を活用するだけでは、信頼関係が築きにくい」
保健医療福祉従事者等からは、外国人妊産婦自身の状況や気持ちを把握することが難しく、説明への理解度もわからず、ニーズ沿った情報提供やサービス・治療の提供につなげられない難しさ、もどかしさが聞かれました。

その他、外国人妊産婦の母国と日本の保健医療の仕組みや文化等が異なることによる、相互理解やサービス活用につなげる難しさ、在留資格の種類等制度の影響によるサービス提供の難しさ等も課題として見えてきました。
また、外国人妊産婦の母国の文化や保健医療システム、在留資格等に関連した知識等、外国人母子支援に関する知識や情報が十分でないことも、課題として聞かれました。

これらのことから、外国人母子の支援時には、日本人の妊産婦に関わる時と同様の「相手のニーズに沿った、適切な、納得のいく支援が行えない」ことが、最も大きな課題となっており、多くの保健医療福祉従事者等が、「納得のいく支援を提供したい」という思い、ニーズを持ちながら、日々外国人妊産婦と向き合っていることがわかりました。

調査協力者を対象に実施した中間報告会のスライドより

納得のいく支援につなげていくために

この調査を経て、保健医療福祉従事者が望む、相手の状況や思いを把握して、ニーズに沿った情報提供やサービス提供を行っていくには、また、外国人妊産婦に日本の母子保健サービス等を理解し活用してもらえるよう丁寧な情報提供を行っていくには、言葉の壁を解消し「日常的に医療通訳を活用できる環境」が整うことが必要だということを改めて確認できました。

また、外国人の特性に合わせた多言語資料の活用や、外国人住民に情報が届くような、多様な情報発信やコミュニケーションツールの活用等、「医療通訳活用以外の情報提供の充実」も必要です。

さらに、「支援に必要な知識や情報が得られる機会の充実」も大切であり、区や機関を越え、外国人母子支援に携わる人々が集まり、文化等も含めた外国人母子支援での気づき、在留資格も関連した対応経験の共有等、情報交換を行いながら、お互いに協力、連携して、外国人母子の支援が充実していくことが望ましいと考えています。

「言葉の問題はあるけれど、日本の(母子保健)サービスは素晴らしい」そんな声もあちこちで聞かれたインタビュー調査。そんな母子保健サービスに、すべての母子がアクセスできるように、それを願う保健医療福祉従事者等が望む支援が行えるように、今後も活動に取り組んでいきたいと思います。
調査に協力してくださったすべての皆様へ心より感謝いたします。ありがとうございました。

在日外国人支援事業部 松尾沙織

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