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魔法と物理は乳化しない『欲望の錬金術』

魔法と物理は乳化しない『欲望の錬金術』

昔から「魔法」というものに興味があった。といってもファンタジーに出てくるような魔法ではなく、現実で認識を変えるような、ちょっとした工夫。医薬的な文脈でいえば「プラシーボ効果」などと呼ばれるそれは、ここ最近一般的にもかなり認知されてきたように思う。

本書が伝えているのは、物理学のようないわゆるハードサイエンスのフレームワークに人の心の働きを還元することは不可能であり、そこは依然としてアートの領域で

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次の宗教のあり方はどうなるか:『宗教的プログラムの構造と解釈』

次の宗教のあり方はどうなるか:『宗教的プログラムの構造と解釈』

宗教(前に大学院でかじった)にもVR(これから大学院でかじる)にもどちらにも興味がある身としては必読の本作、単純に漫画としてのクオリティがグンバツなので、仮に宗教にもVRにも興味がなかったとしても、普通にスルスルと読めてしまう。

設定まわりがしっかりしていることもさることながら、登場人物のセリフの端々に文学的素養が感じられるというか、知性の高さみたいなものが感じられて、そこも良い。いい漫画という

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ペルソナとは「人格」ではなく「世界」そのものである――『図書館の大魔術師』

ペルソナとは「人格」ではなく「世界」そのものである――『図書館の大魔術師』

「おもしろい」「おもしろい」といたるところで聞いていた『図書館の大魔術師』、やっぱりおもしろかった。というか世界観の構築がすごい。その緻密さは、まるで本当にこういう世界が存在しうるのではないかと思ってしまうぐらい。僕は曲がりなりにも書籍に関わる仕事をやっていて、今後も多かれ少なかれそういうものに関わっていくのだと思うけど、今までの地平とはまた別の形で「本」というオブジェクトのおもしろさ、紡がれてき

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自分が影と生き人形に分かれたとしたら?『シャドーハウス』

自分が影と生き人形に分かれたとしたら?『シャドーハウス』

前回の記事で「自分のスキなものを毎日記録しよう!」と思い立ったのはいいものの、こういうシリーズもので何を1つ目にするかは常に気を使ってしまう。なんとなく1つ目とか2つ目のものというのは、自分自身を象徴するようなものに思えるからだ。

でもよくよく考えてみると、「スキ」と言えるものは多かれ少なかれ自分を表しているものだし、そのひとつひとつの脳内格付けみたいなのを意識しはじめると、いつまで経っても記事

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汝、「スキ」を収集し、展示する好事家となれ

汝、「スキ」を収集し、展示する好事家となれ

自分を形作るものが現在置かれている環境、およびそれまで吸収してきた情報だとしたら、できるだけそれはポジティブなものでありたい。

もちろんネガティブなものはほぼ不可避であり、遭遇してしまった場合はそれをどうにかやり過ごすか、あるいは打倒するべき敵として退けるかを選ぶ必要が生じるのだが、人間の認知というのはネガティブなものを過大評価するようにできているので、どうしてもはっきり意識して生活を送っておか

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