ロロ「いつだって可笑しいほど誰もが誰か愛し愛されて第三高校」シリーズ
劇作家・三浦直之率いる劇団ロロが贈る連作演劇、「いつだって可笑しいほど誰もが誰か愛し愛されて第三高校」シリーズ、通称:いつ高シリーズの最新作「vol.8『心置きなく屋上で』」がオンラインでも上演。アーカイブ配信を待っている間に、これまでのシリーズの良さみなどを書き連ねていきたい。
このシリーズ、架空の高校を舞台に同じキャストが(ほぼ)同じキャラを演じる形で展開していく作品群。戯曲だけはホームページ上で無料公開されており、三浦直之を「ダンスナンバー 時をかける少女」で知って以降、ホンだけは読んでいる状態で。実演を観てえなあとずっと思っていたのだけど、このたび新作に併せ3本の過去作が9/13まで期間限定配信となりまして、初めて実演されているいつ高作品を観るに至ったのです!以下、その3本の簡素感想。
いつ高シリーズvol.3『すれちがう、渡り廊下の距離って』
映画を撮ろうと友人を待っている彼、破局寸前のカップルの思いをメッセンジャーとして伝え合う彼、それを見つめる彼女がひしめき合う渡り廊下のお話。了解不能なこだわりで仲違いするし、理屈もなく突っ走り続けるものだし、好きなものをプレゼンする時や大事にしてる想いを伝える時はだいたいうまくいかないし、、突飛なキャラ造形もあるけど意外とこれくらい全力で訳わかんなかったよなぁと思い出す。いつ高シリーズは「まなざし」が一貫するテーマで、静かに誰かを見つめる間合いなどで絶妙に表現されてる。
いつ高シリーズvol.4『いちごオレ飲みながらアイツのうわさ話した』
女子高生3人によるだらりとした喋りで織り成す作品。彼氏(vol.3のメッセンジャーです、繋がってる!)と別れた1人を慰めたり新しい彼氏候補を見つけようとしたりする他2人、でもそれぞれに抱えてるものがあったりなかったり、、で。短歌を読み場面すらやかましい作品だけど、不意に訪れる静寂のシーンがぐっと胸を打つ。いつ高シリーズはとにかく優しくて眩しい程に温かい(んで切ない)。シリーズ通して、戯曲の冒頭に「ファンタジーでなければならない」と付いてる意味とかも考えちゃう。現実に拮抗する優しい世界。
いつ高シリーズvol.7『本がまくらじゃ冬眠できない』
いつ高の2年生たちが中心のこのサーガ、初めて1年生(前シリーズキャラの妹2人)がメインとなった本作。図書室を舞台に、ほんわりとしたやりとりで見せていく穏やかなクリスマスの物語。これもまたサイレントな場面が非常に胸に残る。誰かにとっての何かでありたい、という気持ちが妙な形で析出する愛おしさよ。いつ高は放課後が主な舞台になっているのだけど、あの永遠に続きそうなムードが完璧に切り取られた60分だなぁと思う。僕ももっと居残る青春を送れば良かったなぁ、すぐ家に帰りたい系の帰宅部だったので。
全ての作品はリンクしており、その広がりゆく世界については無料で読める戯曲で補完できる。イマジネーションが距離を超える「Vol.1 いつだって窓際であたしたち」、引きこもりとお化けも現る夜の出来事「Vol.2 校舎、ナイトクルージング」、どうしようもない花火大会の夜の傍で起こった少しばかりの奇跡「Vol.5 いつだって窓際でぼくたち」(1番好き!)、足音とダンスが交差する「Vol.6 グッド・モーニング」、どこかで観れる機会はないだろうか。
さて、今は諸事情あって配信が遅れているVol8を待っている段階。次は誰が誰を見つめ、誰に見つめられるんだろう。誰かがいる優しさを、知りたい。