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読書感想文 #17 『幕末』
みなさんこんばんは。いかがお過ごしでしょうか。
先週から続く寒波には困ってしまいますね。こちらは雪は降りませんでしたが、とても冷たい雨が降っていました。
三連休から今日まで、家に籠らざるを得なかった為、小説を買って読みまして、今日はその感想を書きたいと思います。
「幕末」 司馬遼太郎著
あまり有名ではない作品ですが、幕末の暗殺の話を集めた短編連集です。
目次
桜田門外の変9 奇妙なり八郎55 花屋町の襲撃97 猿ヶ辻の血統 143 冷泉斬り185 祇園囃子233 土佐の夜雨269 逃げの小五郎311 死んでも死なぬ353 彰義隊胸算用397 浪華城焼打439 最後の攘夷志士483
いくつかの章をピックアップします。
桜田門外の変
弾圧"安政の大獄"を行った大老井伊直弼を暗殺する歴史の教科書に出てくる超有名な話。薩摩藩士で、水戸藩との橋渡し役であった日下部伊三次が安政の大獄で逮捕され、言語を絶するような拷問の上、衰弱死。有村兄弟(雄助と治左衛門兼清)が仇を決意。雪の降る日に桜田門外で彦根藩が護衛する井伊直弼を暗殺します(雄助は見届けて京と薩摩に報告)。
暗殺という政治行為は、史上前進的な結局を生んだことは絶無と言っていいが、この変だけは例外と言える。明治維新を肯定するとすれば、それはこの桜田門外からはじまる。
まるで夜明け(明治維新)前の出来事のようです。井伊誅殺計画は、薩摩藩で大久保一蔵(後の利通)や西郷吉之助(後の隆盛)ら大物たちによってあったようですが、脱藩計画が藩主の父島津久光に漏れてしまい、頓挫したそうです。結局暗殺した側もほとんど亡くなり、有村雄助も切腹させられるという、勇敢な者たちの命を犠牲にして成し遂げられた変なのだそうです。
逃げの小五郎
逃げの小五郎こと桂小五郎(後の木戸孝允)。賢くて、碁も強く、剣術も優れているのに、慎重すぎる性格で、京で暗殺を恐れて逃げまくる。
一生用ふることなきは大幸といふべし。出来れば逃げよ、というのが、殺人否定に徹した斎藤弥九郎の教えであった。自然斎藤の愛弟子であった桂は、剣で習得したすべてを逃げることに集中した。
蛤御門の変で長州藩の多くの志士が死んだのに、桂は京の藩邸を出ずに生き残った。そこで言われたのが、
「長州武士の風上にもおけぬ臆病者」である。
また、京都見廻組による長州人狩りの頃も、乞食に変装したり、但馬出石で荒物屋になったりしていた。
「身の用心も度を越している。」
「夜走獣のように用心深い。」
などと言われた。
堀田半左衛門から大喝されて目覚めます。
「武士の言葉を信じられぬのか 貴殿も一時京を動かしたほどの男ではないか...貴藩のことだ。内外に敵を受けて存亡の岐路にあるというのに、なぜこのような山里で安閑と火を消しておられる。」
それから長州へ帰国し、三年後に明治維新が起きます。
その後生き延びた木戸孝允は”維新三傑”の一人でありながら、維新後は大久保と西郷の闘争(西南戦争)の陰で病死します。愚痴ばかりこぼして、結局トップには(お札や大河ドラマの主人公にも)なれなかった残念な人生だったような気がします。
死んでも死なぬ
エピソードは下記になりますが、敢えて詳細は書きません。
・品川御殿山の建設中の英国公使館に放火
・幕府の陰密である宇野東桜の暗殺
・幕府の和学講談所の教授塙次郎の暗殺
・聞多と俊輔が極秘に英国留学
上海支店長ケスウィックが乗船の世話をしてくれるはずだった。ケスウィックはしきりと、「何の目的で英国にゆくのか」と手ぶり身振りで訊いた。...聞多は懐から...辞書を取り出してきて「ネヴィゲーション」と答えた。ネィヴィ(海軍)と答えるべきだったが、大差はないだろうとたかをくくっていた。ところが上海支店長はネヴィゲーション(航海術)と受け取り、シナ茶をロンドンに運ぶ老朽船に二人を乗せた。...その日から水夫見習いとして下級水夫どもに追い使われた。...二人は四か月十一日のあいだ、休む間もなかった。
この時代に英国留学できてしまうこと自体スゴいですが、単語の言い間違いでひどい扱いを受けるというマンガのようなエピソード。その後二人は英国の凄さに気づいて、急いで帰国します。
・聞多メッタ斬りされるも、奇跡的に生き延びる
長州藩の井上聞多(後の馨)と伊藤俊輔(後の博文 初代首相)のしっちゃかめっちゃかなエピソードはかなり笑えます。高杉晋作らもいる長州藩の志士の個性は、マンガスラムダンクの湘北高校や、最強だったNBAのシカゴブルズのメンバーとかくらい強いような気がします。
終わりに
幕末の裏話集的で、暗殺の話を小説にアレンジしていて、司馬作品の「竜馬がゆく」、や「世に棲む日日」などを読んでいれば、より面白く感じる本だと思います。
司馬さんの歴史小説で大掛かりな作品としては、明治時代終盤の日露戦争書いた「坂の上の雲」が歴史順で言えば最後であり、大正や昭和については書いていません。昭和初期の太平洋戦争等は、たくさんの作家にも書かれていて、有名ですが、今ブームとなっている鬼滅の刃の舞台である大正時代がどんなものだったのか、司馬さんの大作があれば、比較出来て面白いのになぁというのが、ふと思い浮かびました。
それではまた。
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