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プロジェクトメンバー 対談 【 仁田坂和夫さん・村田尚武さん 前編 】

みなさん、こんにちは。「石神井いとなみの起点」プロジェクトの竹内(デジタル・アド・サービス)です。

石神井いとなみの起点プロジェクトは、2026年春、東京・石神井に新しく生まれる福祉の拠点(設置主体:社会福祉法人東京都手をつなぐ育成会)をベースに、東京・都市部の抱える課題の多様性と絶対量に向き合いながら「基本となる福祉事業」と「みらい創造型拠点事業」そして、その2つの融合で、誰もがあたりまえのいとなみを続けていくことのできる地域づくりのモデルとなっていくことを目指すプロジェクトです。

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#01:はじめまして「石神井いとなみの起点プロジェクト」です!

プロジェクトが動きはじめて約1年ちょっと。その歩みをふり返りつつ、社会福祉法人東京都手をつなぐ育成会 事務局長、そして、石神井いとなみの起点プロジェクトのリーダーである仁田坂和夫さんに、デジタル・アド・サービス 村田尚武 代表取締役社長がお話しをうかがいいました。#07と#08では、前後編の2回にわけてその模様をお伝えします!

前編は、仁田坂さんがこれまでのキャリアで経験し感じてきたこと、動きはじめたプロジェクトの歩みのなかで見出していることなどについてのお話しです。


右:仁田坂和夫さん 社会福祉法人東京都手をつなぐ育成会 事務局長/常務理事
左:村田尚武さん 株式会社デジタル・アド・サービス 代表取締役社長

1. これまでのキャリア

村田:デジタル・アド・サービスでは、以前、仁田坂さんが施設長を務めていらした障害者支援施設ひだまりの里きよせのブランディングや法人本部での「ミッションをアクションで超えていこうプロジェクト」と題した中長期のロードマップを考えるプロジェクトなど、さまざまな取り組みを一緒にさせていただいています。改めて、ここに至るこれまでのキャリアをおうかがいいできればと思います。

仁田坂:社会福祉法人東京都手をつなぐ育成会(以下、都育成会)に入ったのは30歳を過ぎたころで、それまで10年ほど入所施設で働いていて、たまたまご縁があって都育成会にきました。最初は全く畑違いの経理の仕事をして、補助申請ひとつ、財務諸表の作成ひとつとっても、支援員だったときには全く経験したことがなかったので、最初の3年間、集中してそれをやったのは、今となってはすごく糧になっていますね。
 
それから、恩方育成園(東京都八王子市)に異動しました。その時代、まだあまりそういうことが盛んではなかったけれど「入所から地域に出て暮らす」ということが、自分たちのテーマとしてあったので、そういうことに取り組んで、グループホームをはじめて自分でつくってみたりしました。
 
その後、杉並区の入所施設(すだちの里すぎなみ)を立ち上げる仕事に移りました。ここでは「50人の利用者さん全員が、地域に戻っていく」という考えを実践する施設を手がけました。同時期に、100を超えた都育成会のグループホームを世の中の制度の変化にマッチしたものに再構築、構造転換するということを行なっていました。これが、今から10年ほど前です。
 
次に、ひだまりの里きよせ(東京都清瀬市)です。地域支援のほうにすごく興味がありましたし、入所施設をまたつくるというのも抵抗がありました。ではなぜ受けたかというと、最重度の知的障害や自閉症、行動障害とかがあって、とにかく地域からはじかれてしまう人たちの支援をしっかり最初からやっていく、というもう一つの軸があって。専門的な支援をチームでつくっていくということはやはり意義がある、やるべきことだと思ったんです。専門性の高い先生たちも巻き込みながら、若い職員たちにも前向きになってもらいながら、チームとして成立させていくというのは、今回のプロジェクトにもつながっていることですね。

2. 間に合わない——東京・都市部が抱えている課題の多様性と絶対量と向き合い続けて

村田:石神井いとなみの起点プロジェクトは、取り組みを発信したり、関わってくれる人たちを増やしてチームをつくっていくことで、今回拠点ができる石神井という限定的なエリアでなく「誰もがあたりまえのいとなみを続けていける住みやすい東京にしていきたい」という大きな構想として描かれていらっしゃるじゃないですか。すごいすてきな考えだし、視野の広がりとか、未来への時間軸に関してもすごく共感できています。

事業計画書のなかの「『東京』の持つ特性と私たちが考える『みらい』の福祉」という項目のなかで、今回のプロジェクトの背景として、東京の都市部が抱えている課題の多様性とか絶対量、厚生労働省が掲げている「我が事・丸ごと」の地域づくりとのギャップといったことが書かれています。お仕事をされるなかで、そうしたことを実感されてきた経験などがあれば教えてください。

事業計画書 資料より

仁田坂:利用者さんが地域に出ていけるようになるとか、新しい入所施設をつくって居住の場ができるとか、取り組みが進み、時代は確実に良くなってきているれけど、今ひとつ課題に追い付かないというのはやはり感じていて。僕の先輩で、毎日、街を自転車で駆け回りながら、本当に街の人から信頼されてやっている人がいるのですが、その人と飲むと、いつも「間に合わない間に合わない」っていうのが口癖なんですよ。僕らからしたら、もう2倍も、3倍も働いているんですけれど間に合わないと。
 
また、障害福祉の仕事をしてる僕たちとか、僕たちの関係者がつながるだけじゃなくて、いろいろな人たちがつながりましょうってよく言うけれど、誰とつながるのか、目の前にあるものとしてあまり見えてなかったところがありました。

3. 異なるフィールドの人たちの重なり合いに見出す糸口

村田:そのなかでプロジェクトが立ち上がって1年と少し経ちますが、歩みを進めてくるなかで手応えを感じていらっしゃるのはどんなところですか?
 
仁田坂:村田さんたちとは、数年前から都育成会とパートナーシップということで連携していますが、法人のビジョンをつくるようなところから理解をしてくれてる人たちがまず参画をしてくれるとか、旧知の仲である株式会社ウチダシステムズの山本朗弘さんとも情報交換をするなかで、福祉施設を専門とする建築家の間瀬樹省さん(ケアスタディ株式会社)にも出会ってプロジェクトに入ってもらったりとか。今回のプロジェクトでは、フィールドはそれぞれ違うけれど、つながれることがあるというのはいっぱい感じるんですよね。みんなと一緒に仕事をして、伴走してもらっているなかで、一つひとつ積みあがってきているので、絶対量とかにどこまで追いつけるか分からないけど、いろいろな違うフィールド、違う地域の人も含めて、重なり合っていくと、もしかした糸口があるかもしれないかなって思えています。

石神井いとなみの起点プロジェクトでは、プロジェクト発足時から、
拠点の設置主体である社会福祉法人東京都手をつなぐ育成会はもちろん、
東京都手をつなぐ親の会、政治家、地域事業者、デザイン会社、建築・設計会社、
総合商社、建設会社、不動産会社、学術機関、ケアテック企業などから、
多様な経験と専門性を持つメンバーが参画、つながり、共創しています。

村田:一人、一組織でやっていると足りない、追いつかないけれど、そこにいろいろな人が関わってくると、課題の絶対量だったりとか多様性に対応できる幅が広がってきますね。

4. 問題に出会えるからおもしろい

仁田坂:さらに今、この仕事がおもしろいなって思い始めてるのは、答えを見つけるためにやってるというよりは、問題に出会うって言ったらちょっとかっこよすぎるけど、問題がいろいろこのなかに詰まっているというか、寄せ集められてるところなのかなと。深掘りしていけるっていうか。そこにものすごい魅力を感じてるんですよね。

例えば、地域生活支援拠点として担うべき5つの機能(相談、体験の機会・場、緊急時の受け入れ・対応、専門的人材 の確保・養成、地域の体制づくり)というのは明確に与えられているのかもしれないけれど、一つひとつを深掘りしていくと、いろいろな問題に出会う。グループホームという視点でも、何人かの人たちの暮らしを守れるという一つの答えもあるけれど、それだけではなくて、こんな問題もあるかもしれませんよ?っていうものが集まってくる場所だなって感じていて。

そうすると、その問題を解決するためには、こんな人たちに会ってみようとか、話しを聞いてみようとかってなる。例えば松⽥雄⼆准教授(東京⼤学 松⽥研究室)(※1)もそうだし、コニカミノルタ株式会社さん(※2)もそうだし、途中から加わってもらった建築家の久原裕さん、八木敦司さん(株式会社スタジオ・クハラ・ヤギ)も。会って、話して、問題を投げかけられるので、解決してやろうって思ってくれてるんじゃないかな。

※1、2:石神井いとなみの起点プロジェクトでは、企業・⼤学等の研究機関と連携、
福祉施設を⽣きた研究の場とし、実験的でエビデンスを重視した実践を⾏い、
障害福祉の分野からイノベーティブなサービス、製品、政策等の創出を⽬指します。

村田:おもしろいですね。課題の多様性と絶対量って言うけれど、あくまでもそれは、いろいろな課題があるよね、その量も多いよねという言葉だけれど、石神井いとなみの起点プロジェクトっていうもののなかで、その課題が少しずつ具体化され、解像度が上がってきている。何か絶対唯一の答えを、誰かが持ってるわけではないから、誰かの問いに対して自分も学んだりとか、知見を高めていくことによってチームとしてそれを解決に導いていくみたいなところっていうのはすごいいいですね。

仁田坂:たくさん問題が出てくるから、ストレスフルでもあるんですけどね。分からない、解決できないって思うから、楽にはなりたいんだけどそこにちょっと惹かれるっていうか。それはある、この仕事は。結局、問題はそのまんま抱えながら過ごしてるっていうことなんだけど、それでいいんだなってことですよね。それは、僕なんかもしょっちゅう支援の現場とかで、みんなには言いますよ。この支援、すぐに結論は出ないから、分からないこと抱えているのも力だよとかって言うけど、まさに自分が試されています。

5. いろいろな人が、いろいろな答えの出し方をして、地域が強く、楽しくなる

村田:今、プロジェクトが進んでいるなかで、それが、問題を具体化できる場所で、なおかつ、そこに集まっていろいろな人が解決策を考えてくれるって、私も実体験として同じような感覚を持っていて、おもしろいと感じています。だからこそ、いろいろな人を惹きつける可能性が多分にあるんだろうなって。自分も、そこの課題に関して何か一緒になってできるかもしれないとかって、これからの社会を生きてく上で、そういう関わり方とか活力ってやっぱり持ちたくなるので、すごい分かるなって思っています。

仁田坂:本気で関わってくれる人が増えれば増えるほど、そこに問題も生まれてくるわけじゃない?それを良しとする場所でいいんだよっていうことじゃないですか。これからも問題は生まれ続けてしまうんだけど、その問題に対しても、いろいろな人が、いろいろな答えの出し方をしていくことで、地域が強くなって、楽しくなっていけばいいし、そのプロセスのなかにもヒントがたくさん生まれてくると思うので。

仁田坂:誰もがあたりまえのいとなみを続けていける住みやすい地域づくりのモデルケースとなることを目指すこの拠点、石神井いとなみの起点プロジェクトで、福祉の専⾨領域を追求する「基本となる福祉事業」はもちろん重要ですが、両軸である「みらい創造型拠点事業」(課題解決への探索的な事業への取り組みと発信)の誰が来てもいい、多くの人が参画できる場として、問題、課題も集まってきて、それを、一緒に考えようってできるところが大きな魅力だと思いますね。

✍️ 仁田坂さんのプロジェクトやチームとの向き合い方、チャレンジを続ける動機などについてのお話しの後編(#08)へと続きます!
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🌱 このnoteでは、こんなコンテンツを展開していきます!
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・VISION:中⻑期の視点でのプロジェクトの考えや思いを伝える
・TEAM:インタビューや対談で、プロジェクトの⼈を伝える
・ACTION:プロジェクトでのリアルな活動を伝える
・FIELD:⽯神井のまちとそのいとなみを紹介する
・LAB. :学術機関や企業との共同研究からの学びをシェアする
・STORY:ここで生まれるいとなみを想像し、言葉や絵で表現する
・MEETING:プロジェクトを通じて出会い、つどい、つながる
・PICK UP:思考や対話の起点となる視点を共有する

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