見出し画像

フライパンを持った猫①

コン、コン…

ゴン、ゴン、ゴン…!

何だろう?玄関ドアが叩かれているみたい。
チャイムも鳴らさないなんて、恐い。なんだろう?
まだ明るい時間だけど気を付けないと。

そっと、のぞき穴から外を見てみる。
あれ、誰もいない?
そーっと、ドアチェーンをかけて、そーっとそーっとドアを開けてみる。

あれ?やっぱり誰もいない…?
と思ったら視界の下の方で何かか動いた!

フライパンだ。
…フライパン?

フライパンを持った猫だ。

フライパンを担いだ猫だ。
背中にフライパンを背負っている。
2本足で立っている…?

意味が分からず固まっている私をよそにドアの隙間から部屋に入っていく猫。さも当然!と言わんばかりの肩と背中をぼーっと眺める。すがすがしいほどの迷いのなさ。

「ちょっと猫さん?!勝手に入らないでください!」

そう言っても「うむ。」と静かに頷いたような、頷いていないような、
受け止めてくれたような、受け止める気などさらさらないような、
そんな表情で立っている。うちのリビングに。勝手に。

あたりを見回すと、おもむろにソファーの上に乗り、背中のフライパンをよいせっ、とおろした。そしてひと言、「世話になる。」と言ったきり…フライパンの中にすっぽり丸まって寝てしまった。

え?どうしろと?何が起きたの?何この子??
よくわからないけれど、全く何ひとつわからないけれど、
「…かわいい。」
そう、かわいいのだ。どうしようか。ふわふわな毛、グレーのような、クリーム色のような、日に当たってきらきらとした毛。うっすらとピンク色の耳が1つだけピコンと飛び出ている。
外から来たのに、全然汚くない。飼い猫かな?それなら飼い主さんを探さないとな…と思いつつ。まぁ、とりあえず仕事に戻るか、とパソコンに向かう。落ち着かないけれど。全然仕事に集中できないけど!



この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?