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「地域に居場所をつくる!」息子のひきこもり経験をもとに実践してきた母の挑戦!

ひきこもり当事者、家族、支援者の思いをみんなに伝えるラジオ【ひきこもりVOICE STATION】♯1、ラジオ音声を全文書き起こしました。

岩手県北上市でひきこもり当事者や不登校当事者への居場所支援をしている、笑いのたねプロジェクトの代表 後藤誠子さんに話を聞きました!
※音声で聴きたい方は、コチラからどうぞ。

パーソナリティ:高橋みなみ

ゲスト:笑いのたねプロジェクト代表 後藤誠子

構成:山田英治(社会の広告社)

高橋みなみさん「ひきこもりVOICE STATION。この番組はひきこもり当事者、家族、支援者の声をみんなに伝えることで、誰もが生きやすい社会って何だろうと考えてみたりお話ししてみたりする番組です。皆さん、こんにちは。ひきこもりVOICE STATIONパーソナリティの高橋みなみです。今回はスタジオにゲストをお迎えしています。岩手県北上市でひきこもりや不登校当事者への居場所支援をしている、笑いのたねプロジェクト代表の後藤誠子さんです。本日はよろしくお願いします」

後藤さん「よろしくお願いします」


いろいろな生きづらさを抱えている人たちと地域の人たちを、笑いを通してゆるい感じでつなげたい

高橋さん「後藤さんとお呼びしていいのか、誠子さんとお呼びしていいのか、悩んでいたんですけど」

後藤さん「ぜひ誠子さんでお願いします」

高橋さん「いいんですか。誠子さん、よろしくお願いします」

後藤さん「お願いします」

高橋さん「私ももう何でも」

後藤さん「みなみさんって呼んでもいいですか」

高橋さん「一気にちょっと距離が近く感じますね。よろしくお願いします。いろいろお話を伺いたいのですが、まずお伺いしたいのが、この笑いのたねプロジェクト。このプロジェクトって一体どういうものなのですか」

後藤さん「はい。この『笑い』という言葉をつけたのは、人って本当にひどいことやひどい状態、辛い状態にあっても、それでも笑える事ってあるじゃないですか」

高橋さん「あります」 

後藤さん「ありますよね」 

高橋さん「はい」 

後藤さん「その本人にとっては本当に、こんなに悪いことやひどいことはないっていうことでも、別な人が別な角度から見ると結構笑えることだったということ、ありませんか」 

高橋さん「ありますね。自分では(笑え)ないと思っていても、他人が笑ってくれると別に笑っていいことなんだと」

後藤さん「そうそう、そうなんですよ。本当にそんなに悩むことじゃなかったのかなーって。ここまで傷つくことじゃなかったのかなーって思えることってありますよね」 

高橋さん「ありますね」 

後藤さん「そうなんですよ。『笑い』っていうのを名前に入れたいなと思って。そういう笑いのたねがどこにでもあるよって。たくさんあるから、みんなで見つけようよっていう意味を込めた名前なんです」 

高橋さん「笑いのたねに気づくと結構、生活は変わって行くんですね」 

後藤さん「そうなんです。その笑いのたねプロジェクトは、不登校やひきこもりだけではなくて、いろいろな生きづらさを抱えている人たちと地域の人たちを、笑いを通してゆるい感じでつなげたいという思いでやっている団体です」 

きっかけは、不登校になった次男

高橋さん「つなげていくのですね。大事ですね。一方的に発信するのではなくて、その人たち同士をつなげていくという。そこからまた輪が広がるのかなと思います。誠子さん、ひきこもりの方を支援するきっかけは、そもそも何だったんですか」 

後藤さん「実はですね。私の次男が今から11年前の高校1年生の夏休みに、学校に行けなくなりました」 

高橋さん「突然だったのですか」 

後藤さん「私にとっては、ものすごく突然だったのですが、次男とその後色々と関って、聞いた中では、物心ついた頃から、幼稚園くらいの時から、なんとなく自分が他の人と違うという(感じだったそうです)」 

高橋さん「幼稚園の時からというと、だいぶ小さいときから」 

後藤さん「そうなんですよ。だからずっとそれを抱えたまま我慢してきていて、16歳の高校1年生の時にそれが表に出たって言えばいいんですかね。学校へ行かないという行動として現れてきたんじゃないかなと思っているんです」 

高橋さん「私もよく知り合いに聞くのが、夏休みってすごく肝で、長期の休みに入る瞬間に、人間関係もそうだし、いろんなことがリセットされて自分ってちょっと違うんじゃないかなと思ったり、気づくタイミングになったりするということを聞いたことがありました」 

後藤さん「それもあったのかもしれないですね。夏休み中だったんですよ、学校に行けなくなったのが」

高橋さん「そこから学校に行きたくないっていうふうに言われたということなんですか」

後藤さん「言葉で言わない子達も多くて、うちの次男ははっきり何があったから行けないとか、何が嫌だから行けないっていうことは全く言わなくて、とにかくベッドから出てこられない」

高橋さん「それは親からしたら心配ですよね」

後藤さん「心配っていうよりも私の場合はびっくり」

高橋さん「何が起きたの?って」

後藤さん「これは何?って」

高橋さん「具合が悪いわけでもないし。でも出て来られない」

後藤さん「そうなんですよ。そして夕方になると割と元気にしているし、なんで朝だけ?えっ?てなりますし」

高橋さん「お昼は割とお家の中で活動したりとか」

後藤さん「お昼後、ですね。昼夜逆転みたいな感じになって、お昼後に起きてきて夜もちょっとは起きていてという感じで」

高橋さん「じゃあ、お部屋からは出て来られるのですね」

後藤さん「最初のうちはね、出てきたんですけど、私が無理やり学校に連れて行こうとしたものですから」

高橋さん「分かんないですもんね、何が起きているか分からないから」

後藤さん「そうなんです」

高橋さん「こんなに休んでいると勉強も大変だとか」

後藤さん「大変です。大変です。しかも一応地元の進学校だったので、これがもし行けないまま終わっちゃうとなると」

高橋さん「不安ですね」

後藤さん「もう本当に怖かったです。11年前なので、今ほどって言ったらあれですけど、不登校とかひきこもりということがあまり話題にならなくて」

高橋さん「じゃそうなってくると、やっぱりもう無理矢理でも引っ張り出さないと」

後藤さん「そうですね」

高橋さん「そこからどうでしたか。関係性というのは」

後藤さん「本当にもう大変なことになってしまって。元々、男の子ってあまり喋らないじゃないですか」

高橋さん「高校生になるとちょっとした反抗期なんかもありますよね」

後藤さん「そうなんですよ。それも重なってくるので、余計本当に口もきかなくなりますし、そしてメディアの発信もあるかもしれないですけど、ひきこもりといったら、よくあるステレオタイプがあるじゃないですか」

高橋さん「ステレオタイプですか」

後藤さん「部屋から全然出てこなくって、お風呂も入らなくて」

高橋さん「そんなイメージです。本当に扉の前にご飯置いておくみたいな」

後藤さん「そんなイメージ。そんなイメージに、やっぱりどんどんなっていっちゃうんですよ。最初からそういうわけではなくて、こちらがそうやって無理に引き出そうとすることで向こうも怖いわけですよね。ひきこもっちゃってて自分もなんでこんな風になってるんだろうって、自分でも分からないみたいなんですよ」

高橋さん「苦しいですよね」

後藤さん「そうなんですよ。すごく苦しいのに、頼みの綱であるお母さんが全然分かってくれないとなると、信頼関係が全くなくなってしまって口も聞きたくないし、なんならもう顔も見たくないし」

高橋さん「コミュニケーションが取れないと、その一歩目っていうものが踏み出せなかったり、理解がお互いできなかったりしたままになってしまいますよね」

後藤さん「そうですね」

高橋さん「そこからどういうふうに動かれたのですか」

後藤さん「いや、本当に時間かかりましたね」

高橋さん「そうですか」

後藤さん「ものすごい時間がかかりましたね。私の場合は。やっぱり初動捜査とかっていうじゃないですか」

高橋さん「捜査みたいになるんですね。一体何がきっかけで起きたんだみたいな」

後藤さん「事件とかも最初がやっぱり肝心じゃないですか」

高橋さん「始まりですよね。きっかけですね」

後藤さん「そうなんです。だから私もその不登校の時に高校1年生の時の関わりをもっと親として勉強して、本当にその子供のことを思った関わりをしていれば、多分そんなにこじらせなかったんじゃないかなっていうのは、やっぱりのちのち後悔として(ありました)」

高橋さん「誠子さん的にはその時期というか、息子さんとの距離感っていうのは、ちょっと反抗期もありましたし、あまり話さないなぁみたいな日が積み重なっていたということなんですかね」

後藤さん「元々そうですね、無口だったので、それが普通で来ていて、それが学校に行かないとなって、部屋から出てこない、食事も一日一回、となって。あとは表情があるじゃないですか。人って」

高橋さん「喜怒哀楽ありますよね」

後藤さん「それが本当になくなるんですよ」

高橋さん「えっ。でも本当にその日を皮切りにゆっくりバンってなくなっちゃうんですか」

後藤さん「だんだん、だんだん、ですけどね。気が付くと、気が付いた時にはもう本当にロボットとか能面みたいなって言うじゃないですか。表現だけじゃなくて本当にそうなるんですよ」

高橋さん「人は喜怒哀楽が表情に出ることで、こういうことを考えているって相手がわかったりするじゃないですか。それが出ないとなると」

後藤さん「わからない」

高橋さん「それからどれくらいかかって、歩み寄ったり理解したりに至ったんでしょうか」

後藤さん「11年前ね、今も多分まだその最中だと。途中だと思います」

高橋さん「今もまさにその最中なんですね」

後藤さん「まだ途中だと思いますね」

高橋さん「それでも会話というか関係性は当時よりは」

後藤さん「今は関係性が良くて、後にお話しするんですけど、今やっている居場所で一緒に居場所支援員として働いています」

高橋さん「すごい。この11年本当にいろんな積み重ねがあったんですね」

後藤さん「もう本当に涙なしでは話せないような気になります」

親が変わったことで、すべてが動き始めた!

高橋さん「今、居場所という話も出てきましたが、誠子さんの支援で特徴的なのが、この居場所なんですね。この居場所支援についても教えて頂いていいですか」

後藤さん「そうなんですね。先ほどのひきこもりの支援をするようになったきっかけにも関係するんですが、次男との関わりの中で、なかなかうまく信頼関係が築けないという時に、本当にいろんなことがあって、急に分かったわけじゃないのですが、次男と自分が別な人間だということに(気づきました)。当たり前と言えば、当たり前の事なんですけど、親って自分が産んで育ててきて、私がいないとこの子は大変だというような思いが、どんどんどんどん積み重なってくると、いつのまにか自分と子供をすごく一緒にしてしまうというか」

高橋さん「私ならこう考えるから、息子もきっとこういう考えるはずだと」

後藤さん「そういうことなんですよ」

高橋さん「そうなると、やっぱりちょっとずれが出てきますよね」

後藤さん「そうなんです。私はこうやって結構外に出て人と話したり、笑ったりするのも大好きですが、どうやら次男はそうではないっていうことがやっとその不登校が始まってから何年くらいだろう、7年か8年くらいたって(わかりました)。不登校から一回社会に出て、そこからまた社会的ひきこもり状態になってということを繰り返す中で、私、本当に何回も何回もやっちまうんですけど」

高橋さん「やっちまうんですね、誠子さん」

後藤さん「やっちまうんです」

高橋さん「そのやっちまうっていうのは、『行きなさいよ』(と言ってしまう)ような」

後藤さん「そうです、それです、それです。もう仕事に行ったらどうだとか、免許取ったら仕事に行けるんじゃないとか」

高橋さん「よかれと思ってなんですよね」

後藤さん「そうなんです。その良かれと思ってが、子供にとっては一番嫌だというか、傷つくことなんですよね」

高橋さん「難しいですね」

後藤さん「そうなんです」

高橋さん「でも聞いてくださっている親御さんも、きっとそう思っている方が多いと思うんですよ。よかれと思って強く言ったら、それが実は知らない間にお子さんの負担になっている。これを7年かけて、そのことに気づいて」

後藤さん「気づいたんですよ」

高橋さん「ふと気づくわけですよね。違うと」

後藤さん「ある日ね、それがなんか降りてきたんですよ。違うんじゃないかと。うち、次男と二人暮らしだったので、私がもし何かがあって死んでしまったら、次男がどうするんだろうっていうことをずっと心配してたですよ。実は」

高橋さん「不安になりますよね」

後藤さん「はい。でもある時に私が死んだ後に、この世に化けて出てきて、この子を市役所連れていったりとか保健所へ連れて行ったりとか、手続きに病院とか(へ行くことは)できないじゃないですか」

高橋さん「難しいですね。相当ななんか、霊的スキルを持ってないと。行くよ、みたいな」

後藤さん「そうなんですよ。できないじゃんと思った時に、何でそんなことを心配していたんだろうって思ったんですよ」

高橋さん「考えて考えて、悩み抜いて答えが見えたんですね」

後藤さん「そうですね。心配してもどうにもならないのだったら、心配しなくてもいいじゃんと思ったんですよ」

高橋さん「すごく変わりましたね」

後藤さん「そこに気がついた時に少しずつ次男も元気になってきて、不思議でしょ」

高橋さん「それは誠子さんの息子さんに対する対応が、そこから変わったからなんですか」

後藤さん「変わったんでしょうね。後から聞いたらおかんって呼ぶんですけど、私のことを。おかん変わったかなって。いつから変わったかわかる?って言ったら、やっぱりなんかこのときから変わったっていうのがわかっていて」

高橋さん「すごい。如実に伝わっていたんですね」

後藤さん「伝わるんですよね。子供達って母親の気持ちがものすごく分かるみたいで、足音でわかると、後で言われました。足音で怒っているか悲しんでいるか、がっかりしているか喜んでるかが。やっぱり家族ですね」

高橋さん「ある時から誠子さんの足音だとか空気感だとかが、自分に対して何かやりなさいっていうんじゃなくて普通に過ごしてくれるようになったんだなと」

後藤さん「そうなんだと思います。さすが、みなみさん。わかりますね」

高橋さん「それはすごく安心感にきっと繋がったんじゃないですか」

後藤さん「そうだと思うんですよ。それが次男が動き出すきっかけになったと思うんですよ」

高橋さん「不思議ですね」

後藤さん「これはね、ほんとうに伝わらなくて。心配しているお母さんお父さん達に、心配しなくなったら動き出すよって何回も言っているんですけど、難しいです。そこに行き着くのが。」

高橋さん「親だから心配するのは当たり前みたいな気持ちですけど、心配しなくなった時に相手は、(親は)心配していないかも、自分は自分として生きていいんだみたいな」

後藤さん「すごい、みなみさん。その通りなんですよ。本当にその通り。親の思いからこうならなきゃいけない。親のためにこういう自分にならなきゃいけないっていうような思いから解放されるんだと思います」

高橋さん「それがもしかしたら一番の呪縛になっていたのかもしれないと」

後藤さん「私もきつい言葉を言っているかもしれない、親御さん達にとって。これを聞いた時にやっぱり自分が悪いんだって思ってしまうかもしれないなって。伝え方が難しいんですけど悪いわけじゃないんですよ」

高橋さん「愛なんですよね」

後藤さん「親御さん達も何も悪くなくて。社会の見方とかね、いろんな外側の人達から、仕事に行かないのはなんでだろうとか、そういう世間の見方もあって親御さんも仕方なくそういうふうにっていうのもあるので、誰も悪くないと私は思っています」

高橋さん「そうですね。誰も悪くないですよね」

後藤さん「ほんとに良くなったらいいでしょうということで、やっているだけなので」

高橋さん「私、勝手に自分にとっての一番の居場所っておうちかなと思っていたんですけど、もちろんおうちもそうだけど、やっぱり居場所の確保っていうのがすごく大事なんですね」

後藤さん「息子が少し元気になってきた時に、家以外に行けるところがあったらいいなと思った時に、なかったんですよ。ひとまず見当たらなかったんですね」

高橋さん「ないな」

後藤さん「ないし、そういう時って行政とかいろいろな所にお願いするじゃないですか。でも時間がかかって、お金の事とか、リアルに。そういうことがあって動いてくれなかったので、じゃあ自分で作っちゃおうかなと思って」

高橋さん「ここで誠子さんの行動力が。もう自分で居場所作ろうと」

後藤さん「そうですね。ないんだったら自分で作ろうと思って作っちゃったんですよ」

高橋さん「まずはじゃあ、息子さんの」

後藤さん「そうなんです。めちゃくちゃ下心ですね」

高橋さん「そんな、そんなことないですよ」

後藤さん「下心だったんですよ。息子の居場所を作りたくて。でもですね。最初は来なかったんですよ、うちの次男が。作ったのに、自分は必要ないって言って。よくあるんです、そういうこと。ほんとに当事者の皆さんにとって居場所が大事だろうと思ってやっているんですけど、来ません、来ません」

高橋さん「でもこれどうしましょう。居場所あるのに」

後藤さん「そうなんですよ。来ないんですよ。うちの次男はしばらく来なくって、でも私のやっていることを見ていて、背中で感じ取っていたのか、何か楽しそうだって思ったのか、ちょこちょこ来るようになって。後は手伝ってくれないかなっていうのをこちらからお願いしたんですね」

高橋さん「力を貸してほしい」

後藤さん「そしたらだんだん人が来るようになってきて、一人では大変だから一緒に居場所にいてくれない?とお願いして来てくれるようになっていき、今はもう本当に仕事としてやっているんですけど」

高橋さん「そうなんですね。息子さんの場所がいろんな人の居場所に広がっているんですね」

後藤さん「そうなんですよね。開けた時に誰も来ないんじゃないかなって思ってやっていたんですね。だって自分の息子ですら行きたくないって言っているのに」

高橋さん「誰が来るんだろうみたいな」

後藤さん「本当に誰も来ないと思っていたんですけど、始めて見たら最初月に1回だったんですけど、10人以上の人が来たんですよ」

高橋さん「すごい一気にですか。ここにありますよっていうのを発信したら」

後藤さん「ラジオもね、地元のラジオ局でもお話しさせてもらいましたので。後はメディアにも出させて頂いて、発信っていうのはすごく大事だなと思っていて、facebookであったりtwitterだったり、いろんなものを使って発信した結果、結構たくさんの人達が来てくれて。それで、来てくれるんだったらもっと回数やらなきゃっていうことで、月1だったものを週に1回にして、どんどん増やして行って今は週に5日間開けているんですね」

高橋さん「でもそれ、ほぼほぼじゃないですか。週7日ですよ。すごいですね。もうファミリーですよね。居場所というか」

後藤さん「そうですね。もう向こうの岩手の言葉で、上がれ上がれとかって言って」

高橋さん「上がれ上がれ、おいでおいでみたいな」

後藤さん「そんな感じです、本当に」

高橋さん「楽しそう、良いですね。本当に当事者の方達にとって、新たな居場所があるって言うことは本当に安心感」

後藤さん「そうですね。先ほどからその安心感ということをみなみさんがおっしゃってくださるんですが、うちの次男が変わってきたきっかけもやっぱり安心できたことですし、居場所に来ている皆さんが、自分でずっといられませんよね、普通は。何て言えばいいですかね。家にいる時と仕事の時とか違うし、友達といたってやっぱりちょっと格好つけているっていえばいいんですか」

高橋さん「その人専用の自分がいるっていう感じですよね。その場所専用のじゃないですけど。家が例えば親御さんに早く仕事に行けとかって言われている段階ですと、家すら本当の自分が出せなかったりするんですね」

後藤さん「安心安全ではない」

高橋さん「はい」

後藤さん「そこがこう本当に安心な場所が、別の場所でもできると変わりますよね」

高橋さん「当事者の方達はどうでしょう、変化とかありましたか。その居場所と出会って」

後藤さん「そうですね。本当にはっきりものすごく変わったなっていう方が、お一人いらっしゃって。具体的なことを言えないんのですが、新たにスクエアっていう居場所に初めて現れた時には、今から1年半くらい前なんですけれども、挨拶もちょっと頭を下げるくらいしかできなくて、あとは部屋の隅っこに座って本当に緊張して、斜め下あたりをずっと見てるという」

高橋さん「あまり人に目を合わせないような。そこから1年半後、今いかがです?」

後藤さん「今ですね。本当にも普通に会話もできるよって。居場所に来てないんですよ」

高橋さん「どちらに行かれましたか」

後藤さん「他に行けるところができたから。結局行けるところがもっといっぱい見つかって、そちらに行っているので。そういうことなんですよ」

高橋さん「1年半前は」

後藤さん「たった1年半です」

高橋さん「ご挨拶がちょっと難しかったりとか。他に行くところがなくて。今もう飛び立って行っているわけなんですね。すごい。劇的な変化ですね」

後藤さん「薬出したわけでもないし、プログラムとか話し方の勉強とかしたわけでも一切なくて、ただ本当にここにいていいよっていう。本当にみんなで雑談するだけのところなんですけど。例えば何か言った時に無視されちゃったりとか、笑いものにされるとか、うまく自分の言ったことをその場に受け入れてもらえなかったりするっていう怖さがあると、言葉もやっぱり出てこないですよね」

高橋さん「それは本当に私たちもそう」

後藤さん「誰だってそうですよね」

高橋さん「無視されたら傷つきますし、なんで自分の言っていることを理解してもらえないんだよって。まさに皆さん本当に同じということですよね」

後藤さん「それがあまりにも積み重なったりして。真面目で優しい人なんですよ。皆」

高橋さん「なんかそんな気がしていました。すごくそういうことを敏感に」

後藤さん「敏感すぎて。何も悪いことじゃないんですよね」

高橋さん「真面目で優しくていいことですよね」

後藤さん「めちゃくちゃいいことですよ。それなのに自分のことをどんどん攻めてしまって、うまく話ができないとか、またこんなこと言っちゃった、誰かを傷つけたかもしれないということで、どんどんどんどん殻に閉じこもって行ってしまって、話もできなくなる」


ひきこもり支援には、まず地域に、

自宅とも職場とも違う、安心安全な居場所が必要


高橋さん「悪循環というか、そこから脱出するにはどうしたらいいのかと悩まれている方が多いんじゃないかと思います。この笑いのたねプロジェクト、素晴らしいプロジェクトだなぁと思ったんですが、VOICE STATIONスタッフが先日、誠子さんが主催されたイベント『笑うたねフェス』にお邪魔させていただいたそうで」

後藤さん「はい、そうなんですよね」

高橋さん「ありがとうございます」

後藤さん「来て頂いて皆さん喜んでいました。当事者の皆さんも」

高橋さん「この笑いのたねフェスっていうのは、どのようなイベントなんですか」

後藤さん「こちらはですね、居場所に来ている皆さんの中で、ギターを演奏して自分で歌を作って歌うシンガーソングライターの方や、オカリナが上手な方、高校生とか中学生の方ですと、絵がすごく上手な方もいます」

高橋さん「私も描くのが好きなんです、見たいな」

後藤さん「写真撮ってくればよかったな。みなみさんに見せたかったな」

高橋さん「フェスですね」

後藤さん「本当にいろんなことができる人がいて、それを居場所だけに置いておくのはもったいないなと思って。地域の皆さんに披露して、そして地域の人たちにもこういう人たちがいるよって。まさに私が『笑いのたねプロジェクト』でやりたいと思っている、つなぐということをしたいなって思ったんですよ」

高橋さん「素晴らしいフェスだったのではないかなと思うんですが、このイベントに参加された方に、お話を伺ってきたので是非お聴きください」

***
Aさん「一年ほど前に不登校の映画の上映会があったんですよ。その時に、私の知り合いからこういう居場所があるよと紹介されて、それで行き始めたんですよ。それがきっかけでした。自分は統合失調症の病気持ちなんですけど、すぐ疲れてしまってね。なかなか体調が思うようにいかなくて。仕事もしてなかったんですけど、後藤さんの所に行き始めてから、すごく生活にメリハリができてね。本当に後藤さんにはすごく感謝しています。いろいろね。やっぱり私もね、変わってきたんですよ。前はね、人とあまり話さなかったんですよ。だけどね、後藤さんの居場所に来るうちにいろんな人が来て、自然と後藤さんがいると場が和むんですよね。それで、いつしか話すようになって、こう話すのも好きになりました」

スタッフ「音楽をやっていたんですか」

Aさん「中学生の頃からやっていました」

スタッフ「自分で作曲をずっとされていたんですよね」

Aさん「はい、そうです。音楽が支えですよ。本当に。(別な場所では)否定されることを否定されなかったです。別な場所だったらうまく働けなかったりもするんですよ。結構、否定されるんですけど、そういうのを温かく受け入れてくれたりするので、答えはひとつじゃないからこういう場所もあるから大丈夫なんだ、みたいなのがあります」

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高橋さん「誠子さん、めちゃくちゃ感謝されていましたよ」

後藤さん「初めてこれ聞いたので、この日、私は一応総監督です」

高橋さん「きました総監督!いろいろ動かれていたから、なかなか」

後藤さん「そうなんです。全然気が付かなくて。こんなインタビューを録っていたんですね。ありがとうございます」

高橋さん「皆さん本当にご自由に表現できる場所を見つけられたんだという、すごい喜びに満ちた」

後藤さん「今聞いてちょっと泣きそうになっちゃいました」

高橋さん「徐々に元気になってきたら、お仕事に行ってというふうになっちゃいますけど」

後藤さん「そうですね」

高橋さん「そういうことでもないんですかね」

後藤さん「そうなんですよね。ご本人たちはもうわかっているんですよ。一番自分たちが分かっていて、仕事に行かなきゃいけない、学校に行かなきゃいけない、外に出なきゃいけないってことを一番わかっているんだけれども、それができないくらい本当に疲れ切ってエネルギーが本当にゼロ、なんならマイナスっていう。自己肯定感ってあるじゃないですか。あれがもうゼロどころかマイナス、自己否定感になっちゃっているんですよ。逆に。もういらない、自分なんかいらないっていうようなところまで行ってしまっているので、そんな人が急に仕事に行けないですよね」

高橋さん「難しいですね」

後藤さん「目に見えないので。事故とかで全身打撲になっている人に、すぐ立ち上がって仕事に行けとは誰も言わないですけれども」

高橋さん「でも、実際にそれぐらいの気持ちっていうことですよね」

後藤さん「見えないけど」

高橋さん「ですよね。そういった方たちには、どういうふうに動いてもらうというか」

後藤さん「やっぱり一番はそういう自分が自分、先ほどもちょっとお話ししたかもしれませんが、自分のままでいていいんだよ、あなたはあなたのままでいていいんだよっていうふうに、本当に安心していられる場所に繋がる。そこで例えば先ほどのね、ギターを弾くような自分の得意なことをやって、それをみんながすごく褒めればいいってことじゃないので難しいんですが、微妙なんですけど、ただ出来る事を皆さんに披露するっていうのは、少しでも自己肯定感が上がってくるきっかけにはなりますよね」

高橋さん「今だから皆さんは色々なことがマイナスの方にいっているから、そのパワーをためている最中」

後藤さん「そうなんですね。すごいいいキーワードです」

高橋さん「ありがとうございます」

後藤さん「いただきました」

高橋さん「無理に何かこうやらせるんじゃなくて」

後藤さん「そうです。そうです」

高橋さん「自ら動いて。自己肯定感を高めて行くのが大事なんですね」

後藤さん「元気になればその先に別に仕事じゃなくても、歌を歌ったっていいし、絵を描いたっていいし、何かできることで社会とつながる道がどんどんできてくるので、別に急がなくても。時間はかかります。時間はかかるんですけど絶対にそういう道が見えてきますし、そのためには周りにいる人たち、社会とか、居場所だけじゃなくて、居場所のその周りにいる人たちが理解する。というとちょっとなんかね、すごく特別なものに聞こえちゃうと思うのですが、全然特別ではなくて、その地域の人たちに私のやっているような居場所に来てもらいたいんですよね」

高橋さん「ともに過ごして行けばっていうことですよね」

後藤さん「そうです。同じことで悩んでいるとか、同じ人間、ものすごく当たり前の事なんですけど、そういうことに周りの人たちが気付いていってくれれば、今本当に疲れ切って動けなくなっている人たちも動けるようになる。本人に何かをさせるんじゃなくて、むしろ周りが変わることで、私が変わったようにね、私が変わって息子が動き出したのと全く同じで、地域や社会コミュニティが考え方や見方を変えることで、ものすごくその人たちの力になると思います」

高橋さん「時間はかかるかもしれないですけど。そういうふうに社会だとかコミュニティがかわって行って欲しいですね」

後藤さん「本当にそう思って活動しています」

高橋さん「こういった居場所って全国にあるものなんですか」

後藤さん「なかなか今はね、都会の東京や関東の方には結構あるようなんですが、地方に行くと、なかなかなくて。だから見つけるのも大変ですし、見つけてから来るまでも皆さん本当に時間がかかるので、今私のところに来ている方でも3年くらい前から知っていたという人もいて」

高橋さん「それが、今、やっと来られるようになったと」

後藤さん「そうなんですよ。だから知らせていく。こうやって発信して、こういうところがあるよっていうのを知ってもらうことはものすごく大事だと思います」

高橋さん「先ほども誠子さんのラジオで発信しているんだってお話にありましたよね。やはり知ってもらうために発信していくんですね」

後藤さん「そうなんです。知ってほしいなと思って始めました」

高橋さん「ほんとうにこういうこと大事ですよ。より多くの方々に知って頂きたいですね。あっという間にお時間が来てしまいました」

後藤さん「早い」

高橋さん「早いですね。はい、あっという間ですね。誠子さんと話していると、先ほどの音声のインタビューのお声がありましたけど、本当にわかります。場が和む。気づいたら話しちゃうみたいな」

後藤さん「すごいほめられている。嬉しい」

高橋さん「こういった方がそういう風にコミュニティ作ってくださるっていうのは、すごくありがたいことなんじゃないかなと思いましたね。誠子さんのこういう活動を見て、真似する方が出てきて欲しいですね」

後藤さん「いますね、今いろんなところで講演をさせて頂いているんですけど、講演に聞きに来てくださった方からいろんな質問が来て、そういう場を自分も開きたいけれど、どうしたらいいですかっていう質問はすごくされます」

高橋さん「やっぱりそうですよね。全国にね、本当にいろんな方々の居場所ができるといいなと思いましたし、この居場所の大切さっていうのを感じました。居場所支援に繋がりたい方への情報はひきこもりVOICE STATIONのウェブサイトでも紹介されています。そして後藤誠子公式サイトで検索いただければ繋がることができます。誠子のせいは誠です。そして子は子供の子ですね。ぜひ皆さん見てください。今回のゲストは、笑いのたねプロジェクト代表の後藤誠子さんでした。ありがとうございました」

後藤さん「ありがとうございました」

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※音声で聴きたい方は、Audeeで。
https://audee.jp/voice/show/38318

『ひきこもりVOICE STATION』 公式WEBサイト 
https://hikikomori-voice-station.mhlw.go.jp/ (2021年1月14日公開予定)
 
後藤誠子公式サイト 
https://seikogoto.com/?page_id=94

イベント開催 2021年1月16日13時スタート!
『ひきこもりVOICE STATION』公開生配信! (パーソナリティ高橋みなみ)
視聴登録はコチラ https://www.asahi.com/ads/hikikomori-voice-station/

◆TOKYO FMサンデースペシャル『ひきこもりVOICE STATION』放送決定!
(2022年2月13日19:00~19:55)


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