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ひきこもり✖️農業で地域が元気に!その仕掛け人に話を聞きました!

ひきこもり当事者、家族、支援者の思いをみんなに伝えるラジオ【ひきこもりVOICE STATION】♯2、ラジオ音声を全文書き起こしました。

高知県安芸市で農業を通じてひきこもり当事者の社会参加をすすめる
安芸保健所健康障害課の公文一也さんにお話を伺いました。
※音声で聴きたい方は、コチラから!

パーソナリティ:高橋みなみ                      ゲスト:高知県安芸福祉保健所健康障害課 公文一也さん             取材構成:山田英治(社会の広告社)

高橋みなみさん「ひきこもりボイスステーション。この番組はひきこもり当事者、家族、支援者の声をみんなに伝えることで誰もが生きやすい社会って何だろうって考えてみたり、お話ししてみたりする番組です。皆さん、こんにちは。ひきこもりボイスステーションパーソナリティの高橋みなみです。今回は、高知県安芸市で、ひきこもりの当事者や経験者の方の社会参加をすすめる農福連携プロジェクトに取り組む、高知県・安芸福祉保健所の公文一也さんに来ていただきました。よろしくお願いします」

公文一也さん「よろしくお願いします」

農福連携のきっかけは
一人の生活困窮者をなんとかしたいという思いから

高橋さん「まずは農福連携プロジェクトについてですが、農業と福祉を結びつけたプロジェクトということで、公文さんがここに携わるきっかけは何だったんでしょうか」

公文さん「最初は農福連携をしているつもりはなくて、一人の生活困窮者を『なんとか助けて行かないかん』という思いで始めたのですが、あとでみんなから、お前がやっているのは農福連携だよと言われて、そうなんだって思いました。その困った子を助けたのが農福連携だったんですよね」

高橋さん「じゃあ、周りの方に公文さんがやっていることって農福連携じゃない?って言われるまでは、ご自身的にはその名前がわからないような状況で、気づいたらそういうことをする方になっていたっていうことですか」

公文さん「そうですね。高知県は自殺がすごく多い県で、僕が秋に赴任した時、特に保険証を県域別に分けた時に、安芸福祉保健所県域の自殺がすごく多くて、その自殺者を減らしてくれっていうのが使命であったんです。自殺っていうのはいろんな原因が複合的に絡み合って人間が最後に陥ることで、でもそれは僕だけでは助けられないので、他職種や他機関が一緒になって支援していくことが自殺を減らす一つの手段だと思ってやり始めました。そこで、先ほどの生活困窮者の彼が現れて始めたのがきっかけでした」

高橋さん「生活困窮者の誰かにお会いしたってことなんですね」

公文さん「そうですね。10年間ひきこもりの彼が、助けてほしい、食べるものがない。彼はその時に、道に生えていたカラスノエンドウを集めて塩で茹でて食べていたそうです。もう本当にこのままでは死んでしまうということで、彼が目にしたのが安芸市の広報に書いてあった『生活困窮者自立支援法が始まりました』という文章で、それを見て相談に行って、安芸市の方が僕にも一緒に訪問して欲しいって言ったことがきっかけでした」

高橋さん「なるほど、どんどんどんどん繋がっていって公文さん、その彼と出会ったということなんですね。その方はひきこもり当事者の方だったと思うんですが、生活も困窮されてしまったんですね」

公文さん「そうですね。兄弟3人で暮らしていたんですが、お父さんはもう亡くなっていてお母さんは10年以上精神科の病院に入院していて、兄弟2人が仕事していたんですけど、長男である彼が家でひきこもっていて、兄弟のお金を取ったり食べ物をとったりするので、兄弟もその日に食べ終わるものしか買って来なくなったんです。それで、本当に食べるものがなくって、もう会った時にはガリガリに痩せていたので、これはもう僕もやばいと思って、何とかしなければって思い、その仕事をしようということを彼に話し始めました」

高橋さん「その時の彼というのは、いろんな気持ちで枯渇しているような状況だったと思うんですけれども、その中で公文さんにどういった言葉をかけられたんですか。助けてほしいということだったんでしょうか」

公文さん「僕にはね、助けて欲しいとは言わんのですよね。コミュニケーションが本当に取れなくて僕が話したことに対しての答えが全然返ってこないのですよね。でもお腹減っているんやろうって言ったら、んー、とかって言って、はいって言わんのですよね。でも絶対、お腹は減っているんですよ」

高橋さん「そういう時は、公文さんはもう何も言わずに、まずちょっとご飯食べなっていう感じで渡されたっていうことなんですか」

公文さん「いや、僕が最初にその思ったのは、彼の家に行ったとき、彼の家の裏庭にすごく立派な畑があったんですよ。それを見て、彼にこの畑は誰が作ったんやって聞いたら、僕が作ったっていうんですよ。ただその時には、食べる作物が育っていなくて、その横にすごい大きな石の山があってですね。不思議に思って、お前が作ったんかって聞いたら、作りましたと。その時だけは会話ができたんです。この石はどうした?って言ったら、僕がこの畑を作るのに拾ったって言ったんですよね。僕は当時、友達がハウスを拡大したいって言っていたので、親戚のおじさんの田んぼを紹介したんですよ。その田んぼがすごく石ころだらけで、僕は責任とって毎週土日、平日の休み取れる時は行ってですね、石ころ取りをしよったんですわ」

高橋さん「畑を使える状態にするためにですね」

公文さん「そうですね。もう本当に嫌気がさしていて。毎週ですよ。毎週、こう、下を見て石を拾ってということをしていたんで、僕はもう本当に、そのひきこもりの彼に会って思ったんですよ。僕たちを助けてくれるやつが現れたって。その時に、彼に石拾いの仕事をしてみないかって言ったのが始まりやったんです」

高橋さん「いろんなことがつながって、元々は自殺対策をしなければいけない、困窮者支援をしようというところから、それを見た彼が、お腹も空いている、どうにかしなきゃいけない、助けてくれないか、ちょっとお話ししよう、お家に行ってみよう、あれ、畑があるじゃないか、この石は?、畑をいろいろ見ていったら石が。自分でやったのか、そうです。あれ、この人できそうだな、みたいなことですよね。つながりますね」

公文さん「つながったんですよ」

高橋さん「その時、彼はやってみない?って言ったら、それはやってみたいですっていうことだったんですか。

公文さん「そうですね。彼は僕にぴったりの仕事ですって言ってくれたんですよ」

高橋さん「おお、一歩進みますよね。これは。実際彼がその畑に行ってみて、その働きぶりということではいかがだったんですか」

公文さん「凄かったんですよね。僕が畑に連れてった時に、彼が石拾いを始めたんですよね。やめないんですよね。ずっとやるんですよ。何時間も」

高橋さん「だって、公文さんね、平日とかも頑張って行っていたけど、下向いて結構大変な作業だとおっしゃっていましたよね」

公文さん「地獄のような作業でしたよ。下向いてただ単に石を拾うだけ。何時間も何時間も」

高橋さん「地道な作業だと思うんですけど、彼からしたら、これ楽しいぞっていうふうにやることだったんですね。なんでしょう、その人に特化したものと言うか、その人がやってみたいことがそういうふうにつながっていくと、活力にもなりませんか」

公文さん「そうですね。本当に多分特性に合ったと思うんですよね。彼は真面目なコミュニケーションが取れなくても、石をただ拾うだけの作業かもしれんですけど、その子にとってはもう完全にマッチした」

高橋さん「本当にお話聞いていると、それは農福連携だぞっていうのを確かにと思いました。皆さんが、公文さんがやっていることを農福じゃない?とおっしゃっていた、そこにつながりますよね。もともとは、農業と福祉を結びつけたプロジェクトを農福連携プロジェクトって言うんですが、障がいを持つ方だったり生きづらさを抱えたりした方達が、農業の仕事に就くことで社会参加をすすめるという農業✖️福祉という取り組みを、気づいたらされていたんですね」

公文さん「そうですね。もう2年間気づかなくて」

「すごい人が働いている!」

ひきこもり当事者の就農が噂に

高橋さん「2年も。だいぶ気づかないですね。でも、彼の特性に合ったものが農業で、すぐにつながっていったと思うんですけども、ずっとおうちから出られなかった若者を雇うことは、農家さんにとっても、かなり思い切った決断なのかなと思うんですが、農家さん自体に不安の声はなかったんですか」

公文さん「正直ありましたね。最初の、その10年ひきこもりの彼を雇ってくれた方も本当に不安で。だから僕も一緒にずっと仕事をしました。何日も一緒に仕事をして、ナスの収穫は何が難しいんで何が楽しいんでというところを自分も体験させてもらったし、その10年ひきこもりの彼が一生懸命働くことで農家さんの噂になってですね」

高橋さん「めちゃくちゃいい若者がいるぞと」

公文さん「そうなんですよ。ちょっとコミュニケーション取れんけど、なんかすごい人が働いているぞっていう噂になって、そっからですね。僕んところに問い合わせが来だしたのは」

高橋さん「彼が一生懸命ひたむきに農業に向き合う姿や、そういった理解と言いますか、そういうものがどんどん伝染して広がっていったんですね。面白いですね。本当にいきなり働くことってできるのかなって思ったんですよ。やっぱり農業の知識などが、もともとあるわけではないじゃないですか。そういうことも体験しながら農家さんのご協力も得ながら、どんどん成長していくんですね」

公文さん「そうですね。やっぱり農家さん自身も、本当にそのひきこもりの方を理解しようと一生懸命になってくれるし、その中でやっぱり一人でも多くの理解者を僕達も増やしたいと思う中で、何でひきこもっているんだとか、何で障害があるんだという勉強会を一回二回三回四回と増やしていきました。その中で本当に理解してくれた農家さん達が、次から次へと雇ってくれたっていうのが現実ですね」

高橋さん「そういった知る理解の場、とても大事ですよね。皆さん、いろんなことは気になっているけどそれを消化できないとモヤモヤになってしまいますし、それを教えてもらうとそういうことですね。彼らすごく頑張って働けるじゃない、僕たちも協力しようとつながりますよね。本当に良い循環だなと思うんですけれども、今回もスタッフがですね、高知に行ってナス農家や柚子農業で働いているひきこもり経験者の方に取材をしてきたんです。こちら聞いてみましょう」

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お日さまにあたり、鳥の声を聞いて働く
それがいいんじゃないかと。

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瀬川さん「瀬川洋、28才になります。柑橘農家で柚子を収穫したり、他の柑橘を関わったりそういう仕事をしています。例えば昨日やったら、小夏に紙の袋がけをするとか、何かしらの仕事はある感じで」

スタッフ「こちらの柚子農家さんで働くきっかけはどういうことでしたか」

瀬川さん「はい。高校を卒業して介護の仕事にすぐ就職したんですけど、高校生の頃からパニック症みたいな症状があって、それで卒業してから仕事をしてもうまくいかず、すぐに辞めてしまいました。また仕事を頑張ってみようとするんですけど、やっぱりうまくいかず結構辛い思いを何回もしてみたいな感じでした。1年から2年間ぐらいですかね。気持ち的にも沈んで、仕事をしてなかった時期にずっと家にこもっていて、人の目線も怖くて、ちょっとでも人の視界に入るのも怖いので、ずっと物陰とかに隠れたり来客が来てもどこかへかけ込んで隠れてしまったりとか。とてもまともに働いたりができるような状況ではなかったかなあと思います。やっぱり明るいことなんて全然考えられないですし、それこそ、もう死んでしまいたいような気持ちもずっとありました。


自分が発達障害の傾向もあるんじゃないかって自分で思ったことがあって、病院で検査をしてもらって、そこから高知の障害者支援センターみたいなところにいったら、そこから地元にも支援のところがありますと紹介してくれて。そういう紹介、紹介のつながりで。農福連携で聞いた最初がここでしたね。最初の見学などで来たときも、ものすごく緊張していましたし、気持ち悪くなってしまうようなこともありましたし。でもその中で、まずは病院で薬をもらい持ってやってみたらどうって言われてね。やっぱり薬の効果とかもあって、その中で農業っていう仕事が、自然の中で体を動かすというのがよかったのか、周りの人のサポートにも恵まれて、いつの間にかちょっとずつ、色々辛くなってしまう前の自分を取り戻していけたような感じがしますね。

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やっぱりお日さまにあたりよるってんのが、なんか自分の中ではいいことなのかなって思って、汗も流して体を動かしていろんな、例えば山で仕事をする時は鳥の声を聞いたり。なんかそういったことがいいんじゃないかなあと。そうですね。劇的な変化はなかったですけど、いつのまにか振り向いたら変わっていたみたいな感じですかね」

さとるさん「さとるです、33歳です。こうち絆ファームの方で、今ナスの栽培とナス詰め作業などさせていただいています。そうですね。ちょっと体調の方を崩しておりまして、なかなか一般就労ができないっていう期間が続いていました。その状態をなんとか抜け出したいっていうところで相談に来まして、その時に安芸市の方で、受け入れてる農家さんがあるということで行ってみないかっていう話をいただきまして、そこからのつながりで今、絆ファームに所属させてもらっています。


不安はありましたね。体調のこともありますし、初めてのこともありますけど、もうなんせ、なんとかしたい、状況を変えたい最後の望みというような気持ちで、結構藁にもすがるような気持ちでした。これでダメだったらもういいかなっていう、正直それぐらいの気持ちがあったので、自分にとっても最後のチャンスとして、もうひと踏ん張り何とかしたいところで、まあそういう気持ちでした。はい。


全然知らなかったことを新たにやるっていうこと自体、すごく新鮮で楽しかったですし、自分の中にいろんな知識が増えていくという方へ経験が増えていくっていう意味でも楽しかったですし、結構自分のペースでのびのびとやれる仕事だなというのがありました。本当に小さい状態の苗の植物が育っていって、自分たちが世話と言うか、手をかければかけるほど良い状態を保てるというので、自分が毎日お世話するっていうことをやりがいというか、朝起きてその状態を見てというのが自分のサイクルと合ってきだして、そういうのも自分に結構合っているんじゃないかなと。想像していた農業のイメージとは、いい意味で変わりましたね。自分が農家さんで勉強させてもらっていく中で、自分で経営を目指したらできるんじゃないかなって思って、今それを目標に頑張っています」

スタッフ「それはすごいですよね。つまりナス農家を自分で立ち上げるってことですか」

さとるさん「そうですね。自分で経営を。はい。最初は小さな規模から、やっぱり体調が今まですごく良くなったんですけど、まだ万全というわけではないので無理しないように。自分にできる規模からスタートさせてもらって自分が支えてもらえたように何かしらそういうことも、これからもつながりがあると思いますので。困った人がいて、何か出来ることがあるのであれば、是非元気を出す場として使ってくれたらっていうふうに言葉を(自分が)頂いたように、そういう言葉を自分も届けられるようになれたらとても素敵だなと思っています」

スタッフ「さとるさんにとって絆ファームはどんな存在なんですかね」

さとるさん「自分の人生の本当に大きなターニングポイントというか、想像以上の分岐点になった、すごく大きなきっかけをくれた場所ですね。周りの人は、あなたが頑張ったから元気になれたんだよって言ってくれますけど、やっぱりいろんな人が助けてくださって。じゃないと今の自分っていうのは、とてもじゃないけどなかったなぁと思っています」

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高橋さん「いやぁ素敵なインタビューでしたね。さとるさんも自分でちょっと経営してみたいと。とても前のめりな発言もありましたけれども、実はお話に出てきた柚子、そしてナス。私の目の前に、もう結構、柚子の香りがふわっと香ってきていまして、良い香りですし、大きさがね、立派ですよね。公文さん」

公文さん「はい。すごいですよ」

高橋さん「私、柚子ってもっと小さいイメージありましたし、ナスもこんなに太かったっけなぁって」

公文さん「絶対今日持ってきたやつは、スーパーで買えるようなやつではないんで」

高橋さん「違いますよね。これもちろんその環境もあるのかなって思うんですけど、皆さんが手塩にかけて育てたっていうことなんですよね」

公文さん「そうですね。それこそ、そのさとるくんが育てたナスなんで」

高橋さん「うわっ、さとるくんのナスだ。そうなんですね。すごい、本当にね見せたいよ、みんなに。立派なの。これはおいしいよ。この光沢感とか本当に。でもね、2人のお話聞いて急激に何か変わったじゃなくて、気づいたら振り返ってみたらなんか自然に自分が変わっていったんですよね、と言うでしょ。無理なくじゃないですけど、皆さん本当に自分に合うものを見つけて自分のリズムで過ごして行って、農業っていう環境や周りのサポートですよね。あとやっぱり、お日様を浴びるっていう、それがすごく皆さんのリズムに合っていたのかなっていうふうに思ったんですけども、今のお話聞いて公文さんどのように思われましたか」

公文さん「そうですね、本当にみんなコミュニケーションが苦手で。でもやっぱり、今のこの社会ってコミュニケーションを取らないといけない仕事が多くって。仕事に行って傷ついて挫折してひきこもってっていう方が多いんですけど、農業っていうのはコミュニケーションが全くいらないわけじゃないんですけど、野菜ってものしゃべりませんよね。手をかけるだけすごく成長してくれるので、ひきこもりの彼らの特性に合う作業なんじゃないかなっていうのは、本当に僕は当初から思っていました」

高橋さん「うまくいかない自分に出会ってしまって自信がなくなって。でも農業は思いだったり努力だったりで、この野菜たちがどんどん成長してくれるというすごい自信にもつながるのかなーって思いましたね」

公文さん「そうですね。本当に見ていて僕も思いました。はい」

高橋さん「ひきこもり当事者の方々が農業と出会うことで少しずつ元気になっていくっていうのは、本当に見ていて気持ちいいなーっていうふうに思いましたし、よりね、たくさんの方々がその農業というものに、農福っていうものにつながっていって欲しいなとすごく思いました。現在何人の若者が参加されているんでしょうか。最近では97人の方が」

高橋さん「いっぱい。まもなく100人ですね」

公文さん「そうですね。はい」

高橋さん「一気にですか。ゆっくり増えていった感じなんでしょうか」

公文さん「最初はゆっくりですけど、この3年間の中で、安芸市では自立支援協議会の就労支援専門部会ができました。また、この農福連携をこの先も続けていく、そして拡大させていくという意味で農福連携研究会などを立ち上げたこの3年間の間で、50人ぐらいが一気に農場に出ていったり、また農業以外の林業だったり、水産業だったりだとかに波及していきましたね」

ひきこもり当事者が「何かに気づき、自信を持ってもらう場所」としてスタート

結果として農家の大切な戦力に

高橋さん「皆さんの活動が続いていくことで、噂を聞いていらっしゃる方も多いんじゃないかなと思うんですけどいかがですか」

公文さん「そうですね。今では安芸市だけじゃなくって安芸市外、県外からも続々と来ていますね」

高橋さん「どんどんどんどん増えていって欲しいなと。最近の農家の担い手不足っていう話も聞くんですけども、安芸市の農家にとって大切な戦力になっているということですよね」

公文さん「そうですね。僕たちは最初は人手不足の解消のためにやっていたんじゃなかったんですよ。本当に困った人たちが農業で元気になっていく姿を見て、僕たちも元気になっていくし、当事者も元気になっていく、気づいた時にやっぱり農家の方がその当事者の方を必要として、色んな声掛けをしてくれるんですよ。お前がおらんと困る、明日も来てくれよとかって言ってくれるんですよ。そうなんですよ。やっぱりそういったことから、その当事者の方が社会的役割を、初めて人生で必要とされた社会的役割を持てた。持てたことでその場所が居場所になって、本当に気づいた時に戦力になったんですよ」

高橋さん「人に求められる、認められるって何事にも代えられない自信につながると思います」

公文さん「そうですね。僕たちも認められてやっぱり嬉しいし、やっぱりみんな一緒なんですよね。認められたいんですよね」

高橋さん「良い循環ですね。本当に気づいたらこういった方が出来ていたっていうことは素晴らしいなと思います。先ほどさとるさんのお話も出てきましたが、ひきこもり当事者を受け入れている、こうち絆ファームの北村浩彦さんにもお話をお伺いしています。聞いてみましょう」

***
北村さん「北村浩彦と申します。一般社団法人こうち絆ファームの代表をしています。生きづらさを抱えた人たちと一緒に、農業それもナスを栽培してみんなと一緒に頑張っている会社です。今、社会問題にもなっているひきこもりや障害を持った方、(刑務所から出たあと生活に困難を抱えた)触法者が、トータル的に生きづらいということで、その子らが働きたくても働く場所がないことから、働く場所の確保をしたのが絆ファームです。誰でもできることなんですよね。それを誰もできないぐらいやってもらって、スペシャリストになってもらう。いろんな障害の理解や生きづらさの理解をした上で、そういう方法で伝えて行ったらみんなスペシャリストになっていきます。もともと親孝行だった息子さんが、専門学校に通われていた時にいじめを受けて3年間ひきこもっていたり、たまたま障害を持った子がひきこもっていたりということなので。


今、国が発信している農福連携と安芸市が発信している農福連携っていうのはちょっと違いがあります。ひきこもって家から出てくることは、すごい勇気と決断がいることだと思うんですよね。そういうタイミングを逃さずに、各関係機関が支援しながらつないでいく。ここに来て何かに気づいて何かを感じて自信を付けてくれる場として使って下さいということで始めました。国は全国的に農業人手不足ですよね。障害者も雇用してください、外国人も雇用してください、それで人手不足解消につなげてくださいっていう発信の仕方なんですけど、安芸市は違います。気づく場所として使ってください。そしてたまたま、こうした居場所で働きましょうって思ってくれるようになるんですよね。それが気づいた時に戦力になっていたと。そして結果的に人手不足の解消につながっていくんですよね。人手不足解消のために障害者やひきこもりの方を雇用するのではないんです。気づいた時に戦力になっていたと。結果的に人手不足解消につながっていくっていうことです」

スタッフ「世の中では、ひきこもりの人や精神疾患を抱えている人に対して、ちょっと偏見がある、雇うなんてとんでもないというような考えを持っていらっしゃる方がいると思うんですけど、そういう方に向けて何かお声かけするとしたらどういうお声がけをしますか」

北村さん「安芸市はね、その辺も農家さんの理解という勉強会を定期的に開いています。生きづらさの理解です。ひきこもりの方の理解もそうです。触法の方、罪を犯して出て来られた方の理解、その辺も含めた上で生きづらさの理解の勉強会をして、そこに一般就労としてつなげられる方を作って行っています。そこがすごく域連携型といって機関が連携しているので、厚生労働省からもモデルケースになってくださいということで、全国に発信して行っています」

スタッフ「その勉強会では、こういうことがわかりましたとか、偏見がなくなっていっているなどの変化はありますか」 

北村さん「わかりやすく伝えて、こういう感じで支援していきます、こういうふうに受け入れてくださいっていうことを勉強しながら、一つ一つの発達障害や、いろいろな障害の理解も含めて一つ一つ勉強しています」

スタッフ「雇用は何人とおっしゃってましたか」

北村さん「91名ですね、今のところは。生きづらさを抱えた人たちの受け入れはナス農家に限っては23件を受け入れています」

スタッフ「こんな人がいて、どう変化したのかというビフォーアフターを教えてもらいたいです」

北村さん「35年ひきこもっていて喋らない挨拶しない子が、喋るようになり笑顔が出てコミュニケーションが取れるようになりました。もうその変化だけで、めちゃくちゃ嬉しいです。またもう一人は、コミュニケーションが全然取れない女性ですが、要は自分の力で生きていけるようになりました。自分で稼いだお金で生きていけるようになったということが、もう素晴らしいことです。今まで1日や2日で辞めてくれとか、そういう感じで断られてきた子が、ここに来てもう4年も働けるようになったと親御さんも喜んでくれている。やはり社会的役割を持って頑張っていく、必要とされたい、役に立ちたいっていう思いがみんなすごく強いので、我々が特別な支援をするとかそんなことではなく、ここで生きづらい子らみんなで一緒に、いろいろな事を伝え合いながら一緒に成長していっているというイメージです。もう変化と笑顔。それだけで嬉しいです」

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高橋さん「北村さん、変わっていく皆さんにとても喜びを持っていましたね。ちなみに先ほど北村さんが雇用されている人数が91名とおっしゃっていましたが、公文さん、97名っておっしゃっていたと思うんですけれども、これは?」

公文さん「増えたんですよ」

高橋さん「ってことですよね。でもこのインタビューも最近じゃないですか。2週間の間に増えたんですよね」

公文さん「増えんたんですよ」

高橋さん「これはすごい勢いがありますね」

公文さん「そうですね。みんなの頑張りやと思います」
 
高橋さん「先ほど公文さんからもお話がありましたけども、定期的に勉強会をやっているということで、本当にお互いを知っていくことってとても大事なことなのかなと思いました。また、外に出ることで勇気がいるんだと、勇気と決断のタイミングを逃さない、そういった環境を作る場を自分たちは用意しているだけなんだと、その言葉も何か素敵だなーと思いましたね。何でしょう、自分にできることを見つけて、知らない自分に出会って、前を向いてまたチャレンジしていくっていうのは素晴らしいことですね」

公文さん「そうですね」

支援する側も困っている

連携することで大きな力がうまれる

高橋さん「本当に最初は小地域の自殺対策から始まったプロジェクトだと思いますが、現在のようになるまでに様々なご苦労もあったんではないかなと思います。このラジオ聴いている他の地域の方々も、この仕組みを自分たちの地域でやってみたいという方もいらっしゃるのではないかなと思うんですが、どのように安芸市の農福連携のような仕組みを作っていけばいいんでしょうか」

公文さん「本当に僕ら支援機関も困っているんですよね。みんな困っているんですよ。困っているからこそ僕たちの支援機関があるわけで、困ってなかったらいらないんですよね。保健所も市役所も」

高橋さん「困っている人がいるから必要」

公文さん「必要なんですよ。だから困っている皆が一緒に連携する。これだから安芸市はできたんだと思うんですよ」

高橋さん「この安芸市のような仕組みづくりをするためには、まずどういったところから始めればいいんでしょうか」

公文さん「支援機関が今、困っていることは何だろうっていうことを、みんなで集まって、正直に今こんなんで困っているんですっていうことを出し合い、じゃあどうしたらこの困ったことが解決できるんだろうという話し合いから始めて行ったらいいと思いますね」

高橋さん「まずはきちんと議題にあげて、何に今困っているんだと、誰がどういうふうに困っているんだ、じゃあこうした方がいいじゃないかと。最初はみんなで顔を突き合わせながらお話ししていくっていうことが大事なんですね。そう考えていくと高知県の実際に皆さんっていうのは、本当に正面から話し合われていたってことなんでしょうか」

公文さん「そうですね。もうよく連携、連携って言うじゃないですか。僕はその軽い連携って嫌なんですよ。安芸市は本当にスクラムを組んだ連携なんですよ」

高橋さん「ガシッと」

公文さん「ガシッと。絶対困ったことをそこに置き去りにしないっていうか、それをみんなで考えてみんなで解決していくっていうことを、ずっとこの10年やってきたので。だから今があると思うんですよね。農福連携なんて、これは一つのツールであって、やっぱり困った人を助けたいというみんなの想いの上にできたことやと思うんですね」

高橋さん「人ごとではなくて自分事として考えるっていう、それを本気でスクラムを組みながら、どうしたら助けられるんだっていうその熱い思いを持った人が集まれば、きっと何か進むのかなと思ったんですけど、いかがでしょうか」

公文さん「そうですね。本当にみんなね助けたいんですよ、困った人を。僕たちはもうほっとけないんですよ。困った人がいれば何とかしたいっていう思いでやっているんで」

高橋さん「公文さんのお話聞いていても伝わりますよね。困っている人がいたら絶対助けたいんだという、そういう熱い思いを持っていれば何か変えていけることがあるのかなと、お話聞いていてすごく思いましたね。本当に生きづらい環境で、どうしたらいいんだろうっていうふうに悩みを抱えている方がたくさんいらっしゃると思うので、そういったことの居場所や農業、農福っていうものをこれからもぜひ広めていただけたら嬉しいなと思いました。ということで、今回のゲストは高知県安芸福祉保健所健康障害課 公文一也さんでした。ありがとうございました」

公文さん「ありがとうございました」

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