#296 東岸なのに西岸海洋性気候?

イギリスやフランスなど、主にヨーロッパで見られる「西岸海洋性気候」。
しばしば「高緯度のわりに温暖で、年間を通して一定の降雨がある」と説明される。

例えばイギリスのロンドンは北緯51度。
札幌が北緯43度。
北海道最北の宗谷岬でも北緯45度。
北緯51度は、日本近辺だと樺太の中部にあたる。

日本と比べてロンドンが相当北に位置していることがわかるだろう。
ロンドンの年平均気温は約12度。
東京とくらべると少し低いが、冬でも月平均気温は5度程度で、北海道より北にあることを考えればやはり温暖である。

その理由は、教科書的には「暖流の北大西洋海流によって温められた空気が偏西風によって流れ込むため」である。

しかし、西岸海洋性気候の分布はヨーロッパだけではない。
オーストラリアの南東部や、ニュージーランドも西岸海洋性気候に属している。

ニュージーランドはオーストラリア大陸から見て東側。
「西岸海洋性気候」と言っても、必ずしも大陸の西岸であるとは限らないのだ。

これは、ニュージーランド周辺を流れている暖流の影響を受けているためだ。
さらに、周囲を海に囲まれたニュージーランドは冬でも寒くなりにくい。
典型的な「海洋性気候」である。

また、ニュージーランドの緯度は南緯35度~45度付近。緯度45度と言えば、日本では北海道最北端の稚内と同じ位置にある。かなり高緯度だ。

つまり、ニュージーランドもまた、「高緯度のわりに温暖」で、「海洋性気候」なのだ。

「西岸」という言葉に惑わされてはいけない。

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【参考】


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