一人になれない「僕」
僕の言葉は誰にも届かない
最近、言葉を発するのが怖くてたまらないんだ
他人に言葉を向けるのが怖くて仕方ないんだ
他人から向けられた自分への視線が痛くてたまらないんだ
僕の言葉は消えていく
油断していると、僕の口からぽつりぽつりと逃げていく
どうせ、誰も理解してくれないのに
新たな居場所を求めて僕から離れていく
受け入れてくれる器を探してそろりそろりと僕の中からでていってしまう
空っぽになる自分が怖くて僕は必死にその言葉たちをつなぎとめる
今にもあふれてしまいそうな言葉たちを口を噤んでせき止める
冷たい雫が僕の乾いた大地に透明な一直線を作って
固く閉ざされた扉を開く
なんだかしょっぱい味がして
居場所を失った言葉たちが嗚咽となって吐き出される
言葉とは言えないその音たちを誰が拾ってくれるのだろうか
そこには僕しかいないのだから
音は文字となって掘り起こされる
だから、僕は一人にはなれない
僕の言葉はいつか誰かに拾われて
新たな居場所を見つけて僕のもとから離れていくだろう
でも、僕はいつだって忘れない
離れた言葉たちはまた自分のところに帰ってくる
だから、僕はきちんと準備をしておこう
姿形が変わってもまた僕のところに戻ってこれるように
御影陽介
最後まで読んでいただきありがとうございます。 皆様から頂いたサポートは今後の自己研鑽のために使わせて頂きます。 僕の書いた文章で何か少しでも感じていただけたら、僕にとってこれほどうれしいことはありません。